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2004年6月号 「勉強する気がでるかも知れない。とっておきのQ&Aその1『お母さんの疑問&不安に関するQ&A』

Q:帰国枠中学受験は簡単だっていうから受験しましたが失敗しました。結局高望みだったようです。それからというもの、本人に勉強に対してのやる気が全く見えません。ダラダラした毎日です。どうすればいいのか分からず困っています。

A: やる気の無さには2種類あるようです。一つは自信を失ってしまった場合です。でもこれは、目先を変えることで対処できるはずです。現地校の先生などには、「子どもの持つ才能を引き延ばす指導」に長けている人が多く見られます。特に小学校の先生に多いようです。ご質問のように中学生以上の場合、高校受験に対しての強いモチベーションに切り替えることもできます。簡単とまではいいませんが、対処できる範囲といえます。
   自信を失っているのは、実は親の方です。子どもの顔を見て「落ちたからかわいそう」「落ちたことが恥ずかしい」「あの学校に未練がある」と引きずっているのは親であることのほうが圧倒的に多いわけです。まず、親が開き直ることが第一歩。
   やる気のなくなったもう一つの原因は、友達関係から来るものといわれます。受験に失敗したことは友達にも知れています。特に海外の日本人村は狭く、あっという間に知れ渡ってしまいます。そのような中で生活するのは決して愉快なものではないはずです。そこで、活躍の場を他に設定してあげることが大切になるわけです。今の生活パターンから脱却するといっては大袈裟ですが、塾に通い始めてみたり、習い事を始めてみたり、刺激の方向・度合いを変えてみるのです。そして周りから一目置かれることが増えれば自信は取り戻せます。現地校に適応したときと同じです。そんなことでも元気は取り戻せるはずです。ウジウジしているだけでは、決して好転しません。すぐに本帰国して環境を換えることができるのならば、嫌な噂ともバイバイすることができますが、そうではない場合、頭を切り換え前向きに生活していくしかないわけです。  

Q:小学生の女子を持つ母です。娘は性格が引っ込み思案で、現地校でも塾でも授業中に質問することができません。授業が終わった後や始まる前にすればと勧めたのですが、それも恥ずかしがってできないようです。少人数制の塾に通わせているのですが、あまり効果が現れません。どうしたらよいのでしょうか?  

A: 大人とうまく話ができないのは、失敗を恐れる・叱られるのが怖いという心理が背景にあるといわれます。亭主関白なお父さんだったり、小言が多いお母さんだったりすると「萎縮する子ども」になりやすいといわれます。もし、このケースに当てはまるのであれば、親と反対の性格の先生を捜してみましょう。正反対の雰囲気の塾でも良いでしょうね。少人数制にこだわる必要はありません。ノンビリしていて、おおらかな、それでいてきちんと教えるべき事を教えてくれるところ。失敗に気が付かない(若しくは気づかないフリができる)先生が適任です。若くて、お友達感覚を持てる先生が効果的ともいわれます。まず、大人に対して行動を起こすことが怖くないんだということを分からせてあげる必要があるわけです。
   塾が好きになったら第一段階終了です。第二段階は成績向上に対してのこだわり。ここまでは成績向上については眼をつむっています。(つまり受験生にはお勧めの方法ではなかったわけです。)ここから成績向上につなげたいのなら、思い切って塾替えをする・先生は同じでもより受験用のコースに切り替えるなど、工夫をしなければなりません。このあたりは本人と意見を交えながら慎重に選択していかなければなりません。特に中学受験の場合は帰国枠であっても様々な情報が必要ですから、「子どもが気に入っている塾だから」という理由だけで通塾を続けると、情報収集などの作業を家庭がする羽目に陥ります。ただでさえ忙しいお父さん・お母さんに、今以上の負担を強いることになるのです。塾は(補習校も含め、学校ではない補助教育機関も含む)教えることだけではなく、情報提供も仕事の一つです。それを満たしてくれないとすると通わせる価値は半減です。  

Q:先生に、分からないことを質問させたいのですが、なぜか、とんちんかんなことを聞いてきます。どういう指導をすべきでしょうか?

