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2009年4月号 「春、それぞれの道」

 

 春です。校舎のそばに桜の名所があります。満開です。桜はさておき。。。忙しい季節です。日本のニュースで、大手企業の入社式の模様をやっていました。4月1日付けで海外赴任となったお父さんも多い事と思います。気持ち新たに、現地校に飛び込む子供達。緊張しているでしょうね。右も左も分からない状態から、みんな始めていきました。がんばるんだぞ!

 ちょっと前に、長い海外赴任を終えて本帰国されたご家庭もありました。気持ち新たに、日本の学校に帰っていく生徒達。数年後、どんな風に成長しているか、あってみたいな。

 私たちも変わり目。今年の受験生達と向かい合う季節です。

 2月に新学期を始めてから、1ヶ月が経ちました。この間、ご家庭ではどんな変化がありましたか?enaの勉強が難しくなった?日本の勉強のやり方が変わった?塾に通い始めたら、何かが変わって当然。まだ塾に通っていないアナタは、変わらなくて当然。(だってアメリカの年間予定からいうと真ん中だものね)

 今月は、反省と展望の視点から、日本の勉強・進学に対して、少し大きなテーマで話をしてみたいと思います。反論もあるでしょう。それはいっこうに構いません。価値観に関するところもありますからね。ご家庭によって違うものであるはずだから、いつも以上に「これは、違うな」と思われることもあるかと思います。ただただ、海外生活で見落としがちな、「現在位置」を確認する「きっかけ」になってくれたら、とだけ思っています。いつものこと、ではありますが。。。

 enaは進学塾です。進学塾の「オシゴト」は、子供達の成績向上とご家庭への情報提供。でも、成績向上に関しては、塾の力だけでは、どうにもなりません。日本と違って「呼び出し!」とか「居残り!」が簡単に出来ないということも理由の一つ。日本国内校舎以上に、「ご家庭の協力」無くして子供達の「理想の進学の実現」はあり得ません。お父さん先生・お母さん先生のサポートと子供達と塾とが、三角形の関係を作って初めて、成績向上があるのだと思っています。3つの頂点のうち、どれか1つでもバランスを欠いてしまったら、向上には至りません。このあたり、現地校事情を知らない「熱意だけの指導者」だと、空回りしちゃうんですね。走り過ぎちゃったり、勘違いしたり。そのくせ「日本から来たんじゃあ!」ということを強調しすぎて浮いちゃったりする。

 さてさて。塾に通うということは、即ち進学を意識されているはずで。要するに。。。ゴールは「志望校合格」「成績アップ」ということが大半のご家庭に共通することです。とするならば、スタート地点は、どうなんでしょう?これは各家庭によって異なると思います。決してみんなが同じではありません。あるご家庭は「お受験」以前から準備され、その延長上に海外生活があるということもあります。中学受験を念頭に置いて、その上で海外生活ってご家庭も多いですね。高校受験は私立難関校にって決めているご家庭もある。場合によっては、塾に通い始めることが、スタートというご家庭もあるでしょうね。そうしたところから、「現在位置」を考えてみてください。enaワシントンDCでは、小3以上の生徒には入塾試験を実施しています。これは、現在の客観的成績位置を把握して頂き、そこから考えていって欲しいからです。何をどこまでしなければならないかを、明確にしているということです。

 「がんばりますぅ」と口で言うのは簡単なこと。実際は「そろそろ帰国だしぃ。塾にでも行っておいたほうが、良いかなぁって思っただけぇ」ってかんじで、塾通い。成績に対しての危機感も無し、焦りも無し。当然ご家庭も危機感は皆無。「補習校卒業すれば受験資格ができるんでしょ!?」とか、いまだにいっていたりして。。。補助教育機関も然り。「必ず成績向上させますっ!」なんて口八丁手八丁。そりゃあ、企業でしょうからね。当然、生徒確保には何でもアリなのかもしれません。世界不況で海外部門は撤退なんて企業はたくさんあるわけで、そうなると、市場が閉塞しちゃっているわけで。生徒数=売り上げである補助教育機関としては、企業の生き残りをかけて必死なわけですよ。(親方日の丸で、職員の一人一人が危機感を持っていない補助教育機関はダメダメなんです)

 話を戻して。。。「現在位置」を示す指標はいろいろとあります。enaの入塾テストも現在位置を表す基準の一つになったわけですが、現在の勉強のやり方だって、現在位置を示すことになります。ここでは少し長いスパンで「子供」と「親」の現状と「現在位置」を考えます。「子供」の現状のとらえ方として、例えば次の2つに大別してみます。  

