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2012年11月号 「これで良いのか?」

■このままで良いのか?!

 受験生。秋ですから、日本だったら、そりゃあ、やっていますよね。でも、海外にいる、特に周りにライバルのいない当地では、なかなか。。。NYやLAなどの塾では、特別補習があったり、授業のない日にも塾にいったりと、まるで日本にいるような生活。月曜日から金曜日は現地校に追われ日本の勉強はやらずに爆睡、結局土日に数時間やってオシマイ。それで合格の可能性が右肩上がりになっているなら小言も言いませんが、第一志望には届かず、イライラしているご家庭も多いのではないでしょうか。

 英語の力「だけ」で合格させてくれる学校を受験する。しかも英語の力だけは自信があり、それを客観的に証明するものも「既に」ある。それなら多少「のーんびり」していても分かります。自分の力にあわせて高望みはせずに、無理をせずに、というなら分かります。「ここなら簡単にいれてくれるだろう」という「身勝手な思いこみ」ではなく、明示された合格基準にあわせて「この成績ならば大丈夫」ということであれば、何もいうことはありません。

 有名難関校を受験したい。でも合格偏差値には20も足りない。でも日本の勉強は大変。塾の宿題は難しいので半分もできない。でも頑張っているから認めて欲しい。合格させて欲しい。せっかくアメリカで生活しているから、英語受験できる学校も受けたい。でも英検やらTOEFLやら、客観的に英語力を証明できるモノなんてもっていない。そんな受験生がいます。これで良いのか、受験生?!このままで良いのか、受験生?!今回は、まだ加速体制に入っていない受験生に「激辛な喝!」をとばします。  

■ガンバル!の罠

 自分なりに頑張っている。悪いことではありません。無理もせず、かといってサボってはいないということですからね。でもね。頑張った「高さ」って、誰が決めるのでしょう?「昨日より頑張った」ということなのかしら?それなら「他人との競争」という受験では、通用しませんよね。自分なりに頑張っていても、周りがアナタのがんばりの3倍頑張っていたら、見劣りしちゃう。つまり不合格です。帰国枠受験であっても、全員合格の保証がされている学校以外、競争はあるわけです。競争であれば、順位があるわけで、そうなると見劣りした受験生は間違いなく不合格なわけです。

 それなのに、「自分なりに頑張っているのだから、評価しろ」と、合格基準点よりも低い成績の生徒が愚痴るわけです。現地校の成績「さえ」良ければ合格するって聞いたから。誰かから、「現地校を頑張れば大丈夫」って聞いたから。そうやって、乗り遅れていきます。

 ガンバル!と本人は思ってはいるのですが、ハッキリ言えば見当違いのところで鼻息を荒くしているわけで、実際は合格から遠のいているということもあるわけです。まさに、罠にはまってしまった、というかんじ。  

■結果主義

 塾屋ですから、受験屋ですから、どうしても点数主義になります。例え宿題を忘れていても、授業態度が悪くても、結果を出し続けているならば文句は言いません。ここ、学校ではないですから。だから模試は必須受験としているわけです。

 ところが中には「模試は受けませーん」とおっしゃるご家庭がある。色々ご事情があるのでしょうし、お考えがあるとは思います。でも、私たちからすると「もったいない」しかいいようがない。特に通信教育や家庭教師、お父さんお母さん先生だけで勉強してきたご家庭に多く見られます。最近はインターネットでも会場模試などが受験できるようになったにもかかわらず、「まだ実力がともなっていないから」「うちは地方に帰国なので首都圏母集団の試験を受験する必要はないから」「悪い成績をとったらかわいそうだから」という理由で敬遠されているケースがあります。こういう「負のスパイラル」に陥ると、いったん陥るとなかなか抜け出せなくなります。

 絶対評価。相対評価。最近は少しトーンダウンしましたが「受験勉強悪者説」のときには「相対評価」はコテンパンにされました。なぜ競争を嫌うのでしょうか?子どもはもともと、競争心を持っています。そこに大人の理論で「いつも負ける子が可愛そう」とか「体力も学力も個性だから」と、まあ「勝手な価値観」を押しつけ、順位まで決まった運動会まで登場する羽目になりました。

