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2012年05月号 「難易?忍!」

 

■勉強って。。。

 勉強が軌道に乗っているかどうかを見極めることは、とても難しいですよね。「これは簡単」「これは難しい」ある単元ではハッキリ感じるのに、ある単元では微妙。教科でも違うし、学年でも違う。教材でもいろいろ。

 海外に来て、まずは現地校の生活に馴染むことが最優先されて、日本の勉強は後回し。そして「じゃあ」となってイザ!始めたら。。。うーん。微妙。「わかっているのかわかっていないのか、わからない」とお感じになっていらっしゃるご両親が多いこと。

 例えば受験するかどうかは未定。これまでは補習校に通っていたり、通信教材を利用したり。ある学年、例えば小3位まではお母さんと二人三脚でやってきたっておっしゃるご家庭は沢山いらっしゃいますね。お稽古ごとはピアノとサッカーと英語のチューター(現地校の宿題を見てもらったり)だけに絞り、週末は家族旅行など「海外体験」を重視して生活してきた。

 でも、小4後半から変化が。。。取り組みが遅くなったり、集中力もとぎれて落書きしていたり、トイレ休憩でずっと本を読んでいたり。ダラダラとしていて、勢いが全く感じられなくなったなんてこと、ありませんか?

 enaの宿題が難しく、時間をとられる。そうおっしゃるご家庭は多いです。集中して「ちゃっちゃと」やって欲しいと思うのが親の気持ち。でも4年生ぐらいになると自我もでてきますので親子バトルの開戦。就寝時刻が遅くなり、「早くやりなさい!」という声が家中に響いていたり。。。

 例えばこういう状況だと、家庭学習に集中して取り組ませ、成果を挙げるには、親はどうのように導いていったらいいのでしょうか?  

■我が家の優先順位

 説明会で、いつもお話しすることに「何が我が家で一番大切なことか、もう一度考えてみてください」ということがあります。enaは進学塾ですから、本来「先を見越して、いまのうちから準備しましょう」とだけ、お話しすれば良いのですが、海外生活という特殊な環境におかれた子どもたちにとっては、ご家庭にとっては、それ「だけ」を押し通すことは無理があるのかなあと思っています。我が家にとって現地校での生活が最重要ということであれば、日本の勉強は二の次でしょうし、「全部取り!」ということであれば、全部が優先順位1位なのでしょう。ただ、そこには「子どもの許容量」があり、それを越せば、子どもは「犠牲者になる」とお話ししてきました。芸能人並みの生活を送り、端から見れば何も身に付いていない状態の子どもを、何人か見てきました。それは子どもが欲した生活ではなく、失礼をお許しいただければ、親の自己満足のために子どもが振り回されているとしか見えないものでした。私も人の親です。親の気持ちがわからないわけではありません。ただ、そこに「子どもが主人公である」ということが欠如していました。子どもを観察していれば、状況がどうであるかはわかったはずなのです。他人の私たちでさえ、子どもの異常に気がつくくらいですから。

 さて、学習に限って、話を進めましょう。

 例えばenaに通い始めて、補習校とは違う問題に圧倒されてしまう子どもたちもいます。また、毎年見られることですが、小3までは好きだった科目が、小4後半から苦手になってきたということもあります。難しい問題にペースを崩してしまい、ついつい勉強時間が長引いてしまう。きちんと家庭学習をやればやるほど、出てくる問題ともいえます。

 でも、これは実際のところ『普通のこと』なのです。「簡単な問題」と「難しい問題」のうち、子どもたちがやりたがるのは、どちらでしょう?もちろん、「簡単な問題」です。中には難しい問題をやりたがる子どももいます。彼らは訓練された子どもたちです。そうではなく、今まで塾にも行ったことがない子ども。普通の子どもといわれる場合、ほとんどの子が、「簡単な問題」を選びます。なぜか?簡単な問題は自分の力だけでできるからです。できない問題を前にして、達成感などありません。やっててもおもしろくないです。

 ここで親は悩みます。簡単な問題だけを勉強するのであれば、子どもたちはあまり抵抗しない。でも、わかる問題をやるだけでは勉強にならない。なんとかして、「難しい問題」、もうワンランク上の問題にも取り組ませたい。この線引きが非常に難しい。あるご家庭からは「enaと補習校の中間レベルのところがあったらなあ」とうかがったこともありました。

 私たちであっても、同じことを考えます。どうやって、子どもたちに難しい問題に取り組ませるか。このテーマは、どの学年でも、どの教科でも、トライ&エラーを繰り返してきました。いや、今もトライをし続けているといった方が正しいかもしれません。これは、子どもによって通用したりしなかったりがありますから、難しいところです。では、今までのenaのトライ&エラーから、子どもたちに難しい問題に取り組ませるポイントをいくつか紹介しましょう。  

