まえのページにもどる> <もくじにもどる

2003年4月号 この春「受験生」になる人のための年間タイムスケジュール

■小6受験生・中3受験生は注目!■

 4月です。日本では新学年の始まりです。アメリカにいると、なんかピンときませんね。学年の切り替わりは9月ですものね。
 でも、日本でいう4月から受験生(小6・中3)の諸君は、受験までとっくに1年を切っていることに気がついているかしら?首都圏の帰国枠入試は12月初旬から。高校入試だって1月下旬。受験までの時間を上手に使わないと、取り返しのつかないことになりますよね。
 今月は「受験生」になる君たちのために、1年間の流れをまとめてみました。アメリカにいるとあまり意識できない受験生の1年間を簡単に追いかけてみます。  

■1学期・2月から7月までのお話■

 日本の進学塾の多くは既に新学期を始めています。(enaも2月から既に始まっています)1学期は「新出単元」の目白押し。自分の弱点や理解があやふやな分野が見えてくると思います。そうした所をしっかり「意識」して、夏休みにつなげていくことが大切です。
 現地校も忙しくなる時期かもしれません。プロジェクトやプレゼンテーションなども多いでしょう。でもここが辛抱のしどころです。あなただけが忙しいわけじゃないのです。あなた達の先輩も、同級生もみんなこの両立に苦しんできたわけです。なんとか頑張って「日本の勉強との両立」を成功させて欲しいのです。  

■夏休み・夏期講習■

 受験の天王山となるのが「夏期講習」です。ここでの頑張りが、秋からの成績を大きく変えていきます。このことは帰国枠を利用する場合でも同じです。例えば中学入試の場合、一部の学校で「小6の1学期までの範囲から出題します」と明言していますが、その多くは小5の割合や小6の比、また小5以降中心になってきた説明文や「いかにも日本的な解釈を必要とする」物語文などが中心となっています。つまり、小5の復習が完成していなければ、例え帰国枠でも解けない問題が存在してしまうことになるのです。このことは高校入試でも同じ。やはり「基本問題」といえども、それは「受験レベルでの基本問題」であることを肝に銘じておきましょう。
 多くの進学塾の場合、1学期で「小学校や中学校で習う学習範囲が修了」してしまいます。ということは「現地校の区切れ目の良い6月末に帰国して、夏期講習は日本で受けよう」と考えている生徒は、『受験レベルでの基本問題』を終えておく必要があるわけです。そうでなければ、夏期講習を受講しても「ただ受けただけ」というような、消化不良で終わる場合があり得ます。当然、こうなると秋からの成績向上など望めません。
 また、夏休みぐらいから学校説明会のシーズンが始まります。夏に帰国する生徒であれば、こうした説明会には積極的に参加すること。ギリギリまでアメリカにいて受験を考える生徒は日本にいる親戚などに頼んで情報を集めるように心がけてください。  

■2学期・秋からの流れ■

 夏休みの成果をもとにして、秋以降はより実践的なトレーニングを行っていきます。模擬試験も「合格判定試験」となり、毎回の成績に「合格率△%」というようなものになっていきます。塾でこなす問題も、融合問題・総合問題が多くなります。
 受験する学校の組み合わせも、確定していきます。本命を選ぶということです。遅くとも9月末までに決めましょう。滑り止めや保険校は「通うことになっても後悔しない学校」を選ぶこと。試し受験をする場合は無理のない範囲で。このあたりは様々な情報を駆使して考えていきたいものです。
 また秋から志望校の「過去問」に挑戦していきます。ここで出題傾向の分析をして、出題傾向に見合った勉強を進めていきます。特に難関校を狙う場合は、ある程度早めに過去問を始めた方が得策です。なぜなら難関校といわれる学校には問題傾向に「クセ」があり、それに予め慣れておく必要があるからです。帰国枠の場合でも同じです。帰国枠の過去問だけではなく、一般の過去問も必ず手に入れておくこと。そして一般の問題も解き、分析しておくこと。帰国枠の入試問題が一般入試と全く異なる学校であっても、帰国枠入試問題作成時のレベル設定は、あくまでも自校の一般入試を元に設定している学校が大半です。数年前の一般入試の問題をアレンジし直して、というパターンもよく見られます。  

