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2007年8月号 「理解が遅い?!」

■受験準備生?■

 小5で自学自習が出来るようになっていて欲しい。講義中心の授業を展開するenaですから、授業の受け方や宿題のこなし方、そして覚えることの大切さなどは小5開始時には身につけておいて欲しいというのが本音です。中学受験であれば、小3と小4の時間の使い方が肝心。ここで軌道に乗ることができれば、内容的にもハードになる5年生はクリアしやすくなります。高校受験であれば、5年生から6年生にかけて、中学受験本気組程ではないけれど、それなりの知識を身につけた生徒であれば中1から加速できます。中1からメキメキと実力を付けられた生徒は中2で更に加速できて、中3開始時には入試問題演習で実践力強化のみに時間を使えます。これらの「理想計画」は、これまでの読み物で幾度と泣くご紹介してきました。そして実際に、この通りに組み立てていらっしゃるご家庭も多く見受けられるようになりました。

 でも、いまだに時折「現地校と同じ事を続けてくれる日本の学校に入りたい」「中3で受験するから、小5からの勉強内容が殆ど抜けているけど、入塾させてもらえる?」「教室の端っこに座らせておくだけで良いですから、参加させてください」という声も聞きます。「犠牲者」という視点で子供達を見ると、涙が出そうになります。お前達が悪いんじゃないよな。でも、現実は現実なんだよ。めんな。お前達を簡単に受け入れるわけにはいかないんだ。

 さて。帰国して塾通いを始めたり、enaに入ったり、「一念発起」したは良いけれど、今までの自宅学習方法(または補助教育機関での勉強の仕方)とは全く違うenaや「進学塾」のやり方に、戸惑い続けている生徒・ご家庭もあるかもしれません。その中で特に「塾にいる時間内に理解が出来ない」「家でやり直すと『簡単!』というくせに、授業中はからっきしダメなようです」というケースに焦点を当ててみました。少なからず「ぐさっ!」「ぎくっ!」と思われるところが、どのご家庭にもあるのではないでしょうか。さて、行きますよ。  

 

■こんな状態になっていません?■

 塾の宿題を広げる。うーん、うーんと唸っている。1時間が経つ。1ページも進まない。時折様子を覗きに行くと、30分前から「ずーーっと」同じページが開かれている。ああでもない、こうでもないと努力しているようだけど、その割には「ちょっと休憩」「喉が渇いた」と、のらりくらり。業を煮やして親が塾のテキストを開いて説明し、その後問題を一緒に解くと、あれま、ちゃあんと出来る。しかも「なーんだ、簡単ジャン!!」などど言う。その後のミスは多少あれど、なんとか一人で出来る。全てがこんな調子だから、宿題が終わるには、それ相当の時間がかかる。(親もヘロヘロ状態になる)手を付ける教科の順番を間違えると、他の教科が全く出来ない。時間切れとなってしまって、漢字テストの準備をせずに塾に出かけたこともある。enaの担任に授業中の様子を聞くと「とてもマジメに授業を聞いています」と言われる。ノートもマジメに書いているようだし、拗ねている性格ではない。ただただ言えるのは、飲み込みが遅い。  

 

■中学受験から考えた■

 子供が塾での授業内容を理解しない状態のままで帰ってくる。実は多いようなのです。そこで塾の先生は、それぞれに様々な工夫をしているのです。enaでは、というより私の授業では「今日の目玉商品」という「目立つ状態にして」ノートにまとめさせるようにしています。せめて、帰りの車の中で「今日の目玉はね。。」となってくれることを祈って。

 「塾に行ったこと」で全てが完結してしまう状態もあります。これは以前にも、この読み物でお話ししたことのある「有名な教材を使うから安心してしまう」「有名な塾に通うだけで安心してしまう」ということと同じです。授業中の例題や演習、説明の時間内では全く消化できない。その状態だから、帰宅して再びテキストの例題から始める。一からやり直すから、家での勉強に時間がかかる。これは特に中学受験の場合は、多い話です。実はよくある話。実際に、東京の塾状況を見てみましょう。大手塾に通っていても、個別指導の別会社の塾に通うことが珍しくなくなってきています。ダブルスクールです。「授業を受けても分からない」というニーズがあるから、共存できるわけです。どちらかに傾いていないわけです。一説によれば、日本国内の中学受験において、塾と個別指導(又は家庭教師)を併用して利用している家庭は20%程に上るとか。ひと昔に比べてダブルスクールは当たり前になってきているというわけです。それだけ子供達の理解力・学力全体が低下しているという事実です。

 小学生の場合、中学受験自体も一つの原因かも知れません。昔の中学受験は、限られた成績層だけがしていたことでした。現代は多くのご家庭が私立中学受験を意識される。そのせいで、多少頑張っても成績が変わらない現象が起きます。人より抜きん出るためには、まず第一塾の授業内容をより完全にする必要がある。場合によっては第二塾から出される個別対応のプリントで弱点強化しておく必要がある。そんないたちごっこの結果なのかも知れません。

