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2002年2月号 「我が家の優先順位は?」
■国語の力・・1月27日実施「新年度説明会」より
☆全体的な現状 帰国子女は文系教科全般において次のように能力低下するといわれます。例えば国語を例に取ってみてみましょう。
@暗記力→小4から中3生、どのレベルでも語句や文字、言葉としての常識が低下します。
(例)拡→『てへん』と『広』が反対になる。『てへん』が右側に来る文字など本来ありえません。
※その他、暗記した語句を言葉として認識しないため、覚えても残らず覚えたことすら忘れてしまいます。
A思考力→論理的に続きを考える能力が弱くなるようです。
(例)『こけた→□□→泣く。』、□□には『痛い』が入りますが、こういった初歩の論理的な考えから、既につまずきます。B注意力→@やAの全てに言えることですが、『勉強』そのものに関しての基礎的な常識が低下します。その結果、どこに注意して学習するのか、例えば何とどう区別して学習すべきかという意識すらなかったりします。
(例) 『視』と『被』の『へん』。☆考えられる原因
@現地校の学習方針とそこでの扱われ方。
特に小学生に顕著なこととして、現地校での授業内容が日本の小学生のやっている内容より、2学年程度遅れている場合が多いので、危機感が薄れる。現地校での内容は十分出来ているから、ということで安心してしまう。さらに海外環境のため、実は現地校の先生方にはどうしても途中で手加減されてしまっている生徒が多い。完璧な答えや正解に行き着かなくても、いっぱい書けば『グッ、ジョブ』となり、日本の勉強で要求される「正確に、素速く」というレベルとずれてしまう。A 日本の勉強離れ。
日本の勉強は正確さや丁寧さが問われるものなので、現地校でやっていることとは全く目的が違うはず。それに気づかず、日本の勉強を全くやっていなければ、当然出来なくなってしまいます。ほとんど接点のない別の勉強だと考え、日本の勉強時間を別に確保しなければなりません。まさにダブルカルチャーであり海外にいるからこその苦労です。過去、これを実戦していた生徒が多かったからこそ、帰国枠を実施している学校が「帰国生は根性がある」と勝手に思っているわけです。二つの文化を同時に背負っていくのが本来ダブルカルチャーです。現地校からだけの吸収もとであればモノカルチャーといわざるをえません。海外生は二つともしっかりやらなければならないのです。☆そうならないためには。
ほとんどのお子様が日本語の勉強に関して、『駅前留学』状態だということを意識するべきです。日本の英会話学校で週一回、英語を習ったところで英語は話せるようになりません。塾に週一回通っただけでは日本の勉強でもその状態です。毎日、日本の勉強を、現地校の学習とは別に独立してやっていく他はありません。日本の受験・進学に対応するためには、現地校や補習校での評価は参考程度にしかなりません。実際大学受験でもSATやTOEFLスコアを提出させるのは、それが「客観テスト」であるからです。このあたり、「現地校の成績さえ良ければ大丈夫」と勘違いされているご家庭がいまだに多いと思います。日本の勉強での評価、特に実際の入試問題がどれぐらい解けるのかで考えて行くべきです。
■陥りやすい「穴」・ベスト3 その1「現地校崇拝主義」
せっかくアメリカにいるんだから、英語力は付けさせたい。日本の学校教育でも「コミュニケーション能力」を重視し始めていると聞いたし。それに、小学校からも英語教育が始まるんでしょ?そうなるとやっぱり現地校重視よね。日本では体験できない、とても貴重なことですもの。
おっしゃるとおりです。何も間違っていません。しかし、帰国という前提条件があり、進学していくということを考えれば、「日本の勉強も同時にやっておいて」という条件が付きます。
今日本国内にいる、進学を意識されている方が全て塾通いをしているわけではありません。しかし、託児所変わりに塾通いさせているご家庭は今はいません。(実はバブルの頃はありました)そうなると、模擬試験まで受けている生徒は「進学を意識している生徒」と仮定しても良いでしょう。この母集団によるテストを、入塾試験に使っています。この地域はアメリカの他の地域と違って、2,3年で帰国されるご家庭が多く見られます。私がこの校舎に赴任してから、入塾試験で偏差値50を越えた生徒は片手にあまります。
「失敬な。それは出来の悪い生徒が多い、ということか?」
決してそうではありません。多くの生徒が入塾時、そうした成績でしたが塾の生活になれるにつれ、多くの生徒の成績が伸びています。これが何を物語っているかお分かりですか?
