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2002年6月号 「これはマズイんです」

☆「マズイ」とは☆

 私たちの目から見た、成績向上が望めないケースあるいは受験・進学において特に悪影響があると考えられることをまとめてみました。

■帰国半年前になって塾通いを始めるケース■

 半年の時間で成績向上が望める生徒というのは、塾に来る前からきちんとした勉強が出来ていて、最後の調整に来るという場合のみです。こうした生徒は入塾試験でも相当の成績を取ります。ところが多く場合、現地校の生活に追われてハタと帰国時期に気がついたので塾に来たというケースがほとんど。こうした場合は前の学年の内容も未完成ということも多く見られます。
 是非、帰国1年以上前から計画を立てて勉強させて下さい。帰国の時期が未定であり海外駐在が長期化するのであれば、なおさら早めに始めて下さい。アメリカ人化してしまった後では日本の学校が要求するレベルに対しては「想像を絶する努力」が必要になるケースが多く見られます。特に国語などは一度遅れると取り返すのに相当の時間がかかります。

■○○をやっていたから大丈夫ですというケース■

 通信教育をやっていた、補習校でやっていたなどなど。それはそれでいいのです。大切なのは「目標とする学力レベルに対して必要なことをしていて、その学習効果及び相対的な成績把握がされているか」ということなのです。
 簡単にいいましょう。受験を希望しているのに基本問題ばかりをやっていても量・質ともに不足です。模擬試験を一度も受けたことがないならば、目標校に対して準備が出来ているかさえも分かりません。これではマズイのです。
 何をして大丈夫なのか、ということを周りの大人が早めに設定してあげる必要があるのです。生活に困らない日本語力が残っている。それで大丈夫だといっているのか。そうではなく、進学・受験に必要な国語力まで身に付けているのか。こうして、しっかり「基準」を作った上で子どもたちを見て下さい。  

■目標をコロコロ変えるケース■

 受験を希望していたと思いきや、2,3ケ月で断念。2教科を中心に勉強していると思いきや、突然英語の勉強も始めるといったケース。振り回されるのは子どもたちです。数ヶ月で学習環境を変えたら、どの教科も中途半端になりがちです。
 日本国内でも「塾ジプシー」といってコロコロ塾変えをするケースがあります。成績向上は短期間にはなかなか見られないものです。それなのに即効性を求めるのですぐに塾変えをしてしまう。当然、こういった環境におかれた生徒は成績向上など望めません。
成績に効果が現れるのは子供によってバラバラで、例えば1年以上もかかることもあります。ましてや海外という特殊な環境にいるのですから、特に国語などではもっと時間がかかることも多く見られます。
 腰を据えて日本の勉強を始められるようになるまで、どうか時間を下さい。その状態になるまで、始めたことを変更しないで下さい。

■親がやりすぎてしまうケース■

 日本国内では余り見られないケースですが、海外では良くあります。親が子供の勉強を見るということ自体はとても貴重なことであり、私たちとしてもとても助かります。ところがやりすぎてしまうケースは禁物です。実はこのケースが非常に多く見られます。
 宿題は完璧なのに復習のための小テストをしてみると「全く」理解していなかったりします。ノートを見ると親の書いたメモがびっしり。子どもたちは「フンフン」と神妙に聞いていたんでしょうね。それでも子どもたちが気になるのは「答え」であり「速く宿題をすますこと」であるわけです。
 最終的には自学が出来るようにならないと成績向上は望めません。自分一人の力で答えをひねり出すことこそが大切なのです。出した答えが間違っていても良いのです。それを修正していくのは私たちの仕事なのですから。  