 本来、試験は公平であるはずです。実力試験であっても、カリキュラム試験であっても、勉強してきた生徒であっても、しなくても撮れちゃう生徒でも、点数は結果です。それが「まぐれ当たり」ではなく、右肩上がりになっているなら、ちゃんとしている証拠。その「証拠」が明示される。自分の足跡が数字で分かる。それを受けないとは、こんなにもったいない話はありません。

 そして受験屋は、その結果を一番重く受け取ります。結果主義が塾の本道であり、そこに付随する努力はあくまでサイドディッシュとして扱うべきだからです。それが、受験だからです。  

■保護者会でよく言いますが。。。

 「できる子どもは、何処に行っても、何をやらせても、できます」。これ、事実です。でも、そうは沢山いません。非常に限られた子どもだけのはなし。我が子も!とは思わない方が賢明ですよ。「普通の子」であるならば、何をすべきか、させるべきなのか。

 順番で言えば、これまた保護者会でよくお話ししていますが「進路設計」ですよね。こればかりは、まずはお父さんとお母さんで決定していくしかないでしょ。いつ日本に帰るのか。進路先は私学か、公立か。そんなことをいちいち子どもに聞くわけにはいきません。レールを敷くのは大人の役目です。そして「志望校のリストアップ」でしょうね。帰国枠の有無やら、受験資格なども知らずに、闇雲に「現地校ぉーーー」と叫んでいても無駄。受験資格がないなら、日本の受験生と同じことをするしかない。現地校の勉強と両立するしかない。しかも、常に日本の受験生との立ち位置をはかるために、模擬試験での成績把握は必須。そりゃあ、そうでしょう。

 英語受験でさえも、例えば英検2級さえも受からなかった生徒が、英語主体の受験で合格できるはずがない。英語受験には「英語だけは自信がある!」という生徒が集まるわけです。そこに割ってはいる、滞在2年程度の当地の子どもたちであれば、はじき飛ばされて当然。

 我が家の理想を貫き通すことは、誰に非難されるものではありません。ただ、そこで「なんで通じないのさ!」と雄叫びを上げても、通らないこともあるわけです。「海外生活?ナンボのもんじゃい!」という学校は多々あります。学校にとって、受験生とは何でしょう?学校の立場に立って考えてみればよく分かるはず。理科も社会も常識にかけ、入学したら英語以外は補習をしなくてはいけないような「お荷物」を、受け入れようとは思わないでしょ?

 ズケズケといってしまいましたが、これも事実の一つ。保護者会などでお話ししてきたことの一つです。  

■自学・自習

 私たちが提案していることの一つに「小5で自学自習ができるようになれば完璧!」ということがあります。実際には、完成はしないでしょう。ただ、それに近い状態の子どもにし向けていくことは可能だと思うし、それは中学受験だけではなく、中学校での勉強、高校での勉強にとても重要なことの一つだと考えています。  私たちの宿題の出し方も、この考え方に基づいています。小3から小5にかけての宿題が一番ハードでしょう。特に小5は今も昔も「要」の学年。それまでの「具体的な内容」から「抽象的な内容」へ移行していく時期。親のつきあい方としては、「手取り足取りやっていた時期」から、「横についてる時期」、「距離を置いて監視する時期」から、「アドバイスする時期」へと進化していくはずです。こうした段階を経て、子どもたちの自学・自習が完成します。

