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2009年7月号 「夏、時間、変革」

■夏、それぞれの夏  

 6月も終わり。現地校も終わって既に長い夏休みに入っています。レポートカードは送られてきましたか?どうだったかな?

 アメリカの教育制度からいうと、いまは学年切替の時期。それが長い休みですから、気分の切替がやりにくいかもしれません。ちょっと、長すぎるかんじがします。前の学年の総復習をして、次の学年の予習をして、というには時間がありすぎ。だから勉強だけではなく、色々なことを体験する夏でもあるわけですね。ただそれは、アメリカの教育を受け続ける人の話であって、日本に帰る人の話ではありません。

 日本に目を向けると学年のド真ん中。秋からは、どの学年・科目でも高度な内容に突入です。夏前までの内容に不安があれば、夏の間に解決しておかないと。。。

 とはいえ、アメリカにいれば世間は夏休み全開モード。日本に一時帰国すれば楽しく忙しい毎日。勉強面からいえば中だるみの時期であること、間違いなし。そういう意味では、親の方は最も子供に気を遣う時期です。でも、肝心の「親」の方が中だるみしてしまうことも多々ありますね。

 日々の勉強をしながら、修正すべきは修正して、最後の日まで夏休みを大切に使いましょう。

 さて、その「夏休み」の使い方。今回は、夏休みの宿題から見えてくる「親のかかわり方」についてまとめてみます。特に、休み明けに宿題を範囲にした課題テスト(夏期講習成果判定試験とか秋の実力テストなど)があるなど、夏の勉強の成果が問われることを前提にした勉強のやり方についての話になります。よって、小学校の低学年や難関校受験を目指す方などには、必ずしもあてはまらないことをお含み置きの上、お読み下さい。  

■2つのポイント

 日本国内での話。8月に入りかける頃から聞こえてくるのは、宿題についての声。「学校の宿題は、もう済んだ?」と子供を見れば尋ねる大人たち。子供に聞いても大人に聞いても、圧倒的に多い答えは、これです。『いや〜、なかなか予定通りに進まなくて…』

 こんな返答があった場合、確認して欲しいことが2つあります。子供に対してではなく、親に対して確認したいことが2つあるのです。

 1つは、『親の責任として、予定を実行させようとしているのか?』ということです。予定通りに進まなくなったのは、『まさに今、この瞬間から』ではありません。もっともっと、何日も前から予定通りには進まなくなっているはず。その時点で何も手を打たず、そのままにしておいたのは「子供」ではありません。放置したのは「親」です。「様子を見ていたのですが・・・」なんて言うのは単なる言い訳です。期限が迫ってから、「なぜ、できてないの?」と嫌味をウジウジ言うぐらいなら、予定が進まなくなったその時点で指摘してやることが、先人の務めというものです。嫌味しかいわない親の元にいる子供であるなら、成績アップは厳しくなるといわざるを得ません。

 予定通りに実行させようと、親子共々奮闘努力しているのにもかかわらず、予定通りに進まない。それが2つ目の確認事項です。

 2つ目。『どんな予定だったのか?』ということです。つまり、ここまでの勉強をどのように進めてきたかを確かめて欲しいのです。たとえ親がしっかりとお子さんの勉強を管理していても、予定の立て方に問題があれば、うまくは進みません。「親の管理に問題があるのか?」それとも「予定の立て方に問題があるのか?」さらには「予定していたレベル」が問題だったのか、はたまた「予定していた教材」が問題だったのかを確かめて欲しいわけです。

 もう少し具体的に話をしていきましょう。例えばこういう例です。

 今、夏休み明けのテスト範囲として、数学の宿題が60ページあったとします。60ページの宿題であれば、夏休みを少なめに30日として計算すると、「毎日2ページずつやる」という計画を「普通の人は」立てるはずです。でも、塾屋としては、この計画の立て方を「問題あり」と判定します。

 問題点は何か?世間一般で信じられている、『勉強は、毎日少しずつやる方が良い!』という考えに立てた予定、また、この勉強のやり方が問題なのです。より大きな成果を狙う場合、毎日ちょっとずつ範囲をこなしていく勉強では無理があります。つまり、『勉強は、まとめて一気にやる方が良い!』ということになります。

