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2002年4月号 「帰国子女の少ない地域へお帰りになる方へ」
現在中学生、新中1生、帰国時に中学生になる小学生の方へ

 各都道府県の帰国生に対する対応は、ご存じかとは思いますが、もう一度まとめてみました。まずは、下の資料をご覧下さい。これは各都道府県にある中学校と高校で帰国子女に対する何らかの配慮をしている学校数です。本当はこの学校の中でも「帰国子女のために作られた学校」「帰国子女のために特別な用意をしている学校」「入試などは一般と同じではあるが帰国子女に対しては何らかの考慮をしている学校」などに分かれます。

北海道:私立男子中学1校、私立共学中学1校、私立共学高校1校
青森県:なし
岩手県:なし
宮城県:私立女子中学1校、私立男子高校1校、私立女子高校2校、私立共学高校2校
秋田県:なし
山形県:私立共学中学1校
福島県:県立共学高校2校、県立女子高校1校、私立共学高校1校
茨城県:私立女子中学1校、私立共学中学2校、市立共学中学3校、私立共学中学1校、
     私立共学高校5校、私立女子高校1校、県立共学高校15校、県立女子高校1校
栃木県:私立女子中学1校、私立男子中学1校、私立男子高校1校、私立女子高校1校
群馬県:私立共学中学1校、市立共学高校1校、私立共学高校1校
埼玉県:国立共学中学1校、私立共学中学1校、私立共学中学1校、公立共学高校13校、
     公立女子高校2校、私立共学高校10校、私立男子高校2校、私立女子高校1校
千葉県:国立共学中学1校、私立共学中学6校、私立女子中学1校、公立共学中学1校、
     公立共学高校20校、私立共学高校12校、私立女子高校3校
東京都:私立男子中学14校、私立女子中学34校、私立共学中学9校、国立共学中学4校、
     公立共学中学6校、私立男子高校14校、私立女子高校30校、私立共学高校19校、
     国立共学高校4校、国立男子高校1校、都立共学高校4校
神奈川:私立男子中学3校、私立女子中学12校、私立共学中学8校、国立共学中学2校、
     公立共学中学7校、私立男子高校3校、私立女子高校13校、私立共学高校8校、
     公立共学高校7校
新潟県:私立共学高校1校
富山県:県立共学高校1校
石川県:公立共学高校5校
福井県:なし
山梨県:私立女子中学1校、私立女子高校1校、私立共学高校1校
長野県:なし
岐阜県:私立共学中学1校、私立共学高校1校、公立女子高校2校、県立共学高校13校
静岡県:私立男子中学1校、私立女子中学1校、私立共学中学2校、私立女子高校3校、
     私立男子高校1校、私立共学高校3校、公立女子高校2校、公立共学高校13校
愛知県:私立女子中学2校、私立共学中学1校、国立共学中学1校、公立共学中学1校、
     私立女子高校3校、私立共学高校5校、国立共学高校2校、公立共学高校3校
三重県:私立女子中学1校、私立共学中学1校、私立女子高校1校、私立共学高校2校、
     公立共学高校5校
滋賀県:私立共学中学1校、私立共学高校1校
京都府:私立共学中学2校、国立共学中学1校、私立共学高校3校、公立共学高校2校
大阪府:私立男子中学1校、私立女子中学5校、私立共学中学3校、国立共学中学1校、
     公立共学中学5校、私立男子高校3校、私立女子高校9校、私立共学高校6校、
     国立共学高校1校、公立共学高校15校
兵庫県:私立女子中学8校、私立男子中学3校、私立共学中学3校、国立共学中学1校、
     公立共学中学1校、私立女子高校11校、私立男子高校3校、私立共学高校4校、
     公立共学22校
奈良県:私立共学高校2校、公立共学高校3校
和歌山:私立共学高校1校
鳥取県:私立共学中学1校
島根県:なし
岡山県:私立女子中学1校、私立女子高校1校、私立共学高校1校、公立共学高校8校
広島県:私立女子中学2校、私立男子中学1校、私立共学中学2校、私立男子高校2校、
     私立女子高校1校、私立共学高校3校、国立共学高校1校、公立共学高校2校
山口県:なし
徳島県:なし
香川県:なし
愛媛県:なし
高知県:なし
福岡県:私立女子高校1校、私立共学高校2校、県立共学高校16校
佐賀県:私立男子中学1校、私立男子高校1校
長崎県:なし
熊本県:なし
大分県:なし
宮崎県:なし
鹿児島:私立共学高校1校
沖縄県:なし

 まず東京の受け入れ校数の多さに目を奪われます。東京・神奈川・埼玉・千葉では、特に欧米からの帰国生が多いのは周知の事実です。帰国子女受け入れに歴史のある学校も多く、そうした学校を希望する場合は受験に必要な書類上の問題が発生した場合でも柔軟に対応してくれる学校が多く見られます。受験者側にとっても安心して受験準備が出来るということです。逆にこれだけある帰国子女受け入れ校でも、門戸は開いているものの実際には受け入れた経験が少なく、よって帰国生のフォローの仕方には慣れていないという学校も存在します。

 関西でも大阪・兵庫などは公立を含めてかなりの数の受け入れ校が存在します。関西圏に帰国する海外生の多くはアジア圏からの帰国生と考えられています。アジア圏の海外生の多くは全日制日本人学校に在籍しています。よって受験に際しての書類上の問題は起こりにくいのです。受験資格などに対しても、日本のスケジュールがそのまま使われているわけですから問題は起こりません。これはアメリカ国内でも全日制日本人学校に在籍している場合は書類上の問題や受験資格乗の問題が起こりにくいことと同じです。