◆自分から勉強しない  

◆自分から勉強する  

一方の「親」の現状として、次の2つに大別してみます。  

◆子供の勉強に口出ししない  

◆子供の勉強に口出しする

 これらはあくまでも例えばという例であって、これ以外のとらえ方もあるし、いろいろなとらえ方をしたら良いのですが、ここでは極論で考えてみます。

 さて、上記の親子のとらえ方をすると、「現在位置」は以下の4つの組み合わせが出来ます。

(1)〔子〕自分から勉強しない=〔親〕子供の勉強に口出ししない

(2)〔子〕自分から勉強しない=〔親〕子供の勉強に口出しする

(3)〔子〕自分から勉強する=〔親〕子供の勉強に口出ししない

(4)〔子〕自分から勉強する=〔親〕子供の勉強に口出しする

 いかがでしょうか?現在は何番ですか?また、スタートしてからの道のりを振り返ってみて、どんなふうに変わってきたでしょうか?そういう視点で「何番から何番になった」とお考え下さい。さて、ここで質問です!

 (1)〜(4)の中で、一番「タチが悪い」のはどれだと思いますか?

 圧倒的に(1)を選ぶ方が多いでしょう。子供も自分から勉強しないし、親も子供の勉強に対しては無関心。確かに、成績アップからほど遠いのは事実です。でも、だからといってタチが悪いとは、思いません。理由は簡単。概して幸せそうに見えるから。きっと、親にとっても勉強より優先するものがあり、子供もまたそうなのでしょう。そういう方は、決して「成績アップ」というゴールを目指しているわけではないでしょう。となると、もともとが違うゴールに向って走っているわけですからタチが悪いとは言えないわけです。このケースが「タチが悪い」様相に変わるのは、帰国前に突然手のひらを返してしまうときです。今まで幸せだったのが、突然悲劇のヒーロー/ヒロインに変わってしまうケース。慌てて、なにか取り繕うようにして、ドタバタ。今までは日本の勉強そっちのけでお稽古ごとやスポーツに打ち込んでいたのに、突然ねじりはちまきを締めて「よーし!がんばるぞぉ!」とお母さんだけが張り切っているようなご家庭。子供達は振り回されて、まさに、犠牲者の誕生。ちなみにenaワシントンDCでは、こうした「駆け込み入塾」の場合は、お断りしています。だって、これじゃあ子供が可愛そうですよ。今までとは180°反対のことを押しつけられるわけでしょ。価値観が逆転しちゃうわけでしょ。それじゃあ、あんまりだ。だったら、日本に帰ってから、環境と共に頑張ったら良いではないですか。幸せな状態のまま、人生において良い体験をしたなあと思って帰国すれば良いだけのこと。(まあ、進路については、見ない振りをしなきゃいけないところが多々あったりしますけど)

 では、私たちが一番心配するのは、どのケースのことでしょうか???

 実は。。。(3)なのです。

 子供は勉強へのやる気があり、親は口出ししない。理想だと思う方も多くいるはずです。では、なぜ私たちが心配するのか?それは、一生懸命がんばっても、成績が上がらないパターンがこの(3)だからです。ゴールはちゃあんと「成績アップ」を目指している。そして、実際に成績アップができている。それなら問題はありません。そうなっていれば、今、子供もさらにノリノリになっているハズです。補習校であろうと、通信教育であろうと、家庭教師であろうと、もちろんenaに通っていようと、自学自習が完成していて、現地校の勉強だろうが日本の受験勉強だろうが、「イケイケ!」の状態になっているならば、何にも問題ありません。実際、そういう生徒はenaワシントンDCにも過去、居ました。そいつは東大に現役で行きましたけど。でも、大半の(3)にあてはまるご家庭は、成績が伸びていない、自学自習からは程遠い生徒ばかりです。

 (3)のパターンで成績アップが達成されていないならば、または、これまで成果を得られなかったということは、明らかに、「勉強のやり方」に問題があるわけです。でも、その間違いを指摘してやるべき役割の親は、子供の勉強に口出ししない。指南役が居ない。コーチが居ない。伴走者が居ない。成績が伸びるやり方なのかも分からず、がむしゃらにやっているだけ。乱読ってありますね。悪くはないです。ハンパじゃない読み方をすれば、プラスのことも多々あります。でも、精読が出来ないと、受験問題が解けません、課題小論文は書けないし、作文だって小学校低学年レベルで終わってしまう。要するに、この状態だと子供の努力は報われないのです。そして、いずれは諦めてしまう。頑張っても報われない!努力に比例して成績が変わるはずのものが、いつまでも変わらない。そやあ、腐っちゃうでしょ。モチベーションなんてガタガタです。だから「そのやり方、間違っているよ」と軌道修正してあげないといけないわけです。赤ペンで答えを書いているだけ。それで成績は伸びてるんですか?伸びてないなら、やり方、変えましょうよ。心配するのはそこなんです。成績が変化していないのに、やり方を変えずにいること。ノートの使い方然り。予習・復習の捉え方然り。以前の読み物でもお話ししていることです。ビジネスマンのお父様には十分納得して頂けるお話。効果がないなら、即、方法を変える。当たり前のことなのに、(3)のパターンにハマっている生徒は、自分のやり方にこだわり、模索もせず、やっているつもりで終わっている。私たちが口を出すと言っても週に数時間のつきあい。限界は低いです。だから(3)のご家庭は、(4)へ変更すべきなのです。

