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2010年12月号 「塾って、何?・・・日本の勉強に迷いがあるご家庭へ」
■続かなかった理由
例えば受験が目の前に迫っていないとか。例えば補習校では物足りないからとか。例えば日本の塾がDCにはあるからという理由だけだとか。enaに入って、数ヶ月後。それまで日本の勉強に、真剣に向かい合っていなかったのであれば、やり始めたのだから当然成績は伸びます。「こんな勉強の仕方、補習校ではやったことなかった」そんな声を、特に中学生からは良く聞きます。
どの学年でも、見た目は一生懸命頑張っているのに、今一歩、成績向上角度が甘い生徒が居ます。そこに共通する傾向として、特にお母さんが受験に執心していないことがあります。やりたいならやれるだけやってみなさいという感じのお母さん。受験屋の私たちからすると、もう少しご家庭の協力があれば、と悩むこともあります。でも「我が家の方針では無いので」といわれてしまったら、私たちには、それ以上介入できません。そのため、例えば「国語は来月から休みます」とか「現地校と両立できないので、辞めます」というご家庭も当然いらっしゃいます。
私たちは、こういうとき悩みます。「何故、続けていただけなかったんだろうか?」「私たちが至らなかった点は、何だったんだろうか?」と遅くまで職員が話し合うこともあります。もともと、こういうことが無いように体験授業や面談を通して、色々お話ししてきたつもり。でもそれが「つもり」であったことに、特に子ども達に対して、非常に申し訳ない気持ちになったりします。
ただ、中には、こんなご家庭もあります。「自分で決めて始めて、自分で勉強して、自分で結果を受け止めるというのも、いいかなと思っています。」とおっしゃるご家庭です。永住のご家庭やハーフのご家庭で、特に多く見られます。本来、勉強に取り組む姿勢としては正しい、この姿勢。それなのに、どうしてenaを続けられなかったのでしょうか?
■親子で取り組むとは?
さて、毎月書いているこの「読み物」のテーマは「海外生活する家庭において、親ができることはないのか?」といったことを中心軸にして書いているつもりです。(もちろん、enaの広告がメインではありますが。。。笑)そのため、これを手にしている方はお子さんの勉強へのかかわりに対して熱心な方が多いはずですね。そうではないかたは、enaの広告なんて、手にされないはずですから。ただ、中には「たまたま」、お!日本語じゃんと手にされてしまった方がいらっしゃることもあるでしょうし、ネットサーフでたどり着いてしまった方もいるかもしれません。永住のご家庭であったり、ハーフのご家庭であったり、日本の私立校に学籍がある場合も考えられる。そういうご家庭であれば、日本の勉強は、まあ、補習校と通信で十分で、そこから先の「勉強に対する姿勢」などというものは、基本的には子供まかせにしたいという方もいらっしゃいます。いつも「海外では、お父さん先生・お母さん先生が活躍されている」ということも書かせて頂いているわけですが、今回は「親子で取り組むとは、どういうことだろう?」という逆の視点から、私たちenaが、これまで一緒に歩いてきた海外生・ご家庭から学ばせて頂いたことなどを書かせて頂きます。
受験勉強に親が協力する方が良い、悪いといった話ではありません。「みんながやってるからって、同じである必要はない!」という考えは、私たちであっても、勿論、持っているものです。まずはそこからスタートして、みんながやっている、やっていないは関係なく、我が家はどうするかといった方針を決めるべきなのです。これが、私たちのお話ししている「我が家の基準」「我が家のミニマムスタンダード」「我が家のスタート位置」というものです。保護者面談などでは、よく使わせて頂く言葉ですが「家族会議してください」ということ。話し合い、考えた結果、親が子供の勉強に全面協力するというのも「あリ」ということだし、子どもが自分の力で立ち向かうこともあり。日本国内でも同じですが、一番悪いのは、みんながやってるからなんとなく私も・・・というパターンです。そういう方が付和雷同して子供のそばにつくと、喧嘩ばかりで効率が悪くなった・・・・という結果を招きます。なんとなくそばにつくのではなく、なぜそばにつくのか、きちんと整理して臨むべきでしょう。親が、ね。
そして、その家庭の方針を決めるのは、親の価値観によるところ。そりゃあ、そうでしょ?高校3年生になれば確かに、子ども自身が将来を考えて、となりますね。小6の中学受験では無理でしょう?海外生活が長くなれば、大学受験も厳しくなるかもしれない。日本の常識から遠ざかっているから。このため、周りの大人が導く必要性が、日本の子ども達と比較すれば、非常に大きいと考えられます。
■勝ち組、負け組???
