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2003年1月号 「再び過激に。今を斬る。」

■今年も受験の時期がやってきました・・・中学入試編■

 首都圏の帰国枠中学入試の場合は、高校受験などと比較すると、一般入試と別日程で実施する学校が多くみられます。男子の「立教池袋」「学習院」などは12月初旬に行われています。女子の「頌栄」も12月中旬に実施されます。首都圏の一般入試は2月初旬を中心としますので、それと比べれば2ケ月も早い入試となります。これら「入試日程の早い学校の合否結果」で、その年の入試が占えるといいます。
 今年の男子「学習院」を見てみます。帰国枠は例年約15名を募集しています。この枠に対して49名が受験しました。昨年の応募者数も49名でしたから応募者数減少に歯止めがかかったと考えられます。それまでは00年で74名が、01年で67名が応募していますから受験者減少となっていたわけです。今年の合格者は30名ですから、実質倍率でいうと1.63倍。これは昨年の実質倍率1.75倍から若干の競争倍率下降です。00年や01年を見ると、順に1.68倍、1.72倍でした。この数字から考えるに、若干の倍率低下ながらも、ほぼ例年通りといえましょう。巷でいわれている「1.7倍で合格者を絞り込んでいる」ということが正しいのではないかと思えます。ということは、この学校は「難易度は変わっていない」という結論です。この「1.7倍」とはどういうことでしょうか?5人が受験したときに、そのうち3人が合格し2人が落ちるということです。この合格率をどう考えるかは、ご家庭によると思います。
 「立教池袋中」を見てみましょう。43名が受験し、21名が合格しました。実質倍率は2.05倍です。昨年が39名の応募者でしたから、ほぼ昨年並みの応募者といえましょう。昨年の合格者も19名で実質倍率が2.05倍です。倍率は変動せず。難易度は変わらずということです。学習院と全く同じく「簡単になっている」とか「入りやすくなった」とは決して言い切れないということです。競争倍率は2倍ですから、2人のうち片方は受かり、片方は落ちるわけです。
 女子の「頌栄女子学院」は受験者122名、合格者79名でした。実質倍率1.54倍。この学校も昨年の応募者115名、合格者73名、実質倍率1.58倍ですから、ほぼ変わっていません。3人のうち、1人は落ちるという計算です。
 これらから推測すると、今年の帰国枠中学入試も例年通りであるといえます。決して「簡単になった」とはいえませんし、逆に「激化した」ともいえません。これから本番の2月を迎えます。首都圏の中学受験全体がどうなっていくのか。そして帰国枠入試はどうなっていくのか。首都圏における「帰国枠入試のBIG4」が今年も圧勝するのでしょうか。やはり今年も目が離せません。
 注:BIG4とは「渋谷教育学園渋谷」「頌英」「攻玉社」「慶應義塾湘南藤沢中等部」のことです。応募者減少が目立つ帰国枠入試の中で、3桁の応募者を集めている超人気校のことです。  

■今年も受験の時期がやってきました・・・高校受験編■

 海外で入試をする学校があります。アメリカだとNYやLAで入試を行うという学校です。入試日程は11月下旬から12月初旬ですから、例えば滑り止めとして受ける場合などは早々に「高校進学が確保」できるわけです。さらにある学校では「合格は1年間有効」という扱いをしてくれますから、お得なのです。つまり、海外滞在期間をあと1年伸ばしても、無試験で帰れる学校が確保されているということになります。
 ところが決して「全入=全員が合格」ということではありありません。海外入試の多くは「書類審査+小論文+面接」方式で受験するか、「3教科の筆記試験+面接」で受験するか2通りの受験方法が選択できます。現地校出身者の多くが利用する「書類審査+小論文+面接」方式の方が若干合格率が高いのですが、それでも第一志望ではない場合などは落とされています。どちらの受験方法でも、全体的に合格率は50%程度。決して余裕で合格ということではありません。  