 よく、「コツコツ勉強することが、成果を生む」と言います。これは事実です。でも、多くの方はその意味を取り間違えているのです。コツコツ勉強するとは、毎日休まず勉強をするということです。それは、1つの範囲を何日にも分割して勉強していく勉強とは異なります。言い換えれば同じ問題を繰り返し勉強するとも言えます。復習中心主義ということは、これまでもお話ししてきたことです。ここでの環境であれば、より成果を上げる勉強とは、60ページの宿題をできるだけ短期間で終わらせ、それを繰り返すことをいいます。例えばこの考え方を中心にすると、1日に何教科も勉強することは難しくなります。その結果、今週は「数学と社会だけの週」という予定になります。この勉強方法は、私のニューヨーク時代の教え子、F君の勉強方法です。彼は日頃から、ある特定の科目を集中して勉強するタイプの生徒でした。(筑駒から東大医学部へ進学した生徒です)この方法を試したことがない場合、雑な勉強に思える方もいるのではないでしょうか。「まとめてやると、忘れてしまうから意味がない!」と思われるかも知れません。夏休みの初めの頃にやった範囲は、1ヶ月も前のことなので夏休み明けのテストの頃には忘れてしまうと心配です。そうなれば、またやらないといけなくなって、それじゃあ「意味がない!」と子供は言うわけです。復習が肝心だ、といっているにもかかわらずに、です。「忘れるんだから、もう一度やる。それが復習じゃないか。」といえば、「そんな時間ないよ!」と反論します。もしかするとお父さんやお母さんでも「何回もやる必要はないでしょ?」「新鮮みにかけちゃって、やる気が起きないでしょ?」とおっしゃる方もいる。

 でも、復習って何だったのか、思い出して欲しいのです。簡単にいえば覚えること、です。仮に数学の宿題が60ページをやるときに、6日かけてやったとします。そして、時間が経ち、もう忘れたとしましょう。時間が経過したあとで、2回目もやるとして、果たして1回目と同様に6日必要か?そんなことはありません。個人差はありますが、2回目に同じ6日など必要ないのです。半分の3日、いや1ヶ月前程度のことであれば、もっと短期間で思い出すことができるはずです。それが不可能な場合、唯一考えられることは「機械的にやっただけ」ということ。海外の子供達によく見られる現象です。「自分なりに努力したから、結果問わず認めろ」というケース。「やった」とはいうけれど、単に鉛筆で書き込んだ、という意味だけ。60ページの中で、マルがつけられるのは僅か。つまり、理解さえしていない。そんな状態では、2回目も同じ時間がかかります。何せ「何も消化していない」訳ですし、覚えるなんて高度な技術は身に付いていませんから。それは例外としましょう。

 ではコツコツと評価してもらえそうな、「毎日2ページずつやる」という方法の何がいけないのか検証してみましょう。

 1日2ページで30日かかった。このやり方でやると、実は、1ヶ月前の忘れた内容を思い出すのにもかなり時間がかかります。本当に忘れていることもあります。なぜなら、「流れを忘れてしまう」からです。まとめて勉強したときは、暗記事項は忘れても、流れは身についている場合が多い。だから「やり方」は覚えていたりする。「こんなふうにやるんだったっけ?」というようなかんじです。そのため、「思い出すきっかけ」があちこちに潜んでいる。だからやれば思い出すことが多い。もちろん、「重要ポイント」と書かれたことを意識して覚えたら、もっともっと早く思い出せることでしょう。

 反面、毎日少しずつやる勉強では、一番大切な流れについて定着せずに進む可能性が高くなります。断片的な知識。極端な悪い例でいうと、2ページのうち、最初の1ページは章末問題。次の1ページは次章の導入説明。でも、それでオシマイ。まとめをしたわけでもなく、導入を理解したわけでもない。中途半端な状態。まさに「やることは、やりました」的な機械作業です。

 同じ量の勉強をしても、やり方を間違うと、今度は再度復習するときには、思い出す勉強がロスとなるわけです。同じ頑張っても違う結果。これは一大事です。

 成果が出るから、子供はさらに頑張る!これが基本です。頑張っても成果が出ないのであれば、どんなに我慢強い子供であっても、必ず凹みます。大人だって腐っちゃうでしょう?

