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2003年2月号 「失敗しない補助教育機関の選び方」

■通う目的をハッキリさせよう■

 全日制日本人学校や現地校などに対して、塾のことを「補助教育機関」としましょう。補助ですから、通塾は任意のもの。行く・行かないは、本人または家庭の方針によるものです。さて、この補助教育機関の中に補習校も含まれるということをご存じでしたか?補習校に通っても日本の義務教育機関を卒業したことになりません。このことは補習校のホームページにもちゃあんと書かれていることなのです。こうしたことから、ここでは補習校のことも「塾」と呼びます。
 塾にも色々なタイプがあります。補習校のような永住する人にも門戸を開いている教育機関だったり、もろに日本的な進学塾・補習塾・個別専門塾などがあります。また大手の塾の海外部門だったり、個人経営の塾などもありますし、学生を中心とした家庭教師などもあります。日本の情報が限られているDCエリアでさえ、上記のようなチョイスがあるわけです。こうした中から自分にあう塾を選んでみましょう。
 おっと!塾を選ぶ前に大切なことがありました。まず、現在の子供の状況を把握し目的意識をはっきりさせましょう。中学受験の準備をしたいですか?高校受験の準備をしたいのですか?最低限のことだけしておきたいのですか?特定教科の勉強をしたいのですか?日本語を使う機会を増やしたいのですか?これらの目的により、通うべき塾は全く違うわけです。まず通う目的をしっかり考えてから、探し始めましょう。  

■まずチラシを集めよう。そして宣伝とわきまえて読もう■

 初めて塾を選ぶビギナーにとって、塾を知る最初の手がかりになるのはチラシです。塾のチラシを見るときの注意点としてまず頭に入れておいて欲しいのは、それがすべて宣伝であるということです。
 塾のチラシはある意味で、分譲住宅のチラシに似ています。住宅のチラシはたくさんの情報を提供しているにもかかわらず、都合の悪い情報は極力目立たないように、あるいは触れないようにしているでしょう。例えば駅から近いところにある住宅のチラシには「最寄り駅から徒歩5分」と大きく書いてあります。しかし遠い所にある住宅は、小さな字で最寄りの駅から2000メートルと書いてあったり、最寄り駅からの距離に触れていないケースもあるでしょう。
 塾のチラシにも同じことがいえます。チラシに書かれた文面からその長所を知ることも大切ですが、その一方で、書かれていない不都合なことはないかどうかにも注意を払いたいものです。  

■コースと指導教科をチェック■

 チラシを開いたら、まず初めに、その塾がどんなコース設定をしているかを見てください。塾の指導内容は既製服と同じですから、自分の目的にあうコースがあるかどうかを調べることが先決です。(enaでは小中学生はどの学年も2クラスに分かれています。)
 まずその塾では各学年1コース(クラス)しかないのか、複数コースがあるのかに着目しましょう学力にあった指導を受けるためには、5年生・6年生になったら少なくとも2コース(2レベル)以上に分かれている必要があります。
 更に指導教科に着目しましょう。アメリカにいると国語の学力低下だけに目を奪われがちですが、理科や社会なども履修できる塾の方が安心です。特に「帰国を意識して」塾に通わせるということであれば、主要科目はしっかりやっておきたいものです。英語ができるようになったからといっても、「英語しか」できない生徒であれば帰国後の苦労は目に見えています。(enaでは小学生には4教科、中学生には5教科が履修できるようになっています。)  

■合格体験記は楽しむ程度に■

 チラシに載っている合格体験記は楽しく読み流す程度にしておきましょう。体験記にその塾の指導内容や先生のすばらしさが色々とつづってあっても、鵜呑みにするのは禁物です。なぜかといえば、その体験が本物とは限らないからです。写真付き、生徒の実名付きなら本物と思うかもしれませんが、塾に都合の良いように手直ししてある場合もあるのです。
 それ以前に、海外生の場合は一人一人で事情が全く異なっている場合もあるわけですから、体験記を聞いても参考にできない場合も多く、あまり意味があるとは思えません。合格体験談よりは「失敗談」のほうがまだ利用価値があるかもしれません。
 本物、偽物、いずれにしても、体験談から分かるのはそれを書いた人の主観的なことだけですから、塾選びの参考資料としては不適切なのです。  