■バランス

 「難しい問題」の比率について。一言で言えば、『欲張ってはいけない』ということです。親の欲と子どもの欲は、基本的には反比例です。これについては、今までにもお話ししたことがありますから、なぜ欲張ってはいけないかについては、ここでは省きます。では、もっと具体的に、難しい問題とそうでない問題の比率は、いったい「どのくらい」が良いのか?いかがですか?考えたことありますか?親が横につて勉強を見るという年齢は限られています。べったり横についていても、簡単な問題と難しい問題の比率を数値化するのは難しい。ましてや単に問題集を見て、比率を決め、子どもに渡すとなると、セミプロのレベルですね。正直申し上げれば、「親の勘」ほど子どもの実情とかけ離れているものはないです。親が「この程度、できるだろう」と思って線引きをしても、実は全然ダメってことは普通にあります。enaの宿題でも「これは、お父さんがやらなくても良いっていったから」と間引きしてくる子ども・ご家庭があります。でも、こういう子ども・ご家庭に限って、模擬試験などでは出来ません。

 さて、比率です。トライ&エラーの結果から言うと、『難しい問題 : そうでない問題 = 1 : 3』くらいが丁度よいと思います。ただし、これは問題数ではなく、時間配分と考えてください。つまり、1時間の勉強時間であれば、そのうち難しい問題に取り組むのは15分程度ということです。問題数で考えれば、さっと10問中の1問が「難問」ぐらいになるのではないでしょうか。それでもうまくいかない場合は、さらに難しい問題の比率を下げる。もちろん、難問に取り組む姿勢がついてくれば、比率を上げればいい。大事なことは、これもまた説明会でお話ししていることなのですが基本問題・簡単な問題「だけ」ではいけないのです。スパイスを利かせないと、勉強はダレます。また、基本問題が完全であれば、応用問題ができるという話がありますが、眉唾物です。難しい問題は、進学のためにも慣れておく必要はあります。だからバランスが難しい。

 プロの指導者で、難しい問題を簡単な問題に感じさせる指導テクニックを持っている人であれば、「難しい問題の比率」を100%にして数時間指導することだって可能なことは参考までに付け加えておきます。  

・勉強にとりかかるまでに時間がかかる  

・勉強に集中しない  

・休憩ばかりする

 現状で、上記のような症状が見られているのであれば、勉強方法を変える必要があります。塾の宿題が負担きわまる。だったら、少し塾をお休みする必要があるかもしれません。逆に物理的に時間がかかるものだけで、飽きがきてしまっている。だから上記のような症状だというのであれば、これも「勉強方法を変える必要がある」となります。いずれにしても、これもまた説明会や授業中に子どもたちに話すことなのですが、『変えたいならば、変わらなければ、変えられない』ということです。この話もずっとしてきたことですね。  

■順番

 では、比率はクリアしている方には、難しい問題に取り組ませる2つめのポイントをご紹介します。それは、「難しい問題」をさせる順番です。最初に書きましたが、難しい問題を自ら勉強したがる子どもはほとんどいません。できないことほど、苦痛はないです。うーん、と問題とにらめっこすることに快感を得ている子どもなんて、想像したくないでしょ?普通、いません。わかんなーい、といって放り出すのが健全な子ども。ただし、訓練した子どもであれば、難問に果敢に挑戦するようになります。enaでは、そういう子どもたちを沢山見ます。そういう子どもたちが、有名難関校に合格・進学していきます。

 訓練していない普通の子どもであれば、最初から難問を考えるとなると、一気にやる気を失ってしまいます。では、やっぱり最後か?さっきの例の1時間の勉強であれば、45分はできる問題をやり、最後の15分で難しい問題をやる。こういうやり方をしている人は多いのではないでしょうか?理論上は、できる問題をやって、その勢いで難しい問題に取り組ませるということが成り立ちそうでしょう?実際のところはどうなのか?

 やった人はよくわかると思うのですが、実際にこれをやると、つまり、勉強の最後に難しい問題を解くなんて決めてやっていると、子どもたちは「魔の時間」が近づくことを警戒し、その前から拒否反応を起こしたりします。調子よくやっていても、「あの魔の時間」がきっと、必ず来ると思うと、気持ちが萎えるんでしょうね。子どもの習性です。だから「例題を見て、基本問題を見て、演習問題をやって」という通常パターンだけだと、子どもたちは逃げてしまうことがあります。教材自体、それを考えて、レイアウトを変えているものがありますね。

