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2001年12月号 「犠牲になった子どもたち」
■プロローグ
この地域の子どもたち、保護者の方たちに見られる特徴を、暴言にも価する表現はありますが、敢えて、正直に、書き出してみました。これを手に取る方々のご家庭に当てはまることが、一つもないということを願って。。。
■その1・とっても危険な絶対評価な子どもたち。
最も目立つのが現状を全く理解していないご家庭が多いということです。
海外に来れば、日本の勉強量は減ります。勉強量が減れば大抵は成績が下がります。それにも関わらず子どもたちは、それを『その教科は嫌い』であるとか『その教科は少しだけ苦手』というような捉え方をしていると感じます。この環境下、補習校などで隣にいる友達よりも目劣りするのであれば、危機的状況に陥っているのは明かです。それを絶対評価的な『今回は頑張ったぞ』というような考え方だけでは、受験や進学で必要とされるハードルの高さは見えてくるようにはなりません。
第一、絶対評価は子どもたちにとって『誉め言葉』に過ぎないはずです。勉強に対しての『起爆剤』に最適なはずで、それ以下でもそれ以上でもないはずです。それを『たまに行く補習校でもいい成績だし、うちの子は出来るのでは』と保護者の方さえもが思われているのであれば、帰国後は子どもたちに大変な苦労を背負わせることになるのです。事実、補習校での成績は『A+』ばかりなのにenaの入塾テストで偏差値50以上だった子を私たちはほとんど見たことがありません。enaでの入塾テストは日本国内の模擬試験をそのまま導入していますから、そこで偏差値30や40というのが『一安心できる状態ではない』ということはご理解いただけることと思います。
■その2・理解する以前の段階で止まってしまう子どもたち。
授業では分かっていたのに、テストとなると点が取れない。日本の子どもたちにも良く見られることです。最近では更に悪いことに、『こうなると自信喪失でかわいそうだからテストは受けない』という保護者の方がいらっしゃるようです。これでは悪循環です。
勉強だけではなく、何事にもコツは必要です。そのコツを無視して独自にということであれば、解答から逸脱することも多々見られます。身勝手な考えと独自な思考を取り違えているのが、こうした生徒の共通点です。理解しようという姿勢は見られません。
現地校では、特に小学生の場合、しっかり理解することよりも『たくさんできました』ということで評価されるということがあります。実際通塾されている保護者の方からもエッセイ等、内容は考えている気配もなく滅茶苦茶なのに、ただ多く書きさえすればすぐ『グッ、ジョブ』と誉められるが、それでいいのだろうかという質問を受けることもあります。当然、良いはずがありません。
理解する以前で止まる子。その多くはすぐに『わかった』といいます。また、そういった子供は総合力を試されるテストでは点数が取れず、大抵テストが嫌いです。入塾テストや無料学力診断をしていると『答えは滅茶苦茶で、しかも時間切れ』という生徒が多いのです。『とにかくやればいいんでしょ』という姿勢であれば、思考訓練までに達していない子供が本当に多い、と言うことです。
■その3・『わかっていない』ことさえ、『わかっていない』子どもたち。
テストが早く終わってしまって、残りの時間に寝ていたり文房具で遊んでいたりする生徒がいます。大抵の生徒の場合、『だって、できちゃったから』と言い訳します。こう言い訳する子供の解答用紙を採点してみると。。。という成績が大半です。
問題には全部手が着いているとすれば、低得点の原因は何なのでしょう。本来子供は『わかった』という感触があるまで『ストップ』と言われても考え続け、それでも到達出来なかったら本気で悔しがります。塾に通い初めて暫くすると、それに目覚める子は飛躍的に成績が伸びています。特に小学生に多く見られます。こういったことを経験したことがないとすると『わかっていないことさえ、わかっていない』のではと思います。『とにかく勉強なんて、やりさえすればそれでいい』といったような習慣が身に付いてしまっているとも考えられます。もし、その気配が見られるのであれば、一刻も早く脱していかないと、思考力・理解力・洞察力のない子供ができあがってしまいます。