■予習が成績向上の邪魔になっているケース■

 予習は難しいものだと思います。どこまで何をやっておけばいいのか、子どもたちの多くは知りません。大人の目からすると「次の授業でやるところに目を通しておき、知らないことを調べておく」ということを予習とします。ところがこれが子どもたちにとってはマイナス効果になることも多いのです。
 「講義をしっかり聴き、板書されたことや話の中に出てくる知識をメモする」という習慣が付いていれば問題ありません。ところが小学生を中心に多くの子どもたちの場合、それが出来ていません。予習をしてしまうことによって、肝心な講義は上の空になることが多いのです。これでは塾に来ている意味がありません。
 知らない言葉を調べておくことなど予習したことが生きてくるのは語学や社会の場合です。それでも復習による学習効果にはかないません。暗記することが苦手になっている現代っ子だからこそ、復習することが大切なのです。あっていた問題であってもやりなおす。やり方を問題文と共に覚える。復習し終わって時間に余裕があれば予習する。あくまでも復習中心の学習計画がお勧めです。  

■先取りすることにのみ、勉強の中心をおいているケース■

 首都圏私立校の場合は授業進度が速く、まさに先取りをしています。最早それは常識となっているわけで、そうなると家庭学習においても「次へ!」という意識が働きます。塾でも「授業のペースは速い」のが普通ですから、塾に通っている場合、家庭学習でも更に先へと意識が働くことが多いようです。
 ところがこれは「理解力・洞察力・判断力があり、吸収力(=記憶力)も良い子供」でなければ効果はありません。前述の予習の学習効果が薄いというのと同じです。先取りしても「取りこぼす方が多い」からです。先取りにのみ目が行ってしまう子どもたちには「復習」や「暗記すること」を軽視する傾向が強いのです。先取りすることで勉強している「つもり」になりがちなのです。
 大切なのは学習したことを定着させ、使えるようになること。学習事項を理解することは大抵の子供がクリアーします。使えるレベルまでには訓練が必要なのです。  

■子どもを見ていないケース■

 模擬試験などを使って子供の相対的な学力を把握しているというこが「子どもを見ている」ということになります。これが「絶対評価」のように現地校の勉強も日本の勉強も頑張っているという程度でしか感じていないとすれば、それは子どもを見ていないに等しいのです。
 国語の力にもそれはあります。「普通に日本語を話しているから」という視点のみで子どもを見ていると、気がついたときには2学年近く国語力が落ちていることがあります。いわゆる「日本の常識」が欠如していることは、日常会話などでは気がつきにくいからです。
 無料学力診断試験や模擬試験の成績を見て愕然とするというケースはまさにこれに当てはまります。「こんなに悪いとは思っていなかった」。大抵のご家庭がそういいます。本来はもっと前に打つべき手はあったはずなのです。毎日の生活に追われて落ちていく学力に気がついていなかっただけなのです。その場限りの勉強を見ることだけではなく、客観的に子どもを見て下さい。それがご家庭に無理なのであれば、第三者に任せるのが賢明です。  

■現実を見ず、夢を見すぎるケース■

 例えば偏差値30台の生徒が偏差値70台の学校を希望しているとすれば、どう思われますか?「受かるはずないじゃないか」と考えますか?「それを可能にするのが塾の仕事だろう」と考えますか?私たちは後者と考えています。しかし条件があります。
 日本国内であっても全く同じですが、ご家庭との密接な関係を築くことが大切です。とにかく勉強させなければなりません。ところが「現地校が忙しいので」「平日は日本の勉強は無理です」などという現地校中心主義であれば、不可能です。塾に過剰な期待をされても困ります。週に数回通うだけで見る見る成績が上がることはありません。生徒自身の「がんばりたい」「成績を上げたい」という気持ちがあれば私たちが起爆剤になれます。そう、塾は起爆剤にすぎないのです。やる気を起こします!などと都合のいいキャッチコピーをうたう塾もありますが、私たちのような塾にとって「やる気」は育てるものであって、作るものではないのです。
 小学生のように頭が柔らかい時期に集中して訓練すると劇的に成績が変化することがあります。中学生後半以上ともなると既に自我が目覚めており、逆転をするには本人の相当な努力が必要になります。
 現在の学力から考えられる進路はどうなのか。このあと、理想の進路を歩いていくためには何をどのレベルまでクリアーしていかなければならないのか。情報収集と分析によって指針は建てられるはずです。少なくとも日本国内で最難関を目指す子どもたちがどれだけのことをやっているのか知って下さい。帰国枠受験の現実はどうなのか知って下さい。子どもたちをもっと良く見て下さい。高い希望を持つことは大切ですが、現実的な目はいつでも持ち合わせていて下さい。  

