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2007年2月号 「図形問題を克服するポイント その1」

 

 中学入試でも高校入試でも、極端な難問・奇問はなくなったものの、難しい問題が多く出題されています。帰国枠であっても、例えば中学入試の場合、空間図形(立体)は出題しないかわりに、平面図形は相当ひねったものを出題する学校もあります。学校の方針にもよりますが、入試問題の中で図形問題が占める割合はだいたい半分ぐらいと考えて良さそうです。文章題の中に融合というものを含めたら、それ以上になる場合もあり得ます。「図形を制する者は、算数・数学を制する」といわれることもあるくらいです。

 毎年必ずといって、図形問題攻略法はないかと質問に来る生徒がいます。パターンに慣れるしかないのか、つまりは大量に問題をこなすしか対策はないのかと嘆く声も聞かれます。中には敬遠してしまう生徒もみられます。決して捨てるべき問題ではありません。(捨てたら入試問題の半分を捨てることになってしまう!!!)順序立てて一つずつ切り崩していけば、必ず解ける問題になっていることに気づきましょう。今月は、図形問題が苦手な人のために、いくつかの解決策を提案しました。これをきっかけに、図形問題突破の糸口をつかんでください。  

■思考力を必要とする問題が急増!■

 最近の入試問題(帰国枠中学入試における上位校、高校入試における上位校)で共通することは、一昔前の「パターン化された範囲」に分類できない「推理力」「思考力」「ひらめき」といった応用力を必要とする問題が増加傾向にあるということです。ここで勘違いして欲しくないのは、かといって、パターン化された問題をやらなくて良いということではありません。作文と同じように、インプット量が少なければアウトプット量が少ないのと同じで、パターン化された図形問題を土台に、その上に積み上げられたものが必要になったということなのです。

 具体的に考えてみます。分野的には、帰国枠中学入試の場合、「円や扇形の求積問題」「複合図形の角度の問題」「相似を徹底的に駆使して考える問題」が多いようです。高校入試の場合、これらに加えて「立体切断」「錐体」などをもとにする問題が多くなったような気がします。学校側には、やはり頭の良い子が欲しいという本音があるのではないでしょうか。受験テクニックにおぼれた生徒だと、入学後の学力が伸びないことが多くみられるといいます。図形に関していえば、頭の中で図形の見えない部分の動きを緻密にイメージかできることを求める、つまり、思考力を必要とする問題が増えているというわけです。このことは、ずいぶん前に「帰国枠のある某私立中学」の入試担当の先生がおっしゃっていました。立方体の見取り図で、実際には見えないところを点線で書くことができているかをみたい、と。もっと典型的な例を考えてみましょう。

 図1は四角形の周りを円が転がりながら移動するタイプの問題で、帰国枠中学入試でも高校入試でも登場するものです。円の中心はどう動いたかという設問なら作図しながら何とか考えることができます。しかし、円が通った後の面積を求めるとなると、頭の中でイメージ化して考えるしかありません。つまり、たとえ複雑でも計算さえ間違わなければ解ける問題や作図によって自分の目で直接確かめられる問題が解けるだけでは、入試に太刀打ちできない状況にあるといえるのです。この対策としては「日頃からイメージトレーニングをする」ということ以外になさそうです。経験則として身につけておかないといけません。急にイメージがわいてくるというものではありませんからね。授業中、黒板に書かれた図をしっかりノートに写し、それを家で書き直すくらいの練習量は最低限必要だということです。  

■基本が絡み合った複合問題■  

 では、思考力や応用力のある子供でないと解けないような難問が主流かというと、決してそうは言い切れません。入試問題をよくよく分析してみると、いろいろな分野を絡ませた融合問題が主流になっています。図形の中で点を移動させてそれをグラフ化させる問題。最大最小の面積。体積の変化を調べる問題。変化していくものの概念を理解させる高度な問題に移ってきています。しかし手も足も出ないほどの問題ではなく、ある程度基本ができている子供なら、時間さえかければ何とか解答に到達できる問題といえます。しかしこの「時間さえかければ」というのが、実はクセ者なのです。試験時間が50分として、10分以上は見直しに当てたいとすると、1問あたり平均で5分程度でクリアしたいところ。つまり、いかに早く解けるかが、入試では重要です。(だから私は授業でタイマーを使っているわけです!)どんなに丁寧に、しっかり考えたとしても、1問に3時間もかけてはいけないわけです。そういう勉強の仕方をしている人は、受験を意識するのであれば、今すぐ変えるべきです。この「速さ」に対応するには、やはり数多くの問題に当たって、慣れていくということが一番です。  