■明らかな準備不足で自滅するケース■

 受験を「一つのチャンスとして」ととらえているのであれば、どんな受験の仕方でも良いと思います。特に中学受験は「公立中学」が滑り止めとして誰に対しても用意されているのですから、間違いなく中学生になれるわけです。進学することに問題が残されてしまうのが高校受験となります。
 「書類審査+小論文+面接」を実施する学校は「現地校さえ頑張っていれば合格できる」と考えられがちです。しかしよく考えてみてください。人気の高校であれば、本当に好成績の人たちがライバルになります。ライバル達はどれ位の成績なのでしょうか?例えばストレートAである生徒は珍しくありません。北米からの受験者であればESLはとっくに卒業しているという生徒も多く見られます。科目によってはアドバンスしていたり、オーナーロールをとっていたりということもあります。「現地校の成績が良ければ」という発想をするのなら、こういったレベルに並ばなければなりません。
 更に、こうした「現地校の成績が良い生徒」の多くは、結局日本の英語の試験を受けさせても偏差値70近くをとってしまいます。難関有名高校を受験する海外生の多くの戦術である「英語がカンペキ+数学で高得点」という方法が身に付いてしまっているわけです。苦手な国語の成績を英数でカバーして、さらに英数のオツリで合格圏内に入る方法です。もっとも、国語の成績も、巷で言われるほど悪くない生徒が多々見られます。事実、例えばICUの「現地校出身者F枠」を私たちの模擬試験でランキングすると3教科の偏差値で65近くになってしまうわけです。ICUの現地校枠は3教科入試をしませんから、本来3教科偏差値は存在しないはずなのです。これは『ICUを受験した生徒はenaの3教科の模擬試験でも高得点をとり続けていた』という事実です。つまり、帰国現地校枠を使う人でも、現地校の成績のみならず、日本の成績も優秀であるという証拠なのです。
 この事実に目をつぶって受験に望むということは、明らかに、準備不足による失敗だとは考えられませんか?  

■さらに大問題な国語力■

 海外からの帰国生は様々な背景を持っています。勉強面はもちろんのこと、体験や精神的な成長においても、日本国内の生徒と全く同じ視点で考察することは意味がありません。よって様々な資料を使いながら、我が校に進学する生徒としてふさわしいかどうか、見させていただきます。これが「帰国枠」を用意している学校の大義名分です。
 「書類審査+小論文+面接」の場合、小論文が重視されるのはいうまでもありません。ここで大切なことは「小論文」は論文であり、感想文等の「作文」ではないということです。作文は「見聞きしたことを羅列するだけ」で形になります。いわば、外国で生活すれば誰にでもかけるものです。しかし「論文」は「論点」があり、そして「結論、意見」が無ければならないわけです。作文やエッセイとの大きな違いはココにあるわけです。つまり、日頃から「考える習慣」が身に付いていて、与えられた課題に対しての知識があり、そこから深く考えることができ、そして意見を持つことができるのか試されるわけです。
 高校入試の例題を見てみましょう。「人とに直接会ってコミュニケーションをとることの他に、コミュニケーションをとる方法はいくつもある。いくつか例を挙げて、それぞれどのように違うか説明せよ。」
 これはつまり、時事問題や年齢相当の日本の常識などを「インプット」した上で、その後、アウトプットする方法を体得していなければ書けないものではないでしょうか。年齢相当の「国語」の授業は最低限習得しておかなければなりません。大切なのは「思考訓練ができているか」という点が最も重視されるということなのです。これは受験直前に何とかなるものではありません。時間がかかるものです。また、相対評価が出来ないものですから、模擬試験などで予測を立てることは難しいのです。自分自身で評価するわけにもいきません。また考査基準が一般と異なるなるため、一般用の小論文講座を受講しても効果が薄いのです。  

■帰国枠実施校への勝手な思いこみを捨てましょう■

 大義名分はともかく、進学校(大学付属になっていない高校)であれば、帰国生に求めるものは「高度な英語力」であるはずです。少子化・大学人気の二極化などから、進学校が生き残る手段の要として「大学進学実績」が間違いなくあげられます。高校側は生活英語ができる生徒を欲しているわけではありません。「日本語と英語の互換性が高い生徒」を欲しているわけです。このことは以前からお話ししてきたとおりです。何ら変わりはありません。入試において「英語のテストは完璧」ということが、どれほど大きな武器になるかは想像できることです。
 実は、このことは進学校だけに当てはまるのではありません。大学付属高校でも、同じように大学のことを念頭においた、学力中心の考え方から帰国生を見ている気配が感じられます。このことは2001年から帰国枠入試を始めた「中央大学杉並高校」の考え方が、帰国生に望むものを最も良く表していると思います。「将来的に中央大学大学院のアカウンティングスクールやロースクールに進学できるような生徒を求めている。一般入試だけではなく、多方面からの生徒を募集することで活性化を生み出し、中央大学の真の中核を担えるような生徒を育成したい。」英語が話せる『だけ』の学生などいらないというわけです。大学院にまで進学できるような高い学力・高い志を持っている学生を求めているというわけです。  