■入塾説明会に参加しよう■

 チラシやガイドを読んで目的にあいそうな塾をいくつか選んだら、次のステップとして入塾説明会に参加してみましょう。このとき注意したいのは、即断・即決はしないことです。入塾説明会は、どこの塾でも話し上手な先生が担当していますから、その場の雰囲気に押し流されて、つい入塾したい気持ちになりがちです。しかしよく考えてみれば、塾に入るのに、焦る必要は全くないのです。どんなに良い塾に見えても、一度家に帰って、説明会で聞いたことを冷静に考える時間を持ちましょう。
 入塾説明会に参加すると、その塾の指導内容が細かく書かれたパンフレットと料金表を手に入れることができます。もっともこれは、入塾説明会に参加しなくてももらえるものですね。手に入れたら、端から端までしっかり目を通しましょう。
 説明会の機会に、教室がどのように維持されているかを見ておきましょう、きれいすぎたり、汚すぎたりする塾は敬遠した方がいいかもしれません。いたずら盛りの子供達が通っているのですから、塾の机や椅子が傷ついているのは当たり前です。見るべきは、壊れたり汚したりした机や椅子の修繕がキチンとされているか、壁の落書きなどを消した後があるかどうか、清掃が行き渡っているかどうかなどです。きれいすぎたりする塾は「しつけは厳しく」などといって高圧的な指導をしているせいかもしれません。汚すぎる塾は教師が生徒にナめられているような塾であったり、教師が生徒を注意できないような塾である場合です。こういう塾を選んではいけません。  

■成績管理の方法をチェック!■

 各生徒の学力を把握するためには、ほとんどの塾が定期的に学力テストを実施しています。テスト回数は、月に一度というケースが最も多いようです。テストの回数があまりにも少ない塾は、生徒の学力を把握せずに勉強を教えているということになります。「成績向上・学力を伸ばす」とうたう塾で、模擬試験を実施していない所には通わせてはいけません。小テスト・クラス内テストのような絶対評価だけで実力チェックはできません。進学目的で塾通いをする場合は特に重要な問題です。(enaでは日本国内校舎と共通の模擬試験を実施しています。また中学生ならば駿台全国模試も受験可能です。)  

■体験授業の注意点■

 塾の実体を見る上では、入塾説明会だけでは十分ではありません。できれば体験授業を受けて、実際どんな授業が行われているかを確かめたいものです。本人にとってもよりよく塾のことが分かるし、親としても安心できるというもの。(enaではいつでも・どの授業でも体験授業が可能です。)
 体験授業には、通常クラスに体験入塾させるケースと、体験授業の生徒だけを集めて行うパターンとがあります。このうち注意したいのは後者のケース。入塾説明と同じく、体験授業にはその塾の看板教師が当たるのが普通だからです。体験授業でその授業が気に入ったら、入塾してからもその先生に教わる機会があるのかを確かめてください。大規模塾の場合は、普段はその分校ではなく別の分校で教えている場合もあるものです。そんな場合は、通常クラスの授業を見学させてもらってください。見学することが無理なら、外からでも授業の様子を聞かせてもらって、その塾の実体を再確認する必要があります。(enaでは授業中、教室のドアは開放しています。廊下から、いつでも授業がのぞけるようになっています。)
 宿題の出し方にも注目しましょう。多いか少ないかではなく、どんな宿題を出しているかを聞きましょう。授業中に消化できなかった基本的な問題まで宿題にしている場合は要注意です。宿題はあくまでも演習問題であり、知識の定着をはかるためのものです。カリキュラム調整のものではありません。こういう宿題の出し方をしているということは、教師の力の無さを表しているわけです。(enaでは宿題専用教材を用意しているコースもあります。)また宿題では、生徒がやってきたノートやプリントを、きちんとチェックしているかどうかが大切なところです。(enaでは提出制にしています)解答プリントを配るだけだったり、解説もなく「答えは(エ)!」というだけの授業なら、手抜きしている塾と見なしましょう。
 さらに時間外でも担当の先生が塾にいるかどうかを聞きましょう。先生が学生アルバイトであったり、複数校舎を掛け持ちしている塾の場合は授業が終わった後は先生がいなくなって質問もできないケースがあります。理想的なのは、授業がない日に塾に行っても、担当の先生に質問できる塾です。(enaでは専任職員しかいません。質問や進路相談などはいつでも受け付けています。)  

