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2002年8月号 「新卒無業の衝撃」

・・・新卒無業の衝撃・・・  

 

■21世紀型競争社会の登場■  

 世界的な資本主義化の濁流が各国の伝統,慣習,商習慣を流し去り、グローバル(アメリカン)スタンダードに基づいた相互依存型国際分業体制が形成されつつある。その中で必要企業数・労働者数は競争と淘汰により大きく低下し,失業率が全世界的に高位定着しつつある。

 日本ではとりわけ不良債権に悩む金融機関や労働集約型の製造業の一部で必要雇用量が低下している。5.3%という現在の完全失業率はとても実態を反映しているとはいえず,とくに若年失業率において名目値と実態の乖離は大きい。

  ※:失業者の定義は「失業していて求職活動 をしている人」である。失業していて求職活動をし ていない「あきらめ層」を入れれば失業率は12.7 %となる。2001年労働力調査より  

 しかしこのような傾向はこれまでもヨーロッパ諸国で一般的であり,今後わが国でも定着する可能性が強い。

  ※:15歳〜24歳の若年失業率は日本では 9.2%、アメリカで9.3%、フランス20.7%, スペイン25.5%,イタリア31.5%である。

 現在わが国の20代総数1822万人のうち就業している人は、1287万人(70.6%)である。

 

■新卒無業■  

 2001年3月度の大学卒業者における就職も進学もしていない人の割合(無業者率)は21.3%に達している。(学校基本調査。文部科学省より)

 さらに「一時的な仕事についたもの」は3.9%である。すなわち大学新卒者の4人に1人は本格的な就職をしていないという意味で「新卒無業」なのである。

 さらに「在籍者における就職したものの比率」を表す就職率は55.8%である。

  ※:大学が発表する「内定率」もあるが、結 果的な「家事手伝い」「留学」「大学院,専攻科進学」 を就職希望者という分母から除外するなど、数値 が操作されている場合が多く適切な指標とは言えな い。

 この数字は大学院・専門学校に進学した新卒者が非就職者に入っているが実態としての就職率はこれに近いものと思われる。

 すなわち2人に1人は仕事がないという驚愕すべき事態である。さらにこの数値が希望業種以外に就職する「不本意就職」を含んだ数値であり,それゆえか3年未満で33%が離職することを考えると事態はさらに深刻である。

 参考までに高校卒業生への求人数は1991年152万3574人,2001年15万1667人である。(厚生労働省調べ)

 そして高卒就職者の48%は3年未満で離職する。

 

■大学の現状■

  「Fランク大学」とは河合塾の造語であるが,フリーパスで入れる大学という意味である。

  ※:定義としては@入学時の倍率が1.2倍以 下・A全ての偏差値帯で合格率が65%以上・B合格 者の下限偏差値が35以下という3条件を全て満たす 大学、学部のこと。

   Fランクの学科,受験方式を持つ大学は,私立大学の4割にあたる194校(2部・夜間除く)にも上っている。

 そして1995年の総務庁調査では大学・大学院男子の45.1%が学校以外ではほとんど勉強していないと答えている。

 すなわちわが国大学の半数近くは、入試においても、学習においても,就職においても全く機能していないと考えるべきで、そのようなところへ高い費用をかけて進学することの意味は今後問われるだろう。

 次に学校ごとの就職内定率を考えてみる。各企業ともこの種の資料は非公開であるのでenaにおける来年度採用内定者を分析してみる。次の表をごらん頂きたい。

 

学校別新卒合格者 応募者総数:269名(以下6月20現在のデータ)

学校分類
 
人数
 
うち合格者 合格率
 
各種専門学校など 26
 
0
 
0%
 
短大 1 0 0%
その他私大 155 2 1%
立教・青山・学習院 14
 
1
 
7%
 
明治・中央・法政 33
 
5
 
15%
 
早稲田・慶應 8 2 25%
国公立 32 9 28%
TOTAL 269 19 7%

 

   明らかに早慶や国公立大学が優位であって、「その他の私大」になると極端に合格率が低下する。また上位大学においても合格率は御父母の御想像より低いのではないだろうか。

 enaにおいても学校歴主義とは無縁だが、実際に入社試験をしてみるとこのような結果になるのである。

 ご父母の防衛策としては、国公立,早慶レベル合格に焦点を合わせ早期に準備することが肝要と思われる。                  

 

■enaの提案■  

 三人子供のいるご家庭では、確率的に一人は必ず新卒で仕事がないという衝撃的な現状を実証的に概観した。このような御家庭にとっての「今そこにある危機」を乗り越えるには、先ず御父母のご認識を改めていただくとともに早期の受験準備をする、ということに尽きる。  

 中学受験はもちろんしていただく。それでしか将来の学力の基礎は築けないのであるから。  

 そして第一志望以外は合格しても行かないということが重要である。第二志望からは就職がないのだから。  

 高校受験でも同様である。大学受験における一流校合格のチャンスが一流中高以外にもあることはenaの内定者の卒業高校を見てもおわかりいただけるだろう。以下、その資料として今回の内定者のデータをごらん頂きたい。

 

  内定者19名の出身学校一覧 2002/06/19現在

1・都立両国高卒、埼玉大理学部卒

2・雙葉高卒、お茶の水大教育学部卒

3・都立井草高卒、明治大文学部卒

4・共立女子高卒、早稲田大第一文学部卒

5・湘南学園高卒、共立女子大国際文化学部卒

6・都立国立高卒、中央大総合政策学部卒

7・大分県岩田高卒、慶應大環境情報学部卒

8・長野県兵庫県立相生高卒、信州大経済学部卒

9・中央大学杉並高卒、中央大総合政策学部卒

10・長野県松商学園高卒、中央大法学部卒

11・山形県立山形西高卒、新潟大人文学部卒

12・新潟県北越高卒、茨城大理学部卒

13・千葉市立千葉高卒、青山学院大学経済学部卒

14・青森県立青森高卒、東北大理学部卒

15・筑波大学附属高卒、早稲田大理工学部卒

16・お茶の水女子大学附属高卒、東京大文学部卒

17・三重県立津高卒、法政大社会学部卒

18・星野女子高卒、中央大経済学部卒

19・神奈川大学附属高卒、神奈川大理学部卒  

 

 第一志望不合格の場合は公立高校で十分である。そこから不断の努力で大学受験時に栄冠を勝ち取ればいいのだから。  

 大事なことは妥協しないこと。  

 21世紀は挑戦する世紀である。ワールドカップも大リーグも、そして受験生も、である。                     

 学院長 河端真一

 

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