A: 算数の質問をさせようと準備していかせたのに、全く違うページの違う問題を質問してきたり、違う教科の質問をしてきたり。。。現在のお子さんの心情を察するに、いわゆる「初めてのおつかい」状態なのでしょう。大根を買いに行かせたのに、ナスを買って帰るようなものです。お子さんは質問をするという行為だけで精一杯なのです。まずは質問できたことを誉めなければいけません。やる気をなくしては何もなりません。そして、質問することに抵抗感をなくすことが第一歩です。enaでは職員室はオープンで、しかも自習室完備ですから環境的にはいつでも気軽に質問できるようになっています。それでも子どもによって、性格によって、しづらいところもあるかも知れないわけです。そこでenaでは復習ノートを使って、いわば交換日記のように質問を受け付けたりもしています。また、eメールを使って「分からないと思ったらすぐに質問する」ということにも対応しています。
   次に、親と先生との間の「メッセンジャー」にならないようにします。目的も分からず単に親に「質問してこい」といわれたままに行動する。これでは犬と同じです。この状態が続くと、質問することによって得られる知識の大切さ、質問するという行動自体の大切さなど分かるはずがありません。質問の答えを「わかったの?」と問われても「わかったよ」というだけ。質問して分かったことを役立てる工夫が必要なのです。または、質問する内容を親が厳選し、のちに活用できるようなことを聞きに行かせるなどでもいいでしょう。例えば、世界で一番高い山の名前を質問しにいかせるよりは、一番高い山を調べる方法を質問させるべきなのです。質問も練習が必要なのだとわきまえましょう。  

Q:中2男子の子供を持つ母親です。塾には楽しそうに通っています。しかし、その割には成績が伸びません。遊んでばかりいる塾なのでしょうか?  

A: 塾が楽しいというのは大いに結構なのですが、成績が伸びないというのは困ったものです。高い月謝を払っているのですから、それなりの効果を期待するのは消費者として当然の権利です。「これだけ色々な生徒がいて、週に一度の授業なんだから成績向上なんてできません」と投げ遣りな指導をするような塾には行かせたくないですよね。
   塾の善し悪しをチェックするポイントは、成績不振に対して、塾側のフォローがどうなっているかです。例えばenaでは現状を報告するために「毎月のあゆみ」を利用して家庭へ連絡しています。更に問題が重大である場合は電話連絡で担当が直接連絡することもあります。宿題の管理も、enaでは「復習ノート」を使って担任が直接管理しています。計算や漢字などを「毎日の勉強プリント」で、また日々落ちていく日本語力に対しては「音読シート」をつかってフォローするようになっています。こうした「成績向上のためのシステム」がしっかり準備されているのであれば、塾の方は大丈夫なはずです。楽しんで通っているのであれば、しばらく長い目で見ましょう。
   中2は精神的にも成長する時期です。その成長に伴って成績が上がるケースもよく見られます。特に夏あたりに一時帰国し、日本にいる友達からの影響を受けた直後とか、高校見学にいったためにモチベーションが高まって、というケースが多く見られます。その際親としては、子どもが日本の勉強から離れないように見守ってあげることが大切です。「現地校のことが大変で」「今はオーケストラのことが一番だから」と優先順位を間違えると、いざ帰国前になったところで大騒ぎとなります。その時にはすでに手遅れということにもなりかねません。注意しましょう。  

Q:小5の女の子を持つ母親ですが、最近親のいうことを聞かなくなってきました。どうやって勉強させればよいのでしょうか?  

A: 親を一個人として意識し始める時期です。海外に長く住むと退行現象も見られるので、もう少し遅くなることもあります。男子の場合はの多くは中学生になってからが多いようです。
   この時期は、親のいうことよりも友達の意見に従ったりします。いわゆる自立です。健全な成長です。小言を嫌がる反面、新しい情報には敏感です。友達が中学受験をするといえば、自分もするから進学塾に通いたいと言い出します。背伸びをしたがる時期、とでもいいましょうか。女子の場合はお母さんの口癖を、そのまま再現することも多く見られます。これも背伸びの証拠の一つ。
   ここで自立心を育てなければ本当の意味での「自学・自習」などできません。それには彼らの「自尊心」を損ねないようにしなくてはなりません。かといって「おべっか」を使うようなことは良くありません。彼らはそれを見抜く力を身につけ始めています。
   対応例の一つとして、ちょっとレベルの高い塾・問題集などを見させてみましょう。目標とする学校があれば過去問(一般入試の)などでもいいでしょう。要するに「現在よりもハイグレードなイメージ」を見せてあげればよいわけです。女の子であれば多少のおしゃれ心も育ってきている時期。そうしたことを否定するのではなく、心理を利用するべき、ということです。  