■何年生から塾に通うべきか■

 何年生から塾に通うべきかは、通う目的によって違います。まず、日本の学校の教科書程度の学力が付けば十分であるという場合は、思い立ったときが入塾の適期といえます。フランチャイズ式の学習教室や家庭的な個人塾・補習校では、小学1年生から指導していますが、高校受験まで指導するような進学塾では指導対象学年を3,4年生以上としているところがほとんどです。(enaでは小4からです。)
 中学受験をしたいという場合は、4年生からスタートするのが一般的といえます。帰国枠受験準備でも本格的な受験勉強が始まるのは5年生からですが、その前に学習習慣や基礎学力を付けておこうというのが、4年生指導の狙いとなっています。(enaでも受験用コースは小5と小6の2年間で完成できるようにカリキュラムを作っています。)
 一方高校受験では、中1からスタートするのが一般的なようですが、ケースバイケースです。中学生にもなって自学自習ができないなどの場合は、できるだけ早めに始めた方がよいかもしれません。日本国内でも内申書重視の地域では、公立中学で内申をとるために小5あたりから塾に通うことも見られるそうです。  また教科数も考えてください。通常、地方に帰国する場合は公立高校が第一志望になることと思います。そうなると5教科の準備が必要になります。要領の良い生徒であれば付け焼き刃的に習得できることもありますが、不器用な生徒であれば時間がかかります。このあたりをしっかり計画して下さい。さらに、日本の英語の力がどのくらいあるのかによっても受験作戦が大きく変わります。特に高校受験は「帰国枠のメリットがほとんど無い受験」ですから、日本国内の受験生と同じことを準備していかなければならないわけです。現地校が負担になっている生徒にとっては、恐怖ともいえますね。
 こうしたことをしっかりとアドバイスしてくれる、帰国枠受験に精通している塾に相談してから決めると良いでしょう。(enaではいつでも学習・進路相談が可能です。塾外生でも利用可能です。是非ご利用下さい。)  

■何月から入るべきか■

 一部の有名進学塾には、生徒の受け入れる時期を年間数回の特定時期に限定しています。それは希で、たいていの塾では随時募集しています。とはいえ、効率よく学習を進めるにはどこの塾でも新学期の初めからの通塾が良いといえます。塾の授業は学年ごとのカリキュラムに沿って行われますから、途中からの入塾だとカリキュラムの途中から勉強することになるわけです。
 新学期の開始時に入塾しなかった場合は、次の適期は春休み、夏休み、冬休みの講習会時期です。これはほとんどの塾が、これらの講習期間中に、前の学期の復習と次学期の予習を内容とする講習を開催しているからです。講習会でこれまでの遅れを取り戻しておけば、次の学期の学習範囲にもスムーズに入っていけます。  

■ちょっと待て、その「とりあえず入塾」!!■

 入塾説明会に参加したり体験授業を受けたりすると、その塾に入らないと申し訳ないような気持ちになるものです。先生が親切だったから、体験授業まで受けさせてもらったから「とりあえず入塾してみよう」ということになりがちです。でも、その入塾はちょっと待って。塾選びの次のステップは、これまでに仕入れた情報を再検討することにあるのです。
 ここでもう一度、最初に決めた塾通いの目的を思い出してみましょう。塾のすばらしさに惹かれて、目的にあわない塾なのに入塾してしまったという失敗は意外と多いのです。何もかも自分の希望通りの塾があるとは限りません。どこかで妥協するのはやむを得ないことですが、絶対妥協してはいけないのが塾通いの目的にあう塾かどうかという点です。客観的に見てどんなに素晴らしい塾でも、子供の性格や学力によっては、向かない場合もあります。また家の近くに希望通りの塾がなければ、ある程度遠い塾に通うことは仕方がないことかもしれません。アメリカであればなおさらです。ハイウエイを使って片道1時間かけてというご家庭も多くいらっしゃいます。逆に片道1時間なんて時間的にもったいないというご家庭もあるでしょう。こうしたことも含めて、ご家庭の事情にあわせた見極めが大切です。  

■塾はいつでも辞められる?■

 「気に入らなければ、塾はいつでも辞められるから。」と気軽に入塾する人がいますが、これは大きな間違いです。いったん入塾すると人間対人間の関わりですから、人情が絡んでやめられなくなるケースもあります。親から見て納得がいかない塾であっても子供からは「先生が好きだから」「友達がいるから」「日本語を思いっきり使える場所はココしかないから」などという理由で継続しがちです。学年の切れ目などでやめさせようとすると「先生や友達を裏切りたくない」「やめたら友達にイジメられる」等と言い出すこともあります。こうなったら、たいていの親はお手上げです。そしてこれは子供達に責任はありません。「とりあえず」と入塾させてしまったことに問題があったのです。
 また、塾で習ったことの学習効果が現れるのには時間がかかります。それを見極めず塾を転々としていたのでは、分からないところが余計に増えてしまうだけ。明らかに問題があるという場合以外は、少なくとも1年は様子を見てみましょう。
 塾選びは慎重に。塾を良く研究し、家庭の進路設計を元に親子とも納得のいく塾を選んだ上で、通塾してください。

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