はじめに
87年にニューヨーク校を開校して以来、私たちは帰国子女枠入試を中心に子供達と接してきました。ここ、ワシントンDC校は95年の4月に開校しました。全日制日本人学校が無いこの地域の子供達は現地校に通うしかチョイスはなく、しかも他の地域に比べて比較的短い赴任期間で帰国する家庭が多くみられます。このため、ニューヨーク校開校直後から「是非DCにも校舎を」という声が後を絶ちませんでした。91年に現地市場調査を始め、具体的に開校準備に取りかかったのが94年。開校してから今に至るまで、本当にあっという間の出来事でした。
この間に日本の経済事情・入試制度の改革などが刻々と変化していきました。現在の日本国内の受験事情を見てみると「何が何でも私立に」というブームは既に過去のものとなりました。「どうしても付属校に」という保護者の声も年々小さくなりました。内申書重視で公立高校普通科にさえ推薦入試が導入されていきました。入試レベルは年々変化し、数年前の受験データや受験制度の知識が全く使えないという学校も多く見られます。
帰国子女入試についても変化が見られます。大学受験での「とにかく英語ができれば合格できる」という神話は既に崩壊し、日本語の、特に読解・表現の力が必要といわれています。高校受験は以前から引き続き、さほど帰国生としてメリットが感じられません。現地校の成績を合否判断材料の中心にする高校は依然全体の二割にも満たないといわれます。八割を越す高校入試では一般の受験生と同じ入試問題を解かなければならないのです。中学入試でさえも学力を重視した入試が特に男子を中心に増えています。これらの実情を踏まて準備していかなければ、せっかくの海外生活で得られた体験・経験などが受験に活かせないというものになりがちです。
また、編入についても様々な問題があります。もともと欠員が生じた場合にのみ募集するものですから、去年も募集していたから今年も募集するはずだということが言い切れないのです。帰国する生徒の数や彼らの希望校にも大きく関係し、前年は2倍程度の学校が今年は10倍以上ということもあります。選抜方法も定期試験を使う学校から実力試験を課す学校、面接だけの学校と様々です。
この地域は海外でも稀な、情報を入手しやすい地域です。更にインターネットの発達により、ご家庭でも受験情報が簡単に入手できる時代となりました。それがかえって「情報過多」となり、振り回されることもあるようです。実際「情報は手元にあるが、どうしたらいいのか分からない」というケースも多く聞かれます。私たちも塾の使命として「正確な情報をいかに迅速にお伝えし、詳細に説明し、対処法をお話しする」ということを常に考えています。日本国内国際部との連絡は毎日行い、学校側が発表した帰国生に関する情報はどんなに些細なものでも各海外校、ご家庭に伝達されるようになっています。
私たちは日本の進学塾です。塾としての使命である「成績向上」と「進学情報の提供」を第一にと考えています。加えて地域に根付いた「学習環境の提供」です。例えば現地校の子供達にも対応できるカリキュラムの設定や単科履修制度、学年を越えた履修といった「生徒一人ひとりの目の高さ」に立った指導をしています。また地域に基づいた保護者会や面談です。これらは塾として当たり前のことではありますが、当たり前のことを開校当初から基本事項として指導の柱としています。
もし、日本への進学を考えていらっしゃるならば、是非我が校の門をたたいてみてください。一人での勉強では分からなかった日本の学校へのハードルの高さを示唆しましょう。そのハードルの高さを超えられるだけの跳躍力を伸ばしましょう。それが私たちの役割です。
enaワシントンDC 校長 水井 拓
<もくじにもどる>