Q:中1男子を持つ親です。これから反抗期が来るといいますが、どのようになるでしょうか。どうすれば勉強するようにし向けられますか。初めての子どもなのでよく分かりません。  

A: 一般的には中2の秋までに反抗期を迎えます。反抗期は3ケ月ぐらい続くといわれますが、個人差が激しく半年以上続くことも多々見られます。どんな様子かといえば、意味無くイライラしたり、言葉遣いが突然悪くなったりします。その反面、人生や将来について考えるようにもなります。異性にも興味を抱きます。勉強をしなくなるタイプと打ち込むタイプとにわかれます。何事にも真剣であることも事実です。この時期になって突然芸術に目覚める子どももいます。
   現代の受験スケジュールからいえば、中2の秋から勉強しなくなるということは、志望校を2段階も3段階も下げるようなもの。絶対に「勉強しなくなるタイプ」にしてはいけません。ましてや海外生の退行現象が絡んだ場合、中3になってから反抗期を迎えることになり。。。  当然結果は目に見えています。帰国枠高校受験の場合、ただでさえメリットが少ないのですから絶対に勉強をし続けなければなりません。抜群の英語の力があり、加えてもう1教科強ければ3教科入試は突破しやすいですが、そうではない場合、志望校変更を余儀なくされます。
   反抗期で勉強しなくなることが不安。成績下降が不安。対処法は一つです。反抗期になる前に「口うるさいぐらい、勉強するようにし向ける」ということです。地道な作業を疎んじている場合、絶対に矯正してください。8割覚えている程度では誉めないでください。常に完全暗記が基準。計算でも同じです。こうした地道な努力が「普通のこと」として定着すると、例え反抗期に入っても基本学習内容・最低限やるべき事は押さえていられます。
   反抗期の子どもは自分の感情をコントロールできません。正確に言えば、コントロールする練習をしているようなものです。大袈裟な例でいうと、塾の教室で、叫びながら勉強している子どももいます。親は、そんな子どもにうろたえてしまいがちですが、ぐっとこらえ、心の落ち着くのに合わせてアドバイス・管理をしていくのがいいと思います。  

Q:中2の女子をもつ母親です。娘は小さい頃からテニスを続けてきて、いまでも夢中です。現地校でもクラブに入って毎日ヘトヘトになるまでやっています。塾の模擬試験はまあまあ平均点並みは取っているのですが、このままでいいのでしょうか?  

A: 日本の高校のクラブ活動加入率をみてみましょう。地域によって多少のずれはあるものの、公立高校の場合は、上位校ほど加入率が高いというデータがあるのです。例えば県立が優勢である千葉県の場合、名門県立千葉高校では加入率は9割以上だそうです。しかも運動部系の方が盛んです。ただ、定期試験の時期にはクラブ活動はお休みになるのが普通です。あくまでも勉強が優先されるという認識があるわけです。
   現地校のクラブはどうでしょう?ミッドタームやファイナルの時期にも練習はあるのでしょうか?そうした時期にも遠征はあるのでしょうか?あったらちょっと問題です。その指導者はやりすぎなのかもしれません。また、本人にしても勉強とクラブの「けじめ」はきちんとついていますか?中学3年間を野球中心に送りながら、それでも有名難関校に合格した生徒はいます。ところが彼らはきちんとけじめを付け、そして人の数倍も陰で努力しているのです。それを抜きに簡単に「我が子にだって可能なこと」などと考えてはいけません。
   また、帰国枠受験がまだまだ不透明な部分があるために、海外生の場合だと勘違いする場合があり得ます。クラブを一生懸命すると合格し安いという噂。ここまで読めば違うと言うことが分かりますね。けじめの付いている生徒は、クラブも勉強もきちんと両立させているのです。噂を信じてクラブの成績にばかり目を奪われている人は「クラブを一生懸命すれば高校に受かる」と思いこんでしまうわけです。スポーツ推薦を狙うのであれば別ですが、帰国枠であってもそんなに甘いことはありません。現代の正確な受験事情を念頭に、様子を見てください。  

Q:塾の先生に、自分の子どもをもっとよく見てもらいたい、分かってもらいたいのですが、どうしたらよいのでしょうか?  