■徹底したパターン学習がカギ■

 問題を見た瞬間に、どういった手順で解けば良いのかが見えるようになるには、その前段階として徹底したパターン学習が必要だと、授業でも保護者会でもお話ししてきました。パターン学習というと、受験勉強そのもの、思考力や応用力とは対極に位置する「テクニックに走ったもの」と感じる方も多いでしょう。しかし入試では、個々の基本的パターンを方法論の「知識の引き出し」としてたくさん持っていることが第一条件なのです。そして、この引き出しが整理整頓されていて、何と何を使えば良いのかが瞬時に判断できるかがカギです。例えば立体で、円柱にひもを巻き付けて最短距離を求める問題(図2)では、見ただけで展開図を書いて直線が最短距離になること(図3)に気がつかないと解けなかったり、また解けたとしても非常に時間がかかってしまいます。現在の高度情報化時代を反映してか、入試問題でも知識・技術の整理・処理能力が要求されているのではないでしょうか。これらから考えるに、図形問題を得意にするためには、基本から徹底したパターン学習をする必要がありそうです。それも、表面的に数をこなすのではなく、「なぜそうなるのか」という原理原則をしっかり理解していく勉強方法が必要です。これらを理解する時間を考えると中学受験においては、例え帰国枠であっても4年生からのスタートは必須です。高校受験においては、中学受験準備をしたのであれば中2からのスタートでも間に合いますが、そうではないならば、中1からのスタートは絶対と思われます。基本から1問1問たっぷり時間をかけて解く。この経験をするために早めのスタートが必要なわけです。よく算数にはセンスや閃きが必要だといわれます。実はこれらは決して持って生まれたものばかりではありません。数多くの問題に当たって経験を積んでいると身に付くものでもあるのです。努力次第で、得意になることが可能な単元であるとも考えられるというわけです。

 次に、パターン学習として押さえておきたいポイントをいくつか紹介していきます。スペースの関係上、多くは説明できませんが、代表的なものばかりですので、最低限、この程度の知識は覚え、使いこなせるように訓練してください。  

■計算に工夫をする■

 図形問題といっても、当然、計算は必要です。5年生が中学受験の要といわれているのは、「円・扇形」が登場するからです。円周率を使う問題では計算が複雑になりやすく、せっかく式はあっているのに計算でケアレスミスをするケースがよく見られます。教科書内容削減問題「事件」の時に、多くの私立中学が「円周率を3.14とする図形問題」を入試出題範囲からはずさなかったのは、実はこのためです。しっかりとした計算ができている生徒かを見たいわけです。今でも、例え帰国枠中学入試でも、平面図形においては必ずと言っていいほど円や扇形が絡んでいるのも、このためなのです。

 さて、それでは計算の工夫は必須となります。分配法則です。小4に学習する計算の工夫のひとつです。括弧の利用ですね。これは高校入試における「因数分解」につながります。こうした計算問題の工夫は、将棋やチェスなどと同じで、次の手を読みながら「頭を使って、いかに楽に計算できるか」を常に考える必要があるわけです。まじめにやれば良いというわけではありません。むしろ「さっさと済ませたいから」という意識の方が大切となります。(ただし、いい加減な態度・計算に取り組む姿勢では本末転倒の結果になりがちです。)

 次に、知識という武器の利用です。例えば1/4は0.25です。こうした代表的な分数を小数として覚えておく、3.14の倍数を覚えておくなど、ある程度のところまでを暗記しておくと、計算をせずに済みます。高校入試においても、三平方の定理において、辺の比率を暗記しておくことなども絶対です。(例としては3:4:5や1:√3:2など)授業で「暗記をもとに解いた生徒」と「まじめに最初から解いた生徒」との処理時間を比較すると明らかです。タイムは全くと言っていいほど違います。  