「勝ち負けは、合格、不合格で決まるものではない」と、よく聞きますね。教育評論家の常套句でもあります。最近の「受験指導だけでは無い塾です」「やる気を育てる塾です」というようなところでも、必ず使う言葉ですね。もちろん、enaでも、思うところはあります。合格したから「勝ち」、不合格は「負け」ではありません。
ここで一つ意地悪を。「不合格でも、どうしていいのですか?」と、お聞きしましょう。不合格は負けではない。そう考えるなら、どうなったら負けだと考えるのでしょうか?また、どうであれば、負けでないと考えるのでしょうか?そこがちゃんとしているのであれば、今のままで問題ありせん。天海祐希主演の「GOLD」というドラマをご覧になりましたか?視聴率は良くなかったようですが。。。原作はビューテイフルチャイルドの作り方・人生のGOLDを獲るために必要な39の金言」・・・著者は「早乙女悠里」さんです。このドラマの冒頭に、考えるべき事があります。是非、ご覧になって下さい。もちろんドラマですから「誇張」はされています。でも、海外に生活する私たちが考えるべき事が話されているのではないかと思わずにいられませんでした。
例えば、こうです。
うちは(ア)だから、不合格であっても(イ)から大丈夫!
例えば、勉強で、また入試で、どうなったからって、子供自身の問題なんだから、問題はない!とお考えであれば、
(ア)子供任せ (イ)問題ない
となり、うちは子供任せだから、不合格であっても問題ない。大丈夫!となります。もし、これが「不合格でも良いのさ」とおっしゃるアナタの答えなら、私たちenaでは「それは間違っています」とお話しすると思います。これを放任主義と呼んでしまっては、子どもが不幸です。
勝ち負けは、合格、不合格で決まるものではないと言いましたが、私たちは多くの海外生を見てきて、受験の結果により子供が大きく2つに道に分かれることを知っています。それは、
勝ち負けは、受験後の自信や頑張りで決まる
ということです。たとえ不合格でも、受験勉強を通じて自信を持つことができ、受験後も頑張ることができれば、勝ちです。うちは子供任せてから、不合格であっても問題ないから大丈夫!となれば、大丈夫と勝手に思っているのは親だけです。もっと簡単に言えば、親の怠慢でしかありません。先ほどの「GOLD」ではありませんが、6年生までに完成させたいことがあるはずです。中学生を卒業するまでに完成させたいことがあるはずです。それを実現させることは、子ども達を取り巻く周りの大人全員の義務であると、私たちは思っています。
○○中学に受かったから勝ち組。落ちたから負け組。でも1学期で退学してしまった生徒。私の、海外での教え子にもいると、以前の読み物でお話ししたことがあります。彼らは勝ち組?負け組?受験屋が、単に受験の合否だけにこだわるのであれば、受かったのだから当然勝ち組に入れるでしょうね。でも、enaは違います。受験で燃え尽きない子ども達を育てたいと思う講師ばかりの集団です。こういったケースの場合、志望校決定の段階から考え直して、負け組としか言いようがありません。そして、そう持っていってしまった私たちの反省は、底知れません。勝ち組にしたてることが、当然の職務である私たち。それが出来なかったわけですから。。。
■現実をしっかり見据えて
理想論を語る教育評論家がいます。「子どもの気持ちになって」と声高に話す教育評論家がいます。偏差値での輪切りは全て悪だと言い、塾は諸悪の根元だとおっしゃいます。そういう方のお子さんが、実は有名進学塾に通っていたり、という話は良く聞きますね。文科省の大臣が「効率教育を良くして。。。」云々と言いながら、ご子弟は私学どっぷり、とか。
海外、特に英語圏からの帰国枠受験は楽々!と聞いて、なーんにも準備していなかったというご家庭は、随分減りました。それでも、「まあ、とりあえず」「ま、適当に」という刹那主義のご家庭は、まだまだいらっしゃいます。そんなご家庭の多くは「勉強って、自主性が大事だし」とおっしゃる。
例えばenaに入って、真面目に通って、テスト勉強も自分で机に向かって頑張っていたけど、成績は低空飛行。そんな子が自信を持ち、次も頑張ることができるのでしょうか?「それは自己責任だから」と、小4の子どもに言うことが出来るのでしょうか?