 高校受験となると、部活が原因だったり、友達関係だったり、昔より複雑になった子供達の世界のために、こうしたことが起こっているのかも知れません。

 小学2年生の間は、「わからないことが沢山」の「パニック状態」でも得られるものはあるかも知れません。「わーーー!大変だーーー!」であっても、周囲では塾通いしている人が少ないでしょう?昔の塾通いと同じ事が、まだ、言えるわけです。大変な状態になっても、苦しんだ分だけ人に差が付けられるわけです。

 ところが3年生あたりから知的好奇心が旺盛な子供と、そうではない子供が出現する。好奇心のある生徒は、どんどん勉強を始める。スピードも質も量も加速していく。さらに塾で高度な刺激を受ける。5年生とも、もともと小学校の「要」の学年だけに、失敗すれば勉強嫌いになるどころのレベルではなくなります。

 中学受験であろうと、高校受験であろうと、受験をすると決めたご家庭であれば、多かれ少なかれ、この問題は現実に起こり得ると思いませんか?それらに、どう対処していくのかの基本的な態度を、今回はまとめてみたいのです。  

 

■はじめに志望校ありきの意味■

 現状打破に際して、最初に決めることがあります。まず2つの選択を考えるべきです。必ずどちらかを選択しなければなりません。まずは、1つ目の選択肢です。『今のままでいくのか?それとも変えるか?』ということです。どちらかを決めないといけません。

 こういうことは、お仕事をされている、多くはお父様、であればご理解いただけると思います。問題が発生すれば「何かを変える」というのは基本です。ただ、分かっているけど変えられないこともあります。現状のレベルより上の学校を目指す場合など、塾の選択の余地がないときは、なんとしても塾のカリキュラムについていく必要があります。そんなときは、時間がかかっても「現状維持」という選択だってありになります。そうなると、いかに時間を作るかの戦いになっていきます。まず、そのあたりどうなのか?例えば、塾で「5」の勉強量を習ったとします。それを完全に習得するために家では「15」の量をこなさなければならない。塾の授業について行くには、家では塾の3倍の勉強量が必要となる。時間的にも、体力的にも、それは可能なことなのでしょうか?可能であれば、現状維持の選択も「あリ」です。でも、受験学年になってを考えると、やはり変える必要に迫られることがあるかも知れません。受験学年になれば、やるべき事が山積みになります。帰国枠受験の場合、英語がどうなるかも悩みの種です。得点源になるのか、英語受験で勝てるのか。一般受験を考慮して理社も、等という場合は時間的にも体力的にも「限界」に達します。ましてやそこに「現地校のこともきっちりやって♪」などと考えてしまえば、全てが中途半端になる危険性が高い。子供達の多くは、それほど余裕はありません。それほど器用ではありません。中学受験にしても高校受験にしても、やるべき事は決まっています。志望校が決まれば「これだけのことが分かっていなければ合格できない」という量・質が決まっています。優遇措置が多い帰国枠中学受験であっても、準備無しの英語受験では合格率はとても低い。ましてや高校受験となれば、学校により出題傾向は大きく違います。無駄・無理な事をやっても、合格は遠のくばかり。だから私たちは何度もいうのです。「始めに志望校ありき」と。

 さて、現状を維持することが「無理」と判断すれば、「変える」を選ばざるを得ない。もし、変えるべきとなれば、2つ目の選択へと進みます。  

 

■変化こそ、改革■

 入塾していただくときに、よくお話します。「3ケ月、言われたとおりに続けてみてください」と。これは、帰国されて新しく塾通いされても、また次の学校に進学されたとしても、言えることなのです。まずは「余計なことをせず、言われたとおりに、やってみる」ということ。それを3ケ月繰り返しても成績向上の気配さえ見えなかったら、新しい塾・学校は我が子には合わないという証拠になります。そこに到達して初めて、工夫を始めて下さい。

 海外の場合、現地校の生活との両立が一番大きい問題になっているはずです。まずは日本の受験とは、我が家にとって、何かを考える。ここからです。本当に現地校の成績が良いだけで合格できる学校はあるのか。英語が話せるだけで合格できる学校があるのか、調べて下さい。次に、我が子の実力とは、どのくらいのものか、調べて下さい。enaの学力判定模擬試験、駿台模試、英検、帰国生模試など、調べる方法は様々あります。その上で、今までのやり方を変えなければ合格は遠のいてしまうと判断した場合、我が家の教育改革を行わなければなりません。2つ目の選択とは、「何を変えるか」ということです。選択肢は、「塾」「先生」「子供本人」の3つです。