 さて確認してください。今現在の勉強方法は、成果が出ている方法でしょうか?出ていないなら、意固地にならず、勉強方法を変えてください。変えなければ変わりません。  

■時間の使い方

 次のお題目。夏休みについて、多くのご家庭が思っていること。それは、『夏休みは、苦手教科を克服する絶好のチャンスである』ということ。塾でもよく使うキャッチコピーの一つですね。でも例えば『夏休みは、長くて、時間がある』というのは、どうでしょうか?確かに、アメリカの夏休みは日本に比べると長い。日本の平均的な夏休みの倍はありますね。でも、「時間がある」といって良いのでしょうか?ずっと以前、3月頃に申し込んだサマーキャンプ。朝から夕方まで、ありますね。旅行も予定に入れているし、お稽古ごとも通常より多く入れたりしている。案外、夏休み中の方がスケジュール一杯ということも、多々見られます。とはいっても、現地校が無いので1日8時間程度の拘束と、現地校の宿題に四苦八苦する時間がなくなるわけですから、日本の勉強をしようと思えば普段より多くの時間を確保できる『ハズ』です。enaの夏期講習だって、受験学年を除けば「丸一日」ということはないですからね。一日の中で、例えば朝起きてからの1時間、夜寝るまでの1時間、合計2時間さえも確保できないというならば、過密スケジュールといわざるを得ません。これでは成績アップ!などということは程遠い。夏休みは日本の勉強はおいておき、英語キャンプでブラッシュアップ!というなら、それでも結構。(でも日本の学力は、間違いなく落ちていくからね。覚悟してね。)昼間は色々なことをするから忙しいけど、朝夕の2時間程度は当然確保できますということであれば、現地校に追われている平日よりは日本の勉強時間を確保できるでしょう?

 では、もう少し具体的に考えていきます。ここでは、1週間単位で考えます。普段、1教科あたり1週間で「1」の勉強をしていたとします。この単位量を「1勉強」とします。夏休みには普段より時間がとれますので、どの教科も2倍の勉強時間は取れるとしましょう。ちなみに塾の講習時間はそのまま当てはまりません。子供によって、その授業でどれくらい持って返れるもの、すなわち『お土産』がどれくらいあるかによって随分違ってきますから。その点はしっかり頭に入れて以下お読みください。

 例えば中学生くらいの子供をモデルとします。普段の勉強量を5教科とします。そうすると『1勉強 × 5教科 = 5勉強』となります。各教科均等として、これを1週間の勉強量とします。そして、この夏休みには普段より2倍の時間が取れるとなれば、『5勉強 × 2倍 = 10勉強』ということになります。さて、問題は、苦手教科に「10勉強」をどれだけ割り振るべきか?理想をいえば、いつもの3倍にあたる「3勉強」ぐらいは欲しいところです。少し感覚的な話になりますが、子供自身にとって「なんだかこの教科を集中して勉強してるな!」と実感させるためにも、2倍では少ないのです。ぜひ3倍はさせてください。そうなると、残りの「7勉強」を他の教科の勉強時間にあてることになります。

 夏休みを6週間と計算すると『10勉強 × 6週間 = 60勉強』することになります。このうち、苦手教科に使う勉強量は『3勉強 × 6週間 = 18勉強』となります。普段の勉強でいうところの「18週分=約4ヶ月分」を勉強する計算になります。そこまで時間を割くのが理想です。

 ただ、実際問題、なかなか思うようにはいきません。そもそも苦手教科の勉強は、子供にとっても苦痛です。いくら絶対量が必要だからといって、拒絶されたのでは元も子もありません。他の教科の勉強もあります。得意教科をさらに伸ばしたり、その他の教科は全体を広く浅く勉強したいかもしれません。

 そこで、効果的な勉強方法を考えます。『苦手克服には、「短期集中」が効果的』であるということです。夏休みを通して、ずっと苦手教科の克服の勉強をするのは子供にとっても精神的にも苦痛です。だから、先に書いたような方法で、1週間といった期間を決め、その期間は集中して苦手教科の勉強に時間を取るのです。たとえば、1週間で「10勉強」するうちの「6勉強」を苦手教科にあてるといった具合です。6勉強といえば、普段の6週間分の勉強量です。これを1週間でやるのです。他の勉強を得意教科や好きな教科にするエサをまいた上で、苦手教科を一気にやってしまいます。この方が、子供にとっては特訓したという感覚になるのです。もちろん、その方が成果も出やすいですから一石二鳥。あとは、「得意教科を集中的に勉強する週」「全教科を広く浅く勉強する週」という風に、成果を出していきたい順番に勉強量の「バランス」を変えていくのです。  

■変革

 『夏休みは、長くて、時間がある』ではなく、『夏休みは、集中して時間がとれる』と思えるようになると、成果は違ってきます。夏休みの勉強は、「絞った教科」で成果を出すと共に、夏休み以降、つまり9月からの勉強にハズミをつける意味もあるのです。

 すべての科目を満遍なく、ドーンと成績アップなどという夢を見ないことも大切です。夏休みが終わって、さていったい何を頑張ったんだっけ!?なんて思いになるようでは、秋以降が苦しくなります。夏は「○○を特に頑張った!」こんな風にいえなければ、せっかくの夏休みもただ過ぎていくことになります。

 変えていきましょう。成績を向上させるために、「成績向上が望めない勉強方法」を変えていきましょう。そして、この夏は苦手科目を短期集中で絶対量の集中砲火!実践あるのみです!enaは頑張る子供達を応援します。

 

 

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