 簡単に言えば、(3)の状態になるには、ステップがあるわけです。  

(2)〔子〕自分から勉強しない=〔親〕子供の勉強に口出しする   

↓  

(4)〔子〕自分から勉強する=〔親〕子供の勉強に口出しする   

↓  

(3)〔子〕自分から勉強する=〔親〕子供の勉強に口出ししない

 こうやって書けばカンタンですが、ここに至るまでには長い長い道のり、時間があります。本来、(2)から(3)への道筋はちゃんと見えていないといけないし、知っていないといけない。そうでなければ、成績向上など雲の上です。次回のテストが上がればいい!ただそれだけならば、単発的な話をするなら、手段なんてどうでもいいし、深く考える必要はなかった。でも、子供のこれからの人生に思いを巡らせ、1つ1つステップアップしていく、目標に近づいていく自分に自信を持って歩み続けていく・・・・そんなイメージを持っているならば、「上向きグラフで成績を上げ続けていく」ことを目標にしているはずなのです。それには試行錯誤が絶対だし、位置確認のための模擬試験が必要だし、モチベーション維持の為にも、具体的な対策のためにも「はじめに志望校ありき」であったはずなのです。それらを始めるためには必要な道筋があり、その王道は(2)→(4)→(3)だと私たちは思っているわけです。

 「自分から勉強しない」から「自分から勉強する」にする。そうやって、(2)→(4)。「子供の勉強に口出しする」から「子供の勉強に口出ししない」にする。そうやって、(4)→(3)。このステップで(3)に辿り着いてこそ、「成績アップ」しているはずなのです。(2)から、何もない状態で(3)にいけば、それは子供が行き先を見失って当然でしょう。

 それぞれのステップで「子供をその気にさせる」テクニックが必要となります。その最も合理的な方法が「塾を利用する」ということです。決して「塾に通わせる」ではなく、ご家庭の方法に塾を「利用」していくということなのです。まず親が日本への進学設計を真剣に考える。それを子供に伝えていく。子供をその気にさせる。成果を出すように、仕向ける。決して逃げ腰にさせない。かといって潰さない。気を良くしてもっと頑張るような道を用意する。安易な道もダメだし、「とりあえず」も現実味にかける。あくまでも日本への進学を考えた、現実的な「作業」。つまりは「ライバルは、日本にいる友達と自分自身!」ということです。でも、不思議なことに今まで私たちが見てきた「成績がイイ子の親」には、あえて(4)で留まる方が多い・・・ということも付け加えておきます。いつも言うことですが、スポーツでも芸術でも勉強でも、子供でも大人でも、誰かに追い込んでもらわないと、なかなか自分自身で追い込めないからです。自分自身で追い込んでいるつもりでも、師匠や先生からみれば、もっといけるはず!に見える。もう限界です!と思っても、そこに「怖い」師匠や先生や親がいることで、もう一歩追い込む。この「もう一歩」が人との差を生むんですね。結果の差を生みます。それが上位難関校に受かる、唯一の「コツ」なのかもしれません。大切な「追い込む作業」をきっちりとする・させるために、(4)にとどまる「成績が良い子の親」も多いのです。そして、こうした「親技」が使えるお父さん・お母さんは塾を使うのが上手い!塾をも乗せるのが上手い!子供に聞かせるべきではない話とは何か、聞かせるべき話とは何かを、きちんと区別されている。解答解説を子供に渡して「自学自習ができる子ですのホホホ」なーんてことは、絶対にない。みんながハッピーになる持っていき方をご存じなんですね。

 成績の推移は常に気にしているご家庭であっても、2年前から「親子の勉強形態」や親の役割がどんなふうに「変化」してきたかについては無頓着な方も多い。でも、成績が変化しているのであれば、本来勉強方法だって進化していなければおかしいですよね。スタート位置から現在位置を確認して、変わっていないところと変わったところを意識してみること。そこから未来の方向を軌道修正していくこと。これが海外生の基本形なのではないでしょうか?決して、その場しのぎ・刹那主義・「なんとか、なんだんべー」「適当にやってしまえば良いのさぁ♪」では成績向上には繋がらない・理想の進路を歩くには程遠いという証明をしてみました。いかがですか??? 

 

 

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