■冬期講習・直前講習■

 例えば11月下旬の「NYなどでの海外入試を行う学校」を受験校に入れるか入れないか。また12月上旬に始める入試を希望校に入れるか入れないか。一時帰国なのか、本帰国なのか。地元の学校に瞬間的に通うのか、卒業まで1ケ月ぐらいのことなので通わないのか。長いアメリカ生活のためにカルチャーショックは大きいものがあり得るのか、ないのか。日本国内で通うことができる自分の志望校に導いてくれそうな塾が見つかっているのかいないのか。こうしたことを総合的に判断して帰国の時期を決定してください。1月中旬の日本行きの飛行機には受験生が多く搭乗しています。航空券の仮予約なども早めに動いた方が、後で慌てずに済みます。また、ウイークリーマンションの手配などが必要であれば、早めに動きましょう。
 毎年ena渋谷で「入試直前講習会」を実施しています。年末に実施する冬期講習や、入試直前日まで行う直前講習会で最後の追い込みに入るわけです。実践的な問題演習をこなし、弱点を補強していきます。また面接練習などもしていきます。課題作文なども本番ソックリに行います。海外における狭い閉ざされた環境で「慣れてしまった気持ち」を、直前講習会で「受験用」に切り替えましょう。面接訓練なども、知らない先生が担当することによって、適度な緊張感が得られます。

■1学期の学習ポイント生活編・勉強と生活をバランス良く■

 まず現地校の行事などを早めに確認して、準備をしておきましょう。また、これまで何度もお話ししてきたように、「現地校の成績が合否の重要要素になる」という学校は中学入試の場合は皆無であり、高校入試であってもほんの2割未満です。あくまでも日本の学校に進学するのですから、それに見合う最低限の準備は必要です。この読み物を読んでいらっしゃるのであれば「現地校崇拝主義」ということではないはずですから、ご理解いただけると思います。
 そうなるとポイントは一言「現地校が忙しくても塾は休まない」ということになります。小6にしても中3にしても、進学塾の場合は1学期いっぱいにカリキュラムを修了するつもりで授業が進められます。「現地校が忙しいから」といって、塾の授業をおろそかにしてしまうと新しく教わる内容を消化しきれないでしょう。「今日は疲れたから塾を休もうか」と思う日もあるかもしれません。しかしそういう誘惑に負けないようにして下さい。1回の欠席は、2回・3回・・・と続きやすいものです。そうなればドンドン未消化の穴が大きくなってしまいます。ファイナルが迫る頃ともなると現地校も忙しい時期でしょうが、是非塾で習ったことはその都度復習してください。そうした時間を作るためには週末の時間の使い方・無駄な時間の整理などが必要です。誰にでも平等である1日=24時間。上手に使いこなすしか方法はありません。  

■1学期の学習ポイント・算数&数学編■

 まず小6です。1学期には、大変重要な単元である「比」を学習する進学塾が多いものです。「比」は難度の高い単元ですが、応用が利くもので『100点満点の入試問題中、30〜50点ぐらいは“比”を使うことで得点できる』とさえいわれます。これが第一志望校合格のポイントになるんだゾ、という気構えで「比」の学習をして欲しいと思います。「比」をはじめとして、1学期の新出単元はかなり難しいものだと思います。塾の授業・テキストでは「こんなの絶対に解けないよ」「帰国枠入試なのに、このレベルまで必要なの?」という超難問がでてくることもあります。しかし実際の入試では、そうした超難レベルの問題は解けなくても合格できる学校がほとんどなのです。そういう問題にこだわりすぎてしまうと、苦手意識が強くなったり、時間の無駄にしかならないこともあります。難度がグンとアップする小6の算数。そうなると自分がこなすべき問題はどれなのか『取捨選択』していくことがポイントとなりそうです。
 次に中3です。ポイントは何と言っても「平方根」と「円」です。平方根は「なぜそうなるのか」が理解できず、戸惑う生徒が少なくありません。それなりの時間をかけて性質・計算方法に「慣れる」必要があります。図形分野の「円」は、円そのものの定義は難しくありませんが、応用範囲が広いために躓いてしまうことが多いようです。特に中2の「相似」が苦手だったりする場合、入試レベルとなると手が付けられないと言うこともあります。「円と角度」「円と三平方」「円と証明」など、関連している単元をしっかり復習すること。その後問題演習を繰り返してください。数学が特に苦手な人は「二次方程式」「関数」など入試問題の根底をなすものなので、今のうちに理解を固めて置いた方が得策です。
 またお父さん・お母さんにも一言アドバイス。子供が難しめの問題をできるようになったときには、「すごいね」「がんばったね」と誉めてあげてください。ただし、全く叱らないのは問題です。昔からよく言われるように「9誉めて1叱る」「叱ることを誉めることでサンドイッチする」ことが大切です。  