   ということは、家庭学習の場合は、親がタイミングを計らねばなりません。ここの中で「よ〜し、今ノリノリの状態だから、次いこう!」というような、子どもの様子を見ながら「難しい問題」を登場させるのです。陳腐な言葉で言うならば、子どもにエンターテイメントを見せる・感じさせるということでしょうか。これまた説明会でいうことなのですが、「enaは決して点取り虫を育てるつもりはありません。ただ、点数は変えられることはわからせたい。そういう意味で、勉強はゲームだと感じさせたいのです」とお話ししています。この視点から言えば、大切なのは、重要なのは、『子どもに心の準備をさせない』ということなんでしょうね。enaに通っていること自体が、非日常なのかもしれません。授業では、何が飛び出すかわからないこともあります。テキスト通りには持っていかないこともあります。それが、刺激、なんでしょうね。こうした訓練を身につけていった子どもであれば、難しい問題に、一人で立ち向かうことが出来るようになっていくわけです。ご家庭で、という場合には、感覚的には、「難しい問題」をそっと混ぜるといった感じではないでしょうか。「魔の時間」をあらかじめ感じさせないで、「比率」を考える。そんなかんじです。  

■危険な言葉

 しかし、それらを抑えていても、それでも、それでも子どもたちは難色を示すことは大アリです。特にこれまで「難しい問題」にこだわって勉強時間の多くを子どもとのバトルに費やしていた家庭であれば、子どもは「どうせどこかで難しい問題をやらせやがる!」なんて思っているかもしれません。普通のご家庭にとっては、それだけ、難しい問題をやるのは、嫌で面倒臭いことではないでしょうか?そう考えると、そこまでして難しい問題に取り組む必要なんてあるの?といった疑問する感じてしまいます。皆さんは、なんのために難しい問題に取り組ませようとするのでしょうか?それについて、ちゃんと考え、その考えていることを言えますか?目的が明確でない上に、子どもたちがやりたがらないものというのは、かなりハードルが高いですからね。実はこれも、これまでお話ししてきました。「教養のため」とか「いずれ日本に帰るから」なんていうボワンとした言葉だけでは、子どもたちには通用しません。現実をつきつけ、背負わせなければ、二重苦に耐えられるはずなどありません。そう、子どもたちは日々戦っているのです。本当は、逃げたくて仕方がない。

 enaからの答えは簡単です。ここは進学塾。縦社会。当然「受験に必要だから」とか「試験に出るから」と言えば、それだけで十分。では、ご家庭では?難しい問題を子どもたちに取り組ませる理由を、なんと説明しましょうか?

 自信を持たせるため、としましょう。難しいと思っっている問題が解けたとき、子どもたちは達成感を感じ、自信を得ることができます。その自信が結果的に成績アップへとつながるわけです。最初のほうで、プロであれば、数時間でも難問に取り組ませ続けることができると書きました。これは、子どもができないと思っている問題を「意外とできる」と感じさせるから、できるわけです。「できる」と感じられれば、そして、実際にできれば、『達成感→自信→もっと』というような、この好循環にハマッた連中は、「難問大好きちゃん」へと変身するのです。

 ところが、危険な言葉を使うご家庭もあるわけです。「基本をしっかりやらないと」という言葉。もちろん大事です。基本がわかっていなければ、応用なんて出来ません。でも、基本「しか」やっていない子どもが、模試なんて受けたら?日本に帰ったら?どうなんでしょうか。例えば学年相応の学力を持っていない子どもがいます。受験なんて、まったく考えなくて良い。学校なんて、何も考えなくて良い。そうであれば、2学年下のことをコツコツ、自分のペースでやれば良いです。基本問題をしっかりやって、まるばっかりもらって、喜んでいれば良い。親はそれをみて、自信がついたみたいですと言っていればいい。でも、日本へ帰るなら、それではむしろ、子どもを苦しめているのです。追い込んでいることに気がつかないといけません。この話も、これまで書いてきたことですね。  

■大切なこと

 最後に、問題を読むことすら拒否反応を起こす子の対策を紹介しておきます。特に海外に生活する私たちが、重視すべきことです。どの学年の、ごの教科にもいえることです。「問題を解かなくていいから、問題文を暗記しろ」と言うのです。解かなくてよいと安心をさせて、問題を読ませることを優先させる。ハードルを下げる方法の1つです。実は、最近の子どもの多くは「面倒なことはやらない」のです。板書、面倒。計算、面倒。漢字覚えるの、なんか簡単な方法ないの?そんなことだらけです。問題解くのも面倒です。難しい問題に対して「簡単に特報法はないのか?」「素早く解ける方法は無いのか?」と考えることは大事なことですが、そういう次元ではありません。そんな現代っ子には「読め」というわけです。たいていの子どもは読んでいないのです。これまた、これまでお話ししてきたことですが、『字面を追っている』だけのことが多々あります。問題を読めば、「あっ、これできる!」なんてことにもなります。enaで、職員室に質問に来る生徒などには、必ずコレをします。半分くらいの子どもが、これだけで自習室へUターンしていきます。訓練って、大事です。大切なことです。自分の足で歩くこと。何よりも大切なのは、そこなんでしょうね。

 

 

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