「進学を意識した勉強をやらせていなかった」ということです。進学に必要な勉強方法を知らなかったと言うことです。これは生徒本人だけに当てはまることではありません。入塾時、保護者の方も、受験情報や近年の教育事情など「ご存じない方」が多く見られます。その後、校舎の廊下にある資料をご覧になったり、ホームページなどをご覧になる機会が増え、現実を直視されていくケースが多く見受けられます。
私自身、アメリカでの生徒指導歴は8年目に入りつつあります。現地校の素晴らしい教育システムも、海外だからこそ出来る貴重な体験も分かっているつもりです。しかし、敢えて、現地校のデメリットをお話ししているのは「あくまでも日本への進学を考えているからこそ」なのです。もし、日本の進学と言うことが念頭にあるのであれば、一刻も早く「現実」、つまりは「お子様の現段階での相対的な成績」や「ご帰国先の教育環境」「帰国枠入試の実体」などを調べて下さい。
■陥りやすい「穴」・ベスト3 その2「英語力の誤解」
その1につながっていることですが。。。
日本に帰ってからも英語力は武器になるから、やっぱり現地校の勉強は大切。進学を考えてこそ、英語力でしょう。
はい。これも間違っていません。ただし、これにも「日本語力との互換性があるのであれば」という条件付きです。生活英語と学校英文法が大きく違うことはご承知のことだと思います。結論的に言えば、「学年相当の国語力がない生徒は、最終段階で英語は得点源にならない」ということになります。
文法面からは、それがはっきり言えます。不定詞、過去分詞の形容詞的用法。重文、複文、短文。これらの「文法用語」に対してどチンプンカンプンという生徒が多く見られます。そして彼らに「こういうことだよ」といえば「なあんだ、知っているよ」と返されます。すなわち、日本語や日本語の文法を知らないのです。これは、文法面だけではなく解釈や英文和訳などでも見られます。「言っていることは分かるけど、日本語で何というか分からない」。そして、勝手な解釈も入ります。「英語には敬語がない」など。これはウソですね。この生徒が知らないだけです。敬語表現はありますから。こうしたように、生活英語では苦労していないレベルの英語力を保持しているというのなら、「アメリカ人としての年齢相当の常識」まで身に付けているのでしょうか?と聞きたくなります。さらに日本語との「互換性」をとるために「日本人としての年齢相当の常識」を持ち合わせているのですか?とも聞きたくなります。私が見る限り、ほとんどの生徒は持ち合わせていません。厳しい言葉で言えば「どちらの言語も年齢相当のレベルには達していない中途半端な状態」です。まさに「ハーフリンガル」な生徒が目立ちます。これでは受験や進学にも役に立たないばかりか、結局せっかくの貴重な体験もが中途半端になっています。
永住を考えていらっしゃるのであれば、年齢相当の常識を備えた「英語力の完成」が急務でしょう。帰国を考えていらっしゃるのであれば、それに加えて「日本人としての年齢相当の常識」をも身に付けなければならないのです。本来、海外にいる苦労とは、こうだったはずです。近年、ここから逃げている生徒、ご家庭が多く見られます。
■陥りやすい「穴」・ベスト3 その3「情報不足」
現地校をしっかりやっていれば、大丈夫。帰国枠は入りやすいから準備ナンテしなくても大丈夫。大丈夫ったら大丈夫。
もう、こうした「根拠のない」発言はやめましょう。いまだに「この言葉」を信じ込んでいらっしゃるご家庭が多いことに悲しくなります。現実を知らない理想主義のカタマリのような「教育評論家」が言うことを鵜呑みにしてはいけません。英語でコミュニケーションをとることが出来るだけで入学できるのであれば、誰も苦労はしていません。買い物に不自由しない英語力があるといっても、「価値観の相違を論述する」ことが出来るのですか?高校入試であっても、ましてや大学入試であれば、「考える習慣」や「考えるための土台であるべき知識量」が問われるのは言うまでもありません。それを無視して「現地校に通っているから」の一点張りでは非現実的な発想としか言わざるを得ません。情報不足。まさに知らなさすぎます。
編入を希望している場合も同じです。これだけ「定員に欠員があったときに実施するものだから」とお話ししているにもかかわらず、中心軸に考えるのは何故でしょうか。甘すぎます。「○○高校以下には行かせたくない」とおっしゃるのであれば、その学校が「今」、どのくらいの難しさなのか調べ、あわせてお子様が相対的な成績としてどれくらいの力を持っているのかをも調べて下さい。小学生のお子様をお持ちのご家庭で、国語、つまりは日本語力に関して「補習校にいっていたから大丈夫」とおっしゃる方がいました。何をして「大丈夫」と言えるのでしょうか?現代の日本の公立小学校で「学校の成績がいいから、学力はある」と考えるご家庭は超少数派です。補習校の目的は違うはずでしょう。それを「勝手な解釈」をして、大丈夫と何故言い切れるのでしょうか?帰国半年前に塾に来られたとしても「手遅れ」です。
お子様自身のことも、学校のこと、ご帰国される地域のこと、もっとお調べになって下さい。その上で、ご家庭の優先順位を作って下さい。小学生の場合、本人たちが考えられるはずがありません。是非、お父様、お母様で組み立てて下さい。中学生、高校生のお子様をお持ちのご家庭であれば、是非、本人たちに調べさせて下さい。そして家族で話し合って下さい。 これを、後回しにすればするほど「手遅れ」になります。
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