■1学期の学習ポイント・国語編■

 進学塾では「点を取る」ためのテクニックを重視する学習になっていきます。enaでは小4からそうなっていますね。入試国語の鍵を握るのは長文読解です。これは例え帰国枠でも同じこと。帰国枠で有名な神奈川の「あの」中学でも、毎年超長文が出題されています。長文を読み込んで、出題されやすいパターンの設問に数多くあたっていくことが最大の攻略方法です。これには塾の授業・テキストをしっかりこなすことが「まず」大切なことです。1学期のうちはまだ時間に余裕があるでしょう?問題を解くだけではなく、できるだけ「本を読む」時間を作ってください。普段から活字に親しんでおくことが、これからの長文学習で大きな力になります。最近の入試では、書かせる問題=記述式の設問がかなり多くなってきています。「書くのは苦手」という生徒は、早いうちに「記述対策」を始めるべきです。多くの帰国枠入試では作文が出題されています。
 難関校・上位校の中には、非常にレベルの高い記述問題も見受けられます。まずは自分の志望する学校の入試問題をチェックしてみると良いでしょう。また、書くための知識、たとえば漢字・文法・古典(中3)などは、秋以降に時間をかけるなど愚の骨頂。入試直前に時間がかかることなどやっていては時間がもったいないです。こうした地道な暗記作業は夏休みまでに仮完成させておくこと。
 家庭でも書くための練習はできます。例えば新聞・テレビのニュース番組・インターネットのニュースサイトでの時事問題について、自分の意見をまとめるという課題作文。実はenaでは全生徒に毎月「重大ニュース」という形で資料を配付し、作文の提出を指導しています。とにかく、自分の頭で考えて、実際に書いてみることが大切です。  

■1学期の学習ポイント・理社編■

 理科や社会は暗記すべき事柄が大変多い教科です。どちらの教科も塾では1学期に「新出単元」を勉強していきますが、それをこなすだけでは足りません。塾で教わる内容をきっちり消化していくのは当然のこと。その他に、前学年で習った学習範囲を時間を取って復習しなくてはなりません。そうしないと夏休みに「総復習」する際、負担が大きくなってしまいます。
 受験教科数で、まだ迷っている生徒もいるかもしれません。理科・社会の授業を塾で受けるとなると、1週間の宿題量も相当なものになるはず。理社を捨てる際は、夏休みまでに決断を下しておくこと。理科・社会の勉強時間が、他の教科の足を引っ張らないようにすることが肝心です。  

■1学期の学習ポイント・英語編■

 例えば語彙。帰国生の中には語彙を馬鹿にしている生徒も多く見かけます。しかし、そうした生徒に限って得点源である英語が得点源になっていないのです。難しい文法知識を頭に詰め込む前に、単語・熟語・構文など地道に覚えるものを制覇してみてください。それだけでも80点しかとれなかったものが95点ぐらいまで跳ね上がります。
 関係代名詞や受動態の使い方などはしっかりマスターしておくこと。帰国枠受験の場合、英語の力をどこまで見るのかが大切。「英語の力のみで合否が決まる」というのは一部の学校だけの話です。特に高校入試や男子の中学入試では重視こそされますが、総合力で判断されることが多いのです。教科のバランスをじっくり研究して、勉強時間のバランスを考えてください。  

■1学期の学習ポイントのまとめ・目標をしっかり持とう■

 新学期を迎えても「なかなかやる気にならない」という生徒もいるかもしれません。当地でよく見られる「ノンビリしたタイプ」のアナタには特に「勉強への動機付け」が必要です。新学期スタート時に志望校が決定していることが理想ですが、そうではない場合などは例えば1学期間は月例模擬試験を仮の目標にするなど工夫が必要なのです。何も目標がないと、1学期の勉強もピリっとしたものになりません。ただ塾に通うだけでは成績向上など夢のまた夢です。良い意味での緊張感や危機感は必要です。
 特に7月の模擬試験は全範囲が修了する模擬試験だけあって、厳しい成績が付けられます。この試験内容に「入試の雰囲気」を感じ取ることができれば参加する価値があると思います。ここで「受験生」としての意識を持ち、現時点での自分の学力レベルを確かめる。そうして、やる気いっぱいで夏休みを迎えて欲しいのです。例え英語受験をする帰国枠受験生であっても、夏で「日本の受験生」になりきりましょう。それが合格への一歩となります。
 「1学期の間は目標より1段上のレベルを目指し切磋琢磨する」。そして夏に現実的な目標を再設定し、その実現に向けて「受験生」となること。秋からは滑り止めなどを含めて「入試問題研究」に入り、合格のための勉強をする。これが今後の流れです。闇雲に勉強すれば良いということではないのです。
 もし夏あたりに日本に帰国しているならば、「志望校を見に行くこと」もお勧めします。夏期講習に対する意気込みが違ってくるでしょう。「絶対にこの学校に入りたい」という気持ちが確固たるものになりやすいからです。学力低下や児童数の減少などから「学校は入りやすくなった」と考えがちですが、有名校の難易度や競争倍率は変わっていません。こうした現実を直視し、目標を設定してください。そして、その実現に努力し続けてください。そう、結局受験勉強とは目標に向かって努力するだけのことなのです。

 

TOPへもどる