■親の頃の学校観のみにとらわれているケース■

 これだけ情報が入手しやすくなった時代になっても、いまだに「私の頃は」とご自分の頃の受験を引き合いに出す方がいます。
 大学受験も含めて、受験は刻々と変化しています。特に中学受験などは下克上もあり、新興の学校が短い期間で上位難関校に君臨することなど珍しくはありません。帰国枠受験に関しても変化しています。
 古い情報はきっぱり捨てて下さい。ましてや10年以上も昔の感覚など全く必要ありません。  

■噂に左右されるケース■

 口コミというのは一つの情報源ではありますが、鵜呑みにすることは禁物です。「○○中学は現地校のことをしっかりやっていれば合格できる」「○○塾に行けば成績が上がる」「○○先生はとても良い先生らしい」「○○という参考書は良くできている」などなど、数え上げたらキリがありません。
 大切なのは「我が家にとって、我が子にとってどうなのか」ということだけです。その情報が有益なものになるか、無益なものになるかは家庭・子供の状況によって違います。噂が正しいと立証することも情報が有益であるかどうか判断することも、今では可能なこと。正しいことなのかは調べればよいだけです。調べる方法は色々あるはずです。
 その作業で得られたことに対して、我が家のケースに当てはめてください。振り回されたり、盲目的に信じたりする必要はありません。  

■注意力が散漫なケース■

 性格的におっちょこちょいだから、では済まされません。成績を向上させるためには注意力も必要です。提出期限を守れない。注意が書いてあるのに守れない。自分で書いたメモを読み返すこともできない。こうしたことが重なり、それを放置してしまうと「いい加減な姿勢」を作ってしまい、すべての教科に影響します。算数では約分をしていなければダメなのです。国語では設問に対して決まった答え方があるはずです。
 「それだけのミスだからいいだろう」「単にケアレスミスだから」という態度では、ミスは減りません。ケアレスミスも実力のうち。注意力不足だからです。日頃から様々なことに対して注意を払う姿勢を持っていなければ、治るはずがありません。実はこれが最もマズイことであり、そして誰にでもある「落とし穴」です。  

■無計画なケース■

 進路的にも、日々の学習であっても、無計画な場合は破綻します。時間が出来たときに勉強する。これでは知識の定着も出来ません。帰国のめどが立たないからとりあえず。これでは学習目的がはっきりしていませんので勉強に身が入らなくても当然です。
 子どもたちは周りの大人を見ながら生活しています。特に接する日本人の数が少ない海外生活だからこそ、周りの大人一人一人が担う役割は大きいのです。私たちを含め、周りの大人が毅然とした態度で子供に接することが大切だと思います。  

☆おわりに☆

 まだまだたくさんあるとは思います。行き着くところは一つです。やるか、やらないか、だけです。帰国し、日本の学校に進学する予定ならば、日本の学校が求める学力レベルを身につけなければならないということです。
 多くの子供たちにとって勉強することは辛いことです。ましてや海外で生活するために、全く異なった二つの勉強を同時進行させなければならないことは並大抵の努力ではできないことです。
 そうした状況の中であっても「がんばりたい」と思う生徒を全力で応援してきました。「マズイ」ということを自覚し「変えていこう」と意識した生徒を職員が一丸となって応援しているだけの塾です。それが私たちです。

 

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