まえのページにもどる> <もくじにもどる

2007年12月号 「年の瀬に思うこと その1」

■振り返るには、まだ早い?■  

 受験が間近に迫った受験生は別として、12月にもなると 『今年1年どうだったかな?』『来年はどんな年になるか?』などと考えたりしますね。いわゆる『反省と抱負』というものです。皆さんにとって、この1年はどんな1年だったでしょうか。ここのところ非受験生のこと、とくに低学年の生徒について考察してきた傾向が強い『今月の読み物』ですが、今回も『低学年の生徒の1年』を通して、考えてみたいと思います。低学年の話ではありますが、高学年・中学生の保護者の方も、自らのこの1年を重ね合わせながら、こういう1年を過ごした方もいたんだなと感じていただければと思います。  

 現小2の生徒とします。(架空の生徒です。現在お預かりしている生徒ではありません。念のため。)塾には渡米直後の小1から通塾していると仮定します。  

■小1の3月頃の話■

 「補習校でも家庭学習量は圧倒的な量だと自負がありましたし、通信教育などでもマルが多かったので安心しきっていました。ところが塾の生活が始まってからは、目からうろこが落ちました。『ええっ、そうなのか!』『ええ?なんでぇ?』という心境です。塾の指示通りに勉強を進めていくと出るわ出るわ。子供の『あらぁ?』という問題点のオンパレード。塾の指導方針や教材のこと、カリキュラムなどをきちんと理解した上で実践せねばと思ってます。これまでの家庭学習ではどんどん先の事を(本人の希望で)やっていて、ただいま算数は4年生、漢字は2年生のものをやっていましたが、どうやら、この考え方は間違っているような木がします。受験にはまだまだ時間がありますが、逆にいかにしてだらけず、飽きさせず、家庭学習を続けて行けばいいのかが我が家の問題ですかねぇ。」

 さて。成績優秀な『保護者の方』が多い当地においては、いわゆる先取り学習を中心とされているご家庭はたくさんあると思います。現地校でもGTクラスやマグネットくらすとなると、本当に進度が早くて先取りなんてもんじゃないスピードで進んでいきますよね。また、先取り学習をするという意識があまりないご家庭でも、お子さんの勉強を見ていると、どんどん進んでしまったという場合もあるでしょう。教科書は薄っぺらだし、練習問題は少ないということで気が付いたら1年生用の問題集が2ケ月で終わってしまったというケースもあります。

 そんな先取り学習に臨む態度や内容については、これまでの「読み物」でも保護者会でも、何度か取り上げたりしました。お子さんの好奇心や意欲を、これからどう先につなげていくのかは、とても考えてしまうテーマです。

 俗に、『10で天才、15で才子、二十歳過ぎればただの人』と言われるわけですが、これは小さい頃に持った『好奇心』や『なぜなぜの精神』が時間の経過とともに薄れていくことも示しています。だから、親としては考え、悩むのです。このことは海外にいると『毎日の忙しさ』『現地校からの速射砲』『優先順位の間違え』によって、目隠しされてしまうこともあります。私たちがいう『犠牲者』となることも多々あるわけです。  

■めざすもの■

 こんなご相談もありました。「小1の子供がいます。塾に通ってませんし、低学年なのでテストらしいテストもなく、当面の目標というものがハッキリしません。とりあえず、漢字検定への挑戦を目標に、毎日勉強させています。こんな目標で良いのでしょうか?中学受験というハッキリとした目標がない低学年の場合、どう目標を設定していけばよいのでしょうか?」

 低学年の場合、勉強での目標などは設定しにくいことがあります。そんなときは、生活面の目標でも構いません。この時期に大切なのは、『目標を設定する』→『目標を達成する』ということです。ただなんとなくできるようになったでなく、できるようになることを意識して、それを達成していく。完全達成を目指す。その過程でのお子さんの様子などが、今後の勉強の際にも活きてきます。まずは、生活面からでも目標設定をしてみて下さい。