 首都圏や関西の一部の地域では、帰国子女受け入れ校の中で人気の偏りが生じています。「海外からの帰国生が沢山いるから」「帰国生の扱い方に慣れているので安心して受験できる学校だから」ということも人気の偏りを産んでしまった原因の一つと考えることが可能です。

 さて、それ以外の地域ではどうでしょうか?帰国子女に対する理解が広まり、受け入れ校も数を増やしてきたといわれますが、現実には首都圏や関西の一部で顕著あり、その他の地域はまだまだということです。

 お帰りになる地域が、首都圏や関西の一部、以外の地域だとしたら。。。

 帰国子女に配慮のある学校はほんの数校あるけれど、という地域にお帰りになる場合。ここにまとめた学校は「都道府県内」という視点から調べました。ということは、お帰りになる市町村区までは考えていません。「確かに県内にはあるけれども、遠くて通えない」ということもあるわけです。多少の不便は覚悟して越境進学ということもありますが、それにも限界があります。帰国子女に配慮した学校への進学を諦めたとすると、例えば「日本の勉強が遅れていることに対してのフォロー」「現地の生活にあまりにも馴染みすぎて、それゆえ日本の学校生活には適応しにくいという生徒へのケアー」などを学校に期待することはできません。子どもたちの苦悩の日々がまた再び始まります。

 「いや、別に帰国子女に理解ある学校ではなくてもいい。苦労してもいい。」ということであれば、今度は進学面から考えてみて下さい。地方はまだまだ公立高校が大学進学率でのTOP位置にいます。公立TOP校に進学できればある程度大学進学は考えられ、二番手以下の学校では現役合格は不安というのが現実です。中学生が地元の公立中学に帰るとなると高校入試を意識しなければなりません。例えば北海道の教育委員会ホームページには「海外から道立高校を受験する場合」というものがあります。しかし、その内容は一般的なもので、細かい内容は「個々のケースに応じて」と濁されています。他の地域でも、ほぼ似たようなことだと思います。実際、海外から公立高校を受ける場合の諸注意をホームページで公開している都道府県は、その内容が一般論だけであったとしてもまだ親切な方です。海外から帰国する生徒数が少ないため、特殊ケースとして個々に応じるのが精一杯というのが地方の教育委員会の一般的な対応です。

 個々に応じるといっても、結局「現地校の成績が良かったら優先します」とか「帰国生には別の試験で合否判定をします」ということは無いわけです。そうなると「内申点による推薦入試」が使えない受験生は「当日点の一発勝負」に賭けるしかないのです。しかも5教科入試がほとんどです。

 海外で5教科を準備することは大変なことです。実際、私の教え子でも首都圏に帰る生徒が大半で、彼らの多くは私立3教科受験生でした。5教科入試を実施する国立高校や一部の私立高校を受験した生徒は、それこそ必死でやり抜きました。彼らに共通することは「現地校の勉強には全く不安がない」「現地校のクラスは上位クラスを履修していた」「日本の主要3教科は上位の成績であった」「覚えることに抵抗感が無く、漢字なども年齢相当以上の知識を有していた」などです。もともと優秀な生徒であったからこそ、5教科の準備まで手が回ったというもので、まだ現地校での生活で苦労しているというような状況では不可能であっただろうと思います。

 こうなると、地方に帰る子どもたちこそまさに「日本での普通の進学準備をすべき」ということになりますし、しかも進学を考えて公立TOP校を考えるのであれば主要5教科を「TOP校を目指す生徒と同じくらいに」準備しておくしかないということになります。「まだ小学生だし」ということであっても、お帰りになってから高校受験までの残された時間で受験に必要な学力が身に付くのかを逆算しておかないと取り返しがつかないことになります。海外にいるということで、確実に「日本の学力」は低下しています。公立校レベルを一概には言えませんが、入試問題を見てみるとかなり難易度の高い問題を出題する場合があります。(特に理科や社会など)このあたりは旺文社などから出版されている通称「電話帳」といわれる全国版の過去問集で調べることが出来ます。

 「日本のどこに帰るか分からないし、いつ帰るのかも分からない。場合によっては永住ということもあり得るし。」

 本来こうしたご家庭こそお考えいただきたいのです。「分からないから何もしない」という発想で、突然の帰国辞令に翻弄させられるのは子どもたちです。進学を意識して積み上げておけば何とかなったものを、「とりあえず」の対応だけではどうにもならないことがあります。基本問題だけでは進学に必要な学力は養われません。「首都圏に帰るのであれば進学準備も意識しただろうけど、地方に帰るから意識しなかった」。それは認識不足と言わざるを得ません。首都圏・地方は関係なく、本来、日本の学校に進学するにふさわしい者として、身に付けておくべき学力は存在しているはずです。

 私たちが何度もお伝えしようとしているのは「なぜ、進学を意識した準備をなさらないのか」ということです。今すぐお帰りになる地域の教育事情を調べて下さい。大学進学までの道のりは、どうなっているのかを調べて下さい。同時に、お子様の現段階での「学年相当の学力」をはかって下さい。今では海外にいても駿台模擬試験などの「全国模試」が受けられます。そうしたものを利用して相対的学力を把握して下さい。

 「取り越し苦労だった。塾に踊らされるところだった。」と笑い話になることを願っています。

 

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