時間をかけて丁寧に考えること。その上で正解するという感触。これは勉強をする上で最も大切なことだと思います。先人の責任として、これを放っておくべきではありません。こうしたことを見失っている子供を作りだしてはいけません。
■その4・放置された子どもたち。
海外では親子の絆が深いので、叱られることや誉められることのバランスが良く取れているご家庭が多く見られました。それによってかは定かではありませんが、日本の勉強のレベルは維持されていた子供が多かったように思います。しかし、最近それが崩れつつあるように思えます。叱らない家庭の増加。日本でも問題になっていますね。
入塾テストや体験授業において、よくこんなになるまで放っておいたと思える子たちが増えたように感じます。家で試しに、家族の名前を一人ずつ漢字で書かせてみて下さい。正しく書けますか?バランスの取れた字で書けますか?自分の名前すら漢字で書くときに止まってしまう子もよくいます。現地校に馴染む、つまりはアメリカの教育環境に適応することは大切なことだとは思いますが、永住するのではない限り、日本人の常識を捨ててまでアメリカに染まる必要があるのでしょうか? 子供に対して我が家の教育方針や今後の進路について明確に話し、それを変えないことが非常に大切なのです。『まだ、今後の予定は分からないから。。。』と中途半端な状態にすれば、必ずと言っていいほど『全てにおいて』中途半端な子供になります。
叱るべき時に叱る。誉めるときに誉める。これらは子どもをしっかり見ていなければできません。例えば憎まれ役を塾に押しつけるのでも良いのです。大切なのは役割分担。これこそが、子供達にとって、今、最も必要なことと思うのです。
■その5・すぐに諦めてしまう子どもたち。
自分の学力が、既に相当まずい状態になっていることに気がついているお子さんも中にはいます。しかしその大半は『どうせダメなんでしょ』とすぐに諦めてしまっているような子が多いようです。親は心配し、焚き付ける。本人もそれに答えて一応やってみる。ところがそこですぐには結果が出ないので『勉強したってダメなんだ』という結論に行き着くことが多いのです。
深く落ち込むこと自体は悪いことではありません。はい上がる力を持っている子供はそれだけ伸びていく可能性があります。ところが慣れない現地校で、特に英語と言う壁にはばまれ、力つきてしまっている子どもが見られるのです。『両方を完璧になんて、出来ない方が当たり前』と日本の勉強の方は投げ出してしまっているのかも知れません。現地校での成績が、非常に重要な立場にいるのでしょうか?アメリカで進学し続けるのでしょうか?2年後、3年後を考えたとき、大切なのは何なのでしょうか。
日本の勉強をしているときに『わからない』とすぐに諦めているようであれば、日本の進学に対しては既に赤信号が点灯しています。
■その6・親が一緒に勉強しすぎた子どもたち。
海外の場合、親に見てもらっている生徒が多く見られます。小4までに勉強の仕方や習慣を身につけておくという意味では、親と一緒に勉強することは有効手段といえます。enaでも小4の1年間は、ここに重きを置いています。しかし小5以降では自分一人で問題を解くことが大切です。ましてや中学生であれば、当然です。
注意しておくことは、何から何まで手取り足取り見てあげることは意味がないということです。夏期講習の時にも、明らかに全て親にやってもらっているであろうという生徒がいました。宿題はカンペキ。ところが復習小テストをやると全滅。これでは何の意味もありません。親が勉強を見る場合は『解き方』を教えるのではなく、『ヒント』にとどめるべきです。これが身内に勉強を教える場合の最も難しい点なのです。身内で教える場合には、決して感情的にならず、答えを引き出しやすいように誘導するべきです。これには親が予習して、我が子に対してどんなヒントを出すべきか考えておく必要がありますから、親には大変な準備がいります。更に、受験や進学のための情報を収集し、その分析結果から最適な教材を選び、学習計画を立て、進度調整をしながら進めていく。冷静に考えて、ここまでできないということであれば、専門の人間に任せるべきです。
始めから終わりまで、子供のそばに座っている必要はありません。管理は必要ですから、目に入る場所で子供が勉強している環境は必要です。自学もできない子供なのに自分の部屋にこもってしまうのであれば、成績向上はあり得ません。これは子供を信頼していないということでは決してありません。このあたりをはき違えていると、伸ばせる成績も伸ばせなくなります。放任と身勝手というのは全く違うものであるということ、子供は不完全な状態にあるということを、大人は常に意識していなければなりません。