■駆け込みでやっても無理な証拠■

 はっきり申し上げましょう。「日本の学校を受験しようと考えるのなら、最低限2ケ年計画で準備しましょう」ということです。中学受験であっても高校受験であっても、受験学年の1年前というのは非常に大切な時期であるということです。まずは内容的に、そう言い切れる証拠を見てみましょう。
 塾での小5では、中学入試に直結する様々な内容を勉強します。算数では「約数と倍数」「小数と分数の混合計算」「円と扇形」そして最も大切な「割合」「速さ」「濃度計算」などです。国語も「抽象概念」や「論説文」がより多く扱われます。ここで練習量も、問題の質も中堅私立中学受験レベルまでに引き上げておくと、小6からの受験勉強には奥行きが持てます。中2でも高校入試に直結する様々な内容を勉強します。数学では「証明」と「一次関数」などが、国語でも本格的になる「文法」などがあります。もちろん読解問題に使われる本文も、より「大人の文章」になっていますので、語彙力も、解析力も、中1とは比べものにならないぐらいにレベルアップします。そして英語も「より日本の英語の試験」という色を濃くしていき、しっかりとした文法知識がなければ歯が立たなくなっていきます。
 例えば英語の授業で「知らない」とか「そんな言い方をアメリカ人はしない」といっているうちは、成績向上は望めません。文語と口語の区別も付かないと言うことは、進学する者としてふさわしい学力を備えていないのです。
 小6や中3になって突然受験を決めた、というケースもあり得ると思います。突然帰国になるというケースはいまだに見られることです。これがいかに危険なことか、おわかりいただけますか?小5の「割合」を理解せずして小6の「比」を理解することは不可能です。計算力がアヤシイ生徒に応用問題などできません。中2の「相似」の知識がなければ中3の「円の性質」の『理解』はできても『利用』はできないわけです。
 中3の秋にもなって「そんなことはアメリカ人は言わない」と授業中に豪語し、そのくせ日本の英語の試験成績が平均点以下であるというならば、有名難関高校受験で栄冠をつかむことは難しいといえます。それが現実なのです。こうした状況に追い込まれないようにするには「早めの、確実なるスタート」しかないというわけです。  

■現在中1の生徒、現在小4の生徒に■

 だから声を大にしていいます。「日本の学校を受験する、あるいは進学したいと考えているのであれば、最低限受験学年の1年以上前から準備を始めて下さい」と。もし、駆け込み寺的に、受験学年(小6や中3)になって始めるということは、2年間の学習内容を1年で、あるいはもっと短い期間で詰め込まなければならないわけです。これがすべての子供達に対して無理とは言いません。しかし、遅れてしまった国語の力や数学の力、そしてズレが生じてしまった英語の力の補正、また学校について調べたり目標校を設定したりと、やるべきことは山積みなのです。その負担を考えてあげてください。
 受験学年の秋以降になって突然受験準備を始める受験生など、本当に珍しいですが、います。そして彼らが過去問に手を付けるたびに「知らないこと」「できない作業」の多さに圧倒されていきます。それを「甘すぎる自己採点」で濁し、このぐらいのレベルができたら合格できるだろうと夢を見るわけです。帰国枠を利用するとしても受験をするのであれば当然、夏期講習で完成するはずの前学年までの復習が「まったく」できていないのにもかかわらず、です。
 今の君たちならば、まだまだ十分に時間があります。どうか気を付けてください。現地校の経験はとても貴重なものですが、あなたの進学設計を狂わしてしまうほど大切な ものではないはずです。このままの生活を続ければ、日本の学力がもっと落ちていくのは目に見えているでしょう?一度落ちた学力を引き上げるのに、どのくらいの苦労が必要だと思いますか?
 日本への進学を考えているのなら、どうか、今すぐ準備を始めて下さい。

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