■平面図形と角度■

 覚えておくと便利、といえば例えば図4のような定理。これ便利なものです。これらは高校入試でも利用可能ですし、実際私の中学生の授業では「必ず使おう」とさえ説明しているものです。これらは知らなくても三角形の性質などを利用して、補助線を引きながら一つ一つ丁寧に角度を出していけば解けるものです。ところがこれも、知っていると数秒で解けてしまう解法であり、知っていて使いこなせる状態までに訓練されていれば、相当な時間短縮につながるというわけです。(こういうことを、塾でトレーニングするわけです)

 角度の問題に共通することは、平行線はないか(錯角や同位角が利用可能)、合同な三角形がないか(折り返し)、補助線で三角形に分割できないかなどというポイントがあります。中でも、高校入試にも中学入試にも必須なのが、図5のような二等辺三角形の利用です。(高校入試の場合は、たいていは円が絡んでいたりします)その他、図6のような1組の三角定規を使う問題は、高校入試でも必須です。これらの辺の比率は高校数学での「三角比」につながります。絶対暗記のものです。もとは三平方の定理で使われるものです。ここでは中学入試に見られる角度の問題として扱ってみました。また正方形と正三角形の組み合わせに関してもよく出題されています。中学入試では角度や辺の長さに関する問題、高校入試では合同証明などに使われるパターンとして使われることが多いようです。図形の一部を折り曲げる問題では、三角形の合同を利用することもあります。これらは塾の授業では当然扱うものばかりですが、問題集や教科書などでは扱われていないものが多いようです。また、学校によってクセのある単元でもあります。目標校に合わせた教材を、指導力のある先生に見ていただくというのが、一番の攻略法なのかもしれませんね。  

■面積を求める工夫■

 図7のような形の面積を求める場合は、ちょっとした工夫で簡単に計算することが可能です。これは有名な技術ですから、中学受験を経験されたお父さん・お母さんもご存じのはずです。中学入試において(1)は、このままでは計算できませんが、同じ形が4つ集まれば正方形ができることを利用して、正方形から円の面積を引いて4分の1にすれば解けます。今無いものを想像するという点では難しいのですが、慣れてしまえば問題ないでしょう。次に(2)は、同じ面積の部分を移動させれば、ただの扇形になります。このように単純に部分を移動させる、または図の一部を切り取って移動させると、ただの基本図形になってしまうというのは、高校入試でも中学入試でも見られる問題です。図を書き直したりするクセを身につけることが最大の攻略法です。(3)は、中学入試でよく出題される問題です。勝手なところから手をつけても決して解けないものです。行き当たりばったりで解けても決して意味を持たないものです。どの順番に手をつけていったらよいのかを、授業できちんと習って、覚える時間を作り、自分のものにしていきましょう。

 よく中学入試用の問題集で見かける「木の葉形」(私のクラスではピーナッツ形といいます。正確には、2つの弓形の和といえば良いのでしょうか。)の問題は、前述の通り順に引いていく方法でも解けますが、やはり時間がかかります。中学生となると、この本来のやり方でまとめていくしかないのですが、中学入試の場合、円周率を3.14に限ったのみに使えるテクニックがあります。「正方形の面積の0.57倍」というものです。この公式は、難関中学受験用の教材には載っていますが、基本重視の問題集にはありません。ただ、知っていると圧倒的に速いスピードで解答を出すことが可能です。同様に、三日月形(つまりは、弓形といわれるもの。四分の一円から直角二等辺三角形を引いたもの。)なら、これを利用して半分にすればいいし、(1)の白いところであれば、「正方形の面積の0.43倍」で求めることも可能なわけです。(2)は、これが4つ集まった形です。1辺が2cmの正方形の中に入っているピーナッツを計算して、4倍するという方法を使えば瞬時に答えが求められるという寸法です。・・・来月に続く。  

     

 

 

   

 

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