 気をつけないといけないのは、『ただなんとなくできるようになったでなく、できるようになることを意識して、それを達成していく。』という点です。お子さんが良い点数を取ってきたり、前回よりも良い成績を取ることは、たくさんあるでしょう。その時には大いに褒めてあげること。低学年の子供達にとっては、これは大事なことです。ここで気をつけなければならないのは、『なんとなく』良い点数を取ったり、良い成績を取ることです。いや、良い点数や良い成績は歓迎すべきことです。でも、そこには『狙って取る』という意識がないといけないのです。『狙っていなかったけれど結果的に取った』と『狙って取った』は同じ取ったでも、まるっきり意味が違います。狙って取ったものでなければ、次回以降の再現性がない。ノウハウも蓄積できなければ、さらに良い点数は出せないわけです。現地校生徒に多くみられる『とりあえず、やりました』で満足してしまう子供は、このあたりからできあがるのではないかと思っています。そして『自分なりに頑張っているんだから評価しろよ!』と逆ギレしていく子供も。。。  

 「入塾してから1ケ月。1つ大きな変化がありましたので、ご報告します。『勉強した時間ではなく、勉強した成果で』ということで、今まで1日1時間としていた勉強方法を、『これだけしたら終わり』という方法に変えました。反発があるかと思いきや、本人はあっさりと受け入れ、逆に『ここまでやったら終われる』と思うのか、集中力が少し変わってきた気がします。その日のノルマは、本人と相談の上、カレンダーに書き込んで決めています。1日の勉強を終えた時に、カレンダーに『やったね!』と印字されたスタンプを押すのも達成感につながっているみたいです。このまま子供のペースを崩す事無く、続けていければいいなと思ってます。」

 そしてさらに1ケ月後。

 「入塾してから2ケ月。どうやら子供には『決めた予定はやるもんだ』という意識が根付きつつあるようです。現地校もGTクラスのため、プレゼンなどがあったりして忙しいのですが、基本的には子供の意見をもとにしているため、時には『どう考えても多過ぎない?』という日があります(無理だと言っても、聞きゃしません)。そういう日は、『諦めたり、投げ出したりするかな』と思ってみてましたが、いつもより時間がかかってため息をつこうとも、最後までやりとげてます。もちろん、終わったときはいっぱい誉めてあげています。もう、誉めまくって良い気分にさせてます(笑)。うまく集中できるとやはり短時間でできますが、今ひとつ乗り気でないと時間がかかってます。その日学校でどう過ごしたかによっても左右されるようですね。まだまだぱっと集中することはできないので、きっかけ作りのようなことを考えていくつもりです。」

 さて、考察です。『「どう考えても多過ぎない?」という日がありますが、無理だと言っても、聞きゃしません。』このフレーズは、お子さんが軌道に乗っていることを示しています。『基本的には子供の意見をもとに』というところに注目。低学年といえども、決して親からの一方通行、つまりは『押しつけ』ではないことが大事なのです。海外にいる『お父さん先生・お母さん先生』に見られがちな『結局、子供達は聞いているだけで、何一つ解いていない』『全部やってもらう習慣』『早く答え言ってよ!という子供の態度』などという現象は、親からの一方通行にも原因があります。管理。ここで大切なのは、あくまでも親は『管理者』『司令塔』であって、講師ではないということです。うまく乗せて、子供自身が決めた分量というところに持っていっているところが、ポイント。親が『やりなさい!』と言わなくても、子供のほうから『もっともっと』となっているわけです。この技は、学年が上がれば上がるほど難しくなる技です。小5までには完成させておきたい技。できるだけ小さい頃に身につけられたら理想です。しかし、日によっては、まだ集中のバラつきがあるのも低学年の特徴です。それは。。。  