 つまり「○○年生になったら」という切り方ではなくて、親がフォローしてきた効率の良い、成果の出る勉強方法を自分ひとりでできるように訓練した上で手放すこと、ということです。親との勉強を「卒業」するイメージです。高校生になれば勉強は自分で、しかし、高校生でも、親が何かしらのフォローをしながら見守っているご家庭は海外では非常に多いです。現地校での勉強が、日本の勉強と全てつながっているわけではないですからね。「日本語では、どういうの?」「日本のやり方って、どうするの?」という質問は、考えられることです。このとき、例えば中途半端な状態で子どもが離れて行った場合はどうなるのか?想像してみてください。「中学生になったから」「高校生になったから」と急に手放すご家庭がある。これまで、手をかけていなかったのであれば、それは当然の成り行きでしょうが、例えば受験まで手をかけてきて、伴走してきたご家庭が急にぱったり勉強を見なくなることがあります。「もう中学生なんだから自分でやってね」と。それで子どもが一人で授業を聞いて乗り切れれば良いのですが、多くの場合、そうではないから面倒なことになる。  

■進度

 中高一貫校はご存じの通り進度が早い。進度が早いから高2までにはすべてを習い終えて、大学受験の準備に1年間専念できる。一貫校でなくても、進学を全面に出す小中学校などでは、ほぼ同じ進度。中2までに中3までの内容を終わらせてしまい、中3の1年間で演習問題ばかりやるというパターン。これって、そう、進学塾であれば普通のこと。enaだって、ほぼ同じカリキュラムです。

 これを見て、「何て素晴らしいんだろう!」と思われるご家庭もおありでしょう?お子さまの教育に熱心なご家庭であれば、特に思われることでしょう。しかし、進度が早いということは「わからなくなる進度」もかなり早くなるということを意味します。「だんだんわからなくなった」のであれば、「なんとなく頑張る」という子どももいて、そういう子どもであれば、居場所もあります。でも、「一気にわからなくなった」という子どもは、やる気を急速に萎えさせ、居場所がなくなったと感じてしまいます。孤立です。

 受験で終わりではない。先のことを考えて、準備は早めにしておくべき。そうお話ししているのは、当地の多くの方が希望される進路は、決して「のほほーん」とした学校では無いはずだ、というところから出発しています。

 「中学生だから」と、突然一人で立ち向かわせる。海で泳ぐことを考えてみてください。初めて泳がせるときのことを考えてみてください。それまではプールで、手を引いていた、足の届くところで泳いでいたわけです。それが、さあ、今日から海で泳ぐのよ、と。2、3回ほど波に飲まれて塩水飲んだら、もういけません。もうダメだとかもうイヤだとかもうどうでもいいやとか、と子どもは思うものです。放置しても、いまの子どもは一人で歯を食いしばって踏ん張るわけがありません。そういう子どもであれば、塾も不要だし、親もラクチン。自学自習はとっくの昔に完成しているわけです。  

■子の心、親知らず

 塩水を飲み込んだとき、「こうしてみたら?」とか「がんばってやっていこうよ」とかさっと手助けをしてやる。または溺れかけの自分を誰かが見てくれている、そういうことが大切になってきます。塩水をたっぷり飲んで手遅れの状態のところに行って「どうしたの? 頑張ってたじゃない!?」なんて行っても、遅いのです。「よく見てくれる人」が非常に少ないということを、親は意識すべきです。それが海外生活者の、宿命だから。

 海外で生活する、少し退行現象が見られる子どもたちであれば、一人で勉強するということと、親子で取り組んで勉強することとを比較すれば、子どもだけで勉強することの成果は期待できないでしょう。塾に行って「とてつもなく出来る友達」に遭遇することも少ない。学校で自分より出来ない同級生を見る機会もない。アメリカという異次元空間で、しかもダブルカルチャーという負荷に耐えて生きているのです。

 中高一貫教育は6年。長い。6年間受験もなく、じっくり好きなことに取り組んで・・・とよく聞きます。が、6年間わからない授業を7時間聞かされて延々6年間!公立では休みである土曜日であっても、学校に通うこと延々6年間。そいう子どもだってたくさんいるのです。公立校であっても同じです。公立中学から公立高校に進む子供の場合は、これが高1で起こる。「もう高校生なんだから・・・」ですっかり親から手放される。しかし公立の進学高校も中学校に比べればはるかに質も量も上回る。公立中学から公立進学校に進学する場合は、高1がとても大事になる。