■その7・計画性のない子どもたち、そして親たち。
受験学年になってから塾に通えばいい。『帰国枠』だから英語の力。だったらなおさら現地校に力を入れないと。そう考えるご家庭が依然多いように感じます。
再三申し上げていますが、日本語(国語)や数学の力が滅茶苦茶でもいいから『とにかく英語の力を!』などという学校はありません。偏差値40で慶應に行ける、など都合のいい噂はどこから流れているのでしょう。日本で受験を経験したであろう大人であれば、その真偽など考えるべくもありません。自宅で教科書程度の勉強をちょこっとやってという準備では、中堅以下の学校はまだしも、有名校を希望した場合『無謀なもの』でしかないのです。
帰国に備えての計画性はしっかりお持ちでしょうか。既に半年も一年も遅れてしまった学力を、短期間で何とかなるわけがありません。いきなり受験の対策を、と来塾されても志望校によっては対応出来ないこともあるのです。
■その8・精神年齢が退行した子どもたち。
精神的に退行している子は特に苦手教科に関して恐ろしいほどの『抜け』が生じます。幼ければ幼いほど、やっていて楽しくないものは後回しにします。『暗記が苦手』という生徒がいますが、単純で我慢が必要なことに対応出来なくなってきているとも考えられます。漢字テストや知識のテストを前に『わからない』と口にする生徒はかなり要注意です。それは暗記するもので『出来ない』のは『わからない』からではなく『覚えていない』からなのです。教育改革や受験制度の変更などがあったとしても、勉強の基礎段階は全て『知識』という土台に支えられていることは動かぬ事実です。土台がしっかりしていればこそ、応用があるはずです。『知識偏重』は問題かも知れませんが『知識抜け』はもっと問題です。
■その9・思考力が崩壊した子どもたち。
基本知識がしっかり覚えられていない状態で訓練を始めても同じ間違いばかりを繰り返し、なかなか思考力の養成までは手が届かないものです。問いから本質を見極め、解法のプロセスをしっかり考え、構築していくということなしには、まさに思考訓練となっている受験問題などは理解不可能です。
思考力をつけるには、まずは分析する目を持つことです。苦手科目に関しても『何が、何故苦手なのか』と考えた上で『ではどうすれば克服できるのか』と考える。こうした思考力が崩壊してしまうと、どうすることも出来なくなります。無料体験授業や無料学力診断等使って『等身大の自分』をしっかり見て下さい。私たちも考えるためのヒントを出すことは出来ますが、考えるのは、他でもない、アナタ自身です。
■その10・何から手をつけたらいいのか分からないという子どもたち。
数年で日本に帰るのだけれど『今』何をやっておくべきなのか分からない。意外にこうした生徒は多いのではと思います。保護者の方でも『日本に帰るのだし、やっておかなければとは分かっているけど。。。』とおっしゃるご家庭も多いと聞きます。
是非、手遅れになる前に行動を開始して下さい。進学・受験を前提とした勉強・情報収集を即はじめてください。生徒数が少ないこの校舎ですが、実は入塾をお断りしたご家庭もあるのです。『我々のできる限界を超している生徒』だったからです。高い授業料をいただいている私たちですから、それに見合った『結果』を出すことが最低限必要と考えます。よって、入塾前にそれが実現できないと判断するならば、お預かりするわけにはいきません。偏差値40台の生徒を半年や一年で有名難関校に入れるという作業は週に2,3回の授業では不可能な作業なのです。
お帰りになる地域の教育事情を調べれば、私たちの言うことはご理解いただけると思いますし、今何をしておくべきかが見えてくるはずです。
■エピローグ
お分かりいただきたいことは、この読み物を初めてからずっと変わっていません。『現状を認識し、危機感を感じて欲しい』ということだけです。『編入って何?』『帰国枠って、誰でも受かるんでしょ』『現地校の勉強さえやっていれば大丈夫』などなど、これらがいかに危険なことかを分かっていただきたいのです。これ以上、犠牲になる子どもたちを増やして欲しくない。私たちの気持ちは、それだけです。
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