「あ〜、自分はダメだ・・・」となれば、子供たちが頑張ることを止めます。以前の読み物にも書いていますが、大人だって、ご褒美無しに頑張り続けるのは辛いことです。それを「教養のために」とか「将来のために」というような「ぼわーん」とした言葉を使って、子ども達が「頑張る!」と言わせようとしているのならば、おかしいでしょう?
『自分で決めて始めて、自分が頑張って』というのは、素晴らしいと思います。しかし「自分が結果を受け止めるというのも、いいかなあ」というのは、要注意なのです。「いいかな」と思うのは親だけであり、子供ではありません。それでいて、「がんばれ」などというのは、バラバラではありませんか?
時折、「悪い成績を取ったら可愛そうだから」と、模擬試験を受けないとおっしゃるご家庭があります。こういう姿勢に、私たちは反対しています。まあ、受験屋ですから、当然ですけどね。それ以上に思うことは、こうおっしゃるご家庭の多くは、実は「子ども達」が受け取るのではなく、親が受け止められないということなのです。結果を受け止めるべきは、本人よりも親なのに、です。
スポ根で行こう!ということではなく、受験後も頑張り続ける道を、親は子どもに対して確保・指南すべきだと言っているのです。特に周りが見えない・居ない海外生であれば、尚更のことだといっているわけです。
■当然、そこには。。。
繰り返しますが、当然、各家庭の方針がおありだと思います。そのことについて、他人がとやかく言う必要はありません。ご家庭の教育方針と正反対の声を聞く必要もありません。ただ、例えば受験をするのに受験事情を知らずして、受験に望むのはナンセンスだとお話ししています。我が家の方針を、正反対の教育方針をうたう学校に押しつけるのもナンセンスだとお話ししています。お話ししているというのは、そういうご家庭がまだまだ沢山いらっしゃるからだ、ということです。実は気がつかないうちに、モンスターペアレントといわずも、ヘリコプターペアレントといわずも、何かちょっと、日本の人たちとは軸が狂ってしまったというご家庭もいらっしゃるわけです。
私も子供を持つ親です。子供の成長を願うことは、親のみんなの願いです。そこには嘘も、偽りもありません。だったら、
うちは(ア)だから、不合格であっても(イ)から大丈夫!
の答えが
(ア)親の方針で子供任せ (イ)親の責任だ
でありたいと、私は思います。
受験を1つのゴールとして捉えているのは事実です。でも、親はそのあとの道についても思いをめぐらしておくべきだと私たちは思うわけです。受験は子ども達が「自分を見せるためのステージ」であれば良い。そう考えるからこそ、私たちは「進学塾」として、ここにいるわけです。ちまたでは「enaは受験しない家庭は門前払いらしいよ」と噂されているそうですが、その噂は半分本当で、半分嘘であるということです。
具体的な目標を目の前に立て、目的意識をきちんと持たせる。それを親子で感じ取りながら、歩いていく。それだけのことです。
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