■覚醒■

 「決まった分量で時間短縮を目指してみました。親としては、今までの1時間ぐらいでやっていた量をキープして時間短縮と思ってましたが、ここで思わぬ誤算が生じました。本人が量を増やしてきたのです。スプリングブレイクに入って時間が出来たため、いつもより気持ち多めかな、という量を本人と相談して実行しましたが、様子を見ていつでも減らすつもりではいました。でも、文句も言わずやっているんです。しかも自分から『やろうよ』と言って。平均1時間半強かかってましたので、私としては『多いんじゃないかなー』と思いました。でも、子供は新しいことを知るのが楽しくて仕方が無いみたいなのです。子供の理解のペースに合わせて先取り学習してますが、わからないところは何度も繰り返してやってますし、私も知らないことがでてくれば、2人でPCやら図書館を利用して調べています。スプリングブレイクが終わっても、私から勉強を誘うことはありませんでした。ビデオを見ていても、『もうおしまい。やろう』と言ってきます。この前向きさが嬉しい反面、『小1ってもっと遊びたがらない?』とか『そのうち大反動がくるんじゃないか』とか、別の心配がでてきました。現地校の生活も落ち着いたので週2回の習い事も始めます。先日子供に『お勉強、好き?』と聞いてみました。私がやらせることに必死になって、娘を勉強嫌いにさせては大変と思ったからです。返事はこうでした。『国語はいろんな文が読めるから好き(本が大好きなんです)。理科も社会も楽しいから好き(教育テレビの番組が好き)』答えに算数がないことにドキリとして、『算数は?』と聞いてみました。すると、『算数は、解けない問題があるとくやしい』と答えました。ケアレスミスあり、歯が立たない問題ありで、国語のように簡単に満点にならないのがかなり悔しいようです。親バカかもしれませんが、私は『悔しい』という答えが嬉しかったです。解けないから『嫌い』なのでもなく、『仕方ない』という諦めでもなく、絶対に解いてやるという姿勢は勉強を続けていくには必要なものと思っているからです。問題が解けたときは、大袈裟すぎるほどに誉めてあげています。意図的にいい気分にさせています。『正解すれば誉められる→良い気分になる→楽しいと口にする』パターンができつつあるかもしれません。ちなみに間違ったときは、親の方がすごーく残念がってみせます。もう一度やらせてみて、それでもわからないときは1つ1つ確認しながら教えて、再挑戦へとつなげるようにしてます。子供は間違った問題があると『今度はいつこれやる?』と聞いてきます。『次は絶対マルにする!』と意気込んでます。この意気込みを消させないように、繰り返すことで身に付く学習を続けていきたいです。」

 さて、どうでしょう?このあたりのお子さんへの問いかけも皆さん一度くらいは経験があるのではないでしょうか?お子さんの目線に合わせて様子を見ながら、点検して、次へ。もう自分で階段を上がっていっているわけです。ここまでの文章を読んで「子供が優秀で羨ましいわぁ」なんて感じた方は、ある意味でアウトです。これまでの親の働きかけと努力があってのここまでですからね。一朝一夕にはできないことです。子供の資質でもなければ、塾や問題集の良さだけでもありません。  

■スランプ■

 「いつもご指導有り難うございます。塾に入って4ケ月。3ケ月間塾の言うとおりに事を運び、言うとおりにしたにもかかわらず成績向上が望めなかったら退塾するつもりで居りました。お陰様で安定した成績を修めることが出来るようになり、しかも現地校の学習にも良い影響を与えているようです。お稽古ごとも順調で、ちょうど勉強のストレス発散の場となっているようで、好循環しているような気もしています。最近お友達と外遊びをすることがぐっと増えました。これはこれで良いことなのですが、悩みも1つ。学習予定量が終わらないのです。もともと外遊びを前提にたてたものではありませんから、夕方まで遊んで帰ってくると、予定の半分、多くても3分の2までしかできません。9時には蒲団に入れたいので、できなかった分は土日にまわしていますが、結果的に土日が消化しきれなかった学習で埋まるようになってしまいました。小2という年齢もあり、あまり夜更かしはさせたくありません。そうすると『その日の予定はその日のうちに』ができなくなります。今のように、消化できなかった分は土日にやる方法で良いのでしょうか?それともその日のうちに終えられるようにするべきでしょうか。」

 これを読んで見たことあるな!とピンときた人は素晴らしい!これまでの読み物で扱ってきたテーマのうちの1つです。そのときの答えは『たとえ睡眠時間を減らしてでも、その日にさせるべきです!』でした。同じ質問でも、答えは相談者により違ってきます。ここまでの流れが合って、だからこそ『寝ずに勉強させよう!』ということだったのです。  

■リベンジ■

 「貴重なアドバイスをありがとうございました。早速子供と、次からはその日のうちにお約束の勉強は終わらせること、土日のどちらかをフリーにすることを確認しました。確かによく探してみれば、使える時間がまだある気がしてきました。食休みの時間はたっぷり過ぎるほどとっていましたし、シャワーの時間もダラダラしすぎていたところがありました。てきぱき動いたり、集中してやれば生み出せる時間があるのですね。子供も『それでやってみる』と前向きです。親の腕のみせどころと思い、がんばってみます。」

 ここまでが半分です。夏を挟んで9月。現地校が始まる季節に繋がります。これを機会にご自身の1年を改めて振り返ってみてください。今年やってきたことへの検証なくして、来年の抱負を語っても意味はないですからね。

 

 

TOPへもどる