 日本の勉強は積み重ね。1つが抜けてしまうと上に積み上げるのはとても不安定になります。義務教育の9年間で土台が作れていれば、高校生の高度な授業も安心できるでしょう。実際、中3で受験準備をした生徒と、海外にいるからと何もしてこなかった生徒が席を並べる高1の授業を見てみると、それはそれは、差に違いが生じます。  

■反省し、改める心を持つべし

 海外赴任前後。日本の勉強はどうだったのか?伴走をしてやったのか?中学受験準備なり、高校受験準備なりを意識したのか。小5をすぎている今であっても、「自学できていない」としても、今から親子ともに学習してやれば、これから先完成することは可能です。高校生のお子さんであっても、ですよ!この場合は、受験をしたのと同様、「必死」でやれば、可能です。今、のほほーんとしているのであれば、海外に来てからは間違いなく受験の時ほどはしなかった、はずです。どうしても、「現地校の勉強が。。。」と親子共々、日本の勉強を後回しにしたからです。通信教育はとっていたけど、結局本棚の肥やしになっている。これって、ずいぶん「フリーハンド」な感じがします。「日本の勉強、辞めて良かったの?」と。辞めさせなきゃよかったのでは?「いや、どうしてもやめると子どもが言って・・・・」であれば、もう主導権は子どものほうに行ってしまっているということ。海外にいて、右も左も分からない子どもに主導権を握らせてどうするんですか?お稽古ごとが優先?良いですよ。では、進学と経験を天秤にかけて、経験をとるのですね?それなら良いんです。え?進学も?あわよくば、御三家?上段じゃないですよ。まじめに頑張っている受験生に、失礼ってもんでしょ?片手間に出来る器をもっている、そういうお子さんですか?それなら、結果を出してますから、安心です。何をやらせても、何処に行っても、出来る子は出来ます!そうじゃない?偏差値30台なのに、御三家?早慶は最低限?ちっとも反省していないですね。

 子育てに正解は無いと言います。私は受験屋。決して教育面からお話ししているわけではありません。これまでの経験から、どんな生徒が、どんな学校に合格していったのかを元に、お話ししているだけです。模試の成績を見てください。それが全てだとしましょう。ハードルの高さは見えている。そのハードルは、帰国子女特別優遇枠などというものは使えない。だったらやるしかないのに、やれお稽古ごとだ、現地校だ、旅行だ、ということでマトモに勉強していない。お父さん・お母さんが一生懸命で、本人はちっとも覚えていない。本来、どの生徒でも到達できる「理解する」というレベルにさえ達していない。

 今起きている現象というのは、今日のことが原因ではなく、以前のことを原因として今の現象があるわけです。例えば渡米後、既に1年以上が過ぎていて、日本の学力は見る見る落ちていて・・・ということであれば、浮上するのは頑張らないとできません。ちゃっちゃっとやって、再浮上できるなら、もともと「持っているもの」があったということ。それならば、大丈夫。でも、無料学力診断などを利用して、現在の学力を調べたときに、ありゃりゃ、という成績であるならば、振り返ってみてください。数ヶ月で取り戻せる可能性はかなり難しい。塾は万能薬でもないし、即効薬でもありません。

 うまくいかない時に助けを求めてくるのは、まずは親に対してのはずです。それが今なのか、それとも受験直前なのか、分かりません。しかし、そのときに問題点を指摘して改善できるように、「今」は見守る。じっと観察する。もう知らない!と親が投げ出さずに、渡米直前から現在までを丹念に検証し、見守り続ける。じっと見守るというのは、親にしかできないことです。我が家の普通。我が家の優先順位。そうしたことを、親子でしっかり考え、行動に移し、親子で解決していく。噂を鵜呑みにせず、良いように解釈せず、先回お話しした「子どもをよく見る」ことが何より重要。

 そのときに少しだけお手伝いさせていただけるのが、塾です。ご家庭あっての塾ということです。でしゃばるような塾は、塾ではないのです。塾はあくまでもサポーター。黒子に徹することが出来ない塾は、信用に値しません。私たちenaは、ご家庭に利用される進学塾であると自覚しています。

 

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