 例えば日本国内でよく見られることに、塾の難易度そのものに無理がある場合があります。無理して上位難関クラスに入ったは良いけれど、消化不良ばかりを起こしている状態。個別指導塾でフォローしてもらえる範囲ならまだしも、それを越してしまったら手の施しようがありません。その場合は、下手なプライドを捨て、クラスの変更や転塾を検討すべきです。考えてほしいのは、いかに上位のクラスに在籍しようが、「宿題は自分一人では1問も出来ず」であれば、塾に行く意味がないと言い切って良いでしょう。そんな状態であれば、塾に行かないで市販の教材を使って勉強した方が、塾への往復時間を考えても、効率的なはずです。海外でも同じ事。塾に行けば何とかなるという時代は終わっているのです。enaの場合、例え小1であっても複数クラスに分けています。海外という特殊環境で育った子供達の実力に差があるのは当然。それを1クラスで対応するのは不可能です。受験を準備する小5や小6においては、本科2クラス、選抜科、そして個別クラスと4種類の対応が可能です。これで、よりきめ細やかな指導が可能になっているわけです。高校受験の場合、中学受験の優遇措置はありませんから「選抜科」だけの設置。このため「十分な実力」を身につけていなければ入塾をお断りしています。私立進学校と同じ考えです。向上心溢れ、こうした環境にもめげず努力し続けている「受験に真摯な生徒」を対象としたい。高校受験に対しては、この姿勢のため、多くのご家庭をお断りしてきました。成績を伸ばすことが使命である塾である以上、それが不可能である「お客さん」を入塾させたくないからです。  

 

■最後は、やはり■

 「塾」を変えたり、担当の「先生」を変えたり、教材を変えたりするのは消費者の権利。上手に利用するのは、当然のこと。我が家に合った工夫をしていくことが、成績向上のための必須条件。特に海外であれば、狭い日本人社会ですから「塾のブランド」で通うと言うよりは、「先生」を選んでいるところがありますね。あまり頻繁に先生が替わる塾・補助教育機関は敬遠されているでしょう?海外で就労に際してはビザに縛られているとはいえ、余りにも無責任に担任交代が繰り返されては、その塾・教育機関そのものに不信感がたまります。

 さて、最後の「改革対象候補」は、やはり「子供本人」です。ここで注意するのは、子供自身の「能力的な問題ではない」ということです。では、何が問題か?それは、塾で授業に取り組む「姿勢」を考えてみるべきです。真面目に聞いてはいるけど、理解しようとの意欲まではない。これが、「姿勢」です。本来、どんな生徒でも「理解」のレベルには到達できるのです。それをテストで点数にあらわすために「定着」する勉強方法が存在し、そして入試問題必須のひねった問題に化するために「応用力」が存在します。

 ここで、先ほどの「車の中で目玉商品のことを話したか」ということに繋がっていきます。帰りの車の中で聞いてみてください。「今日の何の単元習った?」「今日は理科で天体を習ったよ。金星の満ち欠けなんかをやったよ。金星の見え方って変わるんだねえ!」などと、明確に習った単元を言えるなら合格です。よくあるのは「まあまあ」なんて答え。「まあまあって、どうまあまあだったの?」「まあまあって言ったら、まあまあなんだよーー!」なんて返ってくるようなら、手遅れです。

 この「理解しようする意欲」=「姿勢」が存在しない原因として考えられることは何でしょうか。よくあるのは「どうせ家に答えがあるし」「親に聞けばいいや」など。こんな気持ちがあれば、塾で片付けて帰ろうなんて発想には到底なりません。塾に行きながら、「でも家でやったほうがより理解できる!」などといったら要注意。こういう気持ちを持っている子供であれば成績向上は、まず厳しい。こういう子供は、親が頑張れば頑張るほど、それをあてにして塾での時間を無駄に使ってしまうのです。当の本人は、時間的に勉強していることにはなるので、それだけで満足モード。まさに、悪循環なのです。  

 

■現状からの脱却■

 では、こうした我が子ならどうするか。enaでも時折お話しします。「突き放すよう」と。例えば塾に居残りして、基本問題ややるべき単元の半分は解決してくるといった「ノルマ」を課したりします。そうすることで、「だったら、授業中に片付けよう」と「姿勢」が変わる生徒も居ます。ご家庭から、現状をよく話していただいて、塾へ居残りのお願いをされる場合もあります。役割分担を管理するのも、「ご家庭(消費者)の特権」です。例えば下のお子さんもいるとなれば、尚更です。見えるものも見えなくなっている。見るべき所で目をつぶってしまっているというわけです。

 まず、よく見てみましょう。そして、その上で、進学設計をして下さい。私たちは現地校を否定しているわけではありません。習い事を否定しているわけではありません。現実と我が子を照らし合わせて欲しいだけです。余裕があるなら、塾通いなど時間の無駄です。そうした現状との比較を必ずして下さい。その上で、改革の必要性があるかどうか、考えて下さい。現状に照らし合わせた、選択肢を考えてみましょう。とくに「子供が甘えている」という状態ならば、子供を突き放すと言うことも必要です。海外であるからこそ、必要になるときがあります。それが受験準備学年です。スロースターターな我が子であれば、それを計算に入れて早めの準備をするしか対策はありません。外堀を埋めて、手を打って、そして行動します。ただ単に手のひらを返したように突き放したら、子供は路頭に迷います。それこそ、「親の無責任」というものです。

 

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