A: 乱塾の時代ですから、消費者として様々な要求を出しても良いはずです。それを満たさない塾はすでに淘汰されているはずです。塾も企業です。努力していないところは消え去っているのです。「こんな所を分かって欲しい」ということを直接伝えること。具体的にして欲しいことをぶつけてみましょう。ただし、常識的に考えて「単なる我が家の我が儘」をいうだけでは逆効果。逆に疎んじられてしまいます。このあたりのさじ加減が難しいところ。
   塾の先生だって人間です。さらに子どもと接することが好きなはずです。子どもたちの成績向上のためには労も厭わないはずです。それを上手に引き出す・利用するようにしましょう。
   ただ塾の先生が忙しい時間は割けるのがエチケットです。ちなみに授業前後は一番忙しい時間帯です。午後1時くらいの早い時間などに相談すると良いでしょう。また保護者会などには必ず出席し、塾の先生に「あの家は進学に対して真剣なんだな」と思わせることも大切。結局、先生が頼りですという気持ちを打ち出すと良いでしょう。先生のやる気を引き出すのです。  

Q:父親は東大卒、母親の私は短大卒。子どもに馬鹿にされ、勉強をさせようにもいうことを聞きません。どうすればいいのでしょうか?  

A: 東大生のお父さんとマトモに話ができる女性なのだから、お母さんは偉いといいきってください。「賢い」と「勉強ができる」は別物という意識は、高学年の子どもになれば理解できるはずなので、この理屈は通じるはずです。
   また、お母さんは勉強をさぼったのだと素直に反省しているもいいましょう。勉強しなかったばかりに、子どもにも馬鹿にされるなんて不幸なことだわと情緒に訴えるのも効果的です。
   いずれにせよ、子どもはお母さんの口やかましさを嫌がっているだけです。何も本気でお母さんを嫌がっているわけではありません。どうしてかといえば、親を否定することは自分自身を否定することにもなるからです。お母さんがもっと自信を持つこと。これが一番です。  

Q:公立高校志望だと塾に通う必要はない、学校の勉強だけで良いという話を聞きますが、本当ですか?  

A: 勉強内容についていえば確かに学校の勉強をきちんとやれば、それで大丈夫なはずです。しかし例えば公立中学で使っている英語の教科書は4種類。それぞれ例文や単語が違います。極端にいえば、習わない単語が出題されることもあり得ます。このため、学校の教科書以外の、市販の問題集などで勉強する必要があります。そういう観点では塾で勉強することは効率がいいわけです。塾が必要とか、必要では無いという次元とは別です。
   また、現実的なことを考えてみましょう。受験では塾で鍛えられた生徒とも戦わなければならないのです。このことは帰国枠受験でもいえます。作文だけの帰国枠入試であっても、塾で訓練を積んできた生徒は合格するためのノウハウを伝授されています。彼らに勝てるだけのものがあるのかどうか。帰国枠入試模試などあれば是非受けてみると良いでしょう。その結果から、判断してみては如何でしょうか?(一般に、地方の公立高校受験は、海外生にとっては厳しい道のりです。詳細はバックナンバー2002年の3月・4月・5月号をご覧下さい。)
   補習校の授業だけでは不安という方が通信添削を受講されている場合もあります。通信添削といってもレベルは千差万別。志望校に合うものとは限りません。このあたりを、高校の過去問などを参考に確認する作業が必要です。また家庭教師についても基本的なことは通信添削と同じです。こうした補助教育機関の使い方は十分に考えた上で利用しましょう。  

Q:テストのでき次第で欲しいものを買う約束をさせられましたが、買い与えることは励ましになるのでしょうか?それとも単なる甘やかしなのでしょうか?  

A: 甘やかしです。ただ、ご褒美がいけないというのではありません。勉強は辛いものです。一生懸命やって、その結果が出たのであれば、誉めたり、ご褒美を出すことは必要なことだとも考えられます。
   ただ、そのご褒美が勉強の妨げになるようなものでは本末転倒です。また、勉強した結果、買ってもらったものが勉強に関するものでは、子どもの方が納得できないでしょう。ご褒美は参考書を10冊、というのではジョークにもなりません。
   例えば旅行などは楽しい思い出や経験になり、それらが次の勉強への原動力にもなり得ると思います。家庭の方針に従い、しかも次の目標に向かって努力できるモチベーションになり得るものが良いでしょう。各ご家庭で、これ!というものを探してみてください。

 

来月は受験生の視点から見たQ&Aの予定です。ご期待下さい。

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