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2002年11月号 「応用力って何だろう?」国語&英語の勉強方法
■国語は結局、記述力が鍵になる■
一般に、国語のテストがあったとき大きな点数差がつく箇所は、長文読解問題です。このことは帰国枠入試問題でも同じことがいえます。もっとも、帰国枠高校入試では「一般入試と同じ問題」を出題する高校が殆どですから元々違いなどありません。
一般的には、長文問題1題の文章量としても2000字から3000字の入試問題が主流ですが、難関校の中には5000字を越える学校もあります。帰国生に人気の某K中等部入試でも「超長文」が出題されています。中学入試でも高校入試でも、たとえ帰国生に対してであっても『いかに正確に、いかに素速く文章を読みとることが出来るか』を要求しているのです。学科試験を実施する学校では「帰国生だから国語の力は甘めに見てもらえる」というような気配は全く感じません。
出題内容的には、説明文における語句の解釈や段落関係、要旨の把握などが頻出です。また文学的文章であれば登場人物の心情に関する問題が中心です。ここで総合点数に差が付いてしまうのが記述式の問題です。文中の言葉を使って50字程度でまとめるものから、100〜200字での作文まで形式は様々ですが、結局『文章のテーマに沿って的確に表現できるかどうか』が合否を左右する重要なポイントとなっています。
日本語語彙力が年齢相当にまで備わっていない海外生の場合、記述問題は大きな障害となっています。場合によっては「全く手つかず」ということがあり得ます。日本的な情緒を理解していなければ、文学的文章の理解はしにくくなるでしょう。説明文では知識不足のために「何が書いてあるのか分からない」と投げ出してしまうケースが目立ちます。日本語知識・日本の常識のインプット作業を放棄しているのですから当然の結果です。読めないのであれば、書くことは出来ません。知らないことだらけであれば、設問に答えるだけの言語能力はありません。
■国語だってある程度のパターンがある■
記述問題の場合は「このような設問なら、こう答える。答えはここから、こう探す。」という一定のパターンのようなものがあります。まずは長文問題を多く消化しながらパターンを習得することが第一です。ただし、「なぜ、その答えになるのか」ということに対して、論理的に筋道立てて教えてくれる指導者が横にいなければ険しい道のりになるでしょう。また、毎回指導者の好みの文章しか扱わないようなことだと、パターン習得には及びません。このパターン習得のさせ方が、国語を教える際の最も難しい点です。こういった入試問題の解法以外の国語教授は、実は誰にでも出来るものなのです。
塾の教材は「長文問題を多く消化しながらパターンを習得すること」を中心にしながら、思考訓練ができるものになっています。設問もひねったものから、単に抜き出せば良いものなど、様々なパターンが配列されています。これらを一つ一つ丁寧に解いていけば、出題パターンに慣れることができます。入試問題攻略を主眼とする塾では、この教材を『ヒントを与えながら、あくまでも子供たち一人一人に考えさせる』ということを中心にして指導しています。『一人一人考えさせる』というところがポイントです。
これに対して主として教科書を使った学校の授業はどうでしょうか?ひとつの題材をじっくり読みましょう。楽しみながら読みましょうという方法が中心です。永住希望の人もいる。ハーフの人もいる。色々な人が色々な考え方・感じ方をしている。そういった視点で『みんなで考えましょう』という方法です。この勉強方法自体は精神的成長には有益なものであり、教育上不可欠なものなのです。しかし、入試問題解法という視点においては、得点につながる勉強方法とは言い切れないのです。あまりにも時間がかかりすぎるということが問題です。また、例えば「様々な価値観がある」というような『』優等生の一般論』だけが良い解答とされ、作問者の「ひっかけ」「いじわる」などに慣れていく機会が作れません。この方法だけでは試験で得点できる能力は付きません。
記述問題は、上記のような入試問題に精通する指導者のもとで『様々な問題を解き・指導を受け・再思考し・問題に慣れる』ことによって、表記上の凡ミスなどを減らすことが可能です。複雑な記述問題の場合には1つ1つ切り崩していく必要がありますが、大概の問題は「意地悪のされ方」が似通っているところがあるので慣れると失点を防げます。慣れていく上で大切なことは、出題者が問題を通して何を確かめたいのかということを「考える」ことです。時として、これは著者と設問作成者と価値観が一致していないことがあるのです。ここで「本文を楽しむ読み方」をしてしまうと、解答へはたどり着かないわけです。入試問題を解くときには、あくまでも「視点は作問者の目にあわせて」となるわけです。結局過去問を主体とした問題集などが最適ということになるのです。塾の教材の多くが過去問を主体としているのはこのためです。
一度、志望校の過去問をご覧になって下さい。今の勉強を続けると、この学校の入試問題が解けるようになるのか感じ取ってみてください。扱われている本文の傾向(ベストセラーから子供向け読み物まで多彩です。)や、出題のされ方など、研究すべき点は多々あるはずです。今の勉強方法・教育環境で、残された時間内で、これらの問題が解けるようになる自信はありますか?
■ニホンゴ、ワカリマスカ?■
また、記述式問題で忘れてはならないことは、書いた文章に推敲を重ね、正しい日本語になっているかチェックすることです。記述問題の問題の難しさはココにあると言い切りましょう。特に英語環境に馴染んで日本語能力が落ちてしまっている生徒にとっては、最難関箇所です。彼らのほとんどは、きちんと自分の文章を自分自身でチェックできない子供です。「て・に・を・は」がおかしくなっている生徒から、単語しゃべりが極端化し、退行化し、最早意思伝達が不可能になっている生徒も見られます。こうした生徒にとって自分で書いた文章が正しいのかどうかの判断が付かないわけですから、必ず大人が見てあげる必要があります。仮に模範解答と違う答えを子供が書いていた場合は、きちんと「どこが悪いのか」を指摘してあげてください。
国語の勉強では、なぜその解答になるのかという「過程」が大切です。したがって答え合わせの段階で、模範解答を写しているだけでは意味がありません。間違えた場合は自分の答えのどこが悪いのかを「きちんとした日本語能力がある大人」にチェックしてもらい、きちんとノートに書きまとめておくのです。これが習慣化できれば、相当な思考訓練が積み重ねられているはずです。事実、この方法で「開成中学」に合格した生徒がDC校卒業生の中にいます。しゃべることが出来ているから国語の試験が出来るというのなら、日本国内の生徒は皆国語の試験で満点を取るわけです。記述力教科をするのであれば総合的な国語力を向上させる必要があるということなのです。
■勘違いをおこしているアナタへ■
基本的なことですが、読解問題は読書ではないことを忘れないでください。読書とは「娯楽」です。「ああ面白かった」でも「つまらなかった」でも良いのです。さらに読書には設問などありませんから、論理構成などに注意して読まなくても良いのです。途切れ途切れの記憶で読み進んでも、自分なりに勝手に辻褄を合わせても、誰も文句は言いません。読書が好きだから国語の成績は大丈夫と油断していると後で痛い目に遭います。
読解問題は読書とは違います。字面を追いかけているだけでは設問が解けません。筆者が何を言いたいのかを常に考えなければなりません。設問作成者が何を聞いているのかを考えながら読まなくてはなりません。そこには「文章が面白い」というようなことが入り込む余地がありません。しかも、その作業を短時間で行わなければなりません。
物語文の場合など、登場人物に感情移入しすぎてしまったり、自分の主観が入ったために自分勝手な答えを出してしまう可能性があります。記述式に限らず、内容選択の問題でも解釈の仕方によっては選択肢すべての辻褄が合うこともあるでしょう。あくまで問題として文章が出題されているわけですから、個人的な解釈は大きな妨げになります。こうしたことに「囚われすぎないように」指導者が誘導してあげる必要があります。アナタの側には、そういった大人がついていますか?
■活字に慣れよう■
4年生ぐらいから、できるだけ文章に慣れさせておく必要があります。これは難しい本でなくてもかまいません。小学生新聞などで十分ですから、毎日何らかの日本語にふれさせてください。文章を読むことで、読解力はもちろん、語彙力や漢字能力を高めることが出来ます。その際必ず音読させてください。言語運用能力は書く力の次に「読む力」が落ちていきます。たどたどしい読み方をする子供の多くは、既に日本語能力に問題を持っていることが多いのです。読解力どころではありません。
漢字は熟語で覚えるのが大原則。最初は書いて練習するわけですが、回数を決めず覚えるまで書くのがポイントです。「覚えた」というのは本人の単なる思いこみのケースが多いものです。特に「自分の覚え方は見て覚える方法なの!」という生徒に多く見られます。かならず自己確認テストをして定着しているか確かめる習慣をつけてください。ランダムに出題して確実に書けるか、確認することが大切です。
漢字や言葉の勉強は、文法と同じで長文読解に役立てないと、価値が半減します。漢字練習と同時に国語辞典で意味も調べておき、単文作成までやっておくのが理想です。この際大切なことは『辞書を丁寧に読む』ということです。この言葉の意味はコレ、で終わってはいけません。書いてある説明を最後までしっかり読んで下さい。
言葉の意味調べも同様ですが、単に辞書の説明文を写すのではなく、自分の言葉に言い換える訓練もしておきましょう。難しい言葉は、自分の言葉に言い直すことで初めて使えるようになります。こうして語彙は増えていくのです。英語環境にいるということは、日本語語彙を増やすことがしにくい環境であるということを認識してください。意識的に増やす環境を作ってあげなければ、語彙は増えません。
■お母さんの影響は大きい!■
いうまでもなく、国語は日本語の勉強です。したがって長文問題をやる以前に、正しい日本語に対する基礎力が絶対に必要です。これは学校や塾で習うという次元の問題ではなく、家庭での日常的な言語生活そのものが大きく影響しています。例えば、子供が日本語として不適切な表現をした場合、その都度きちんと訂正してあげてください。
親子関係では、いい加減な言葉のやりとりであっても「あ、うん」の呼吸で意味が通じてしまうことが多く見られます。これでは言語に対する意識が希薄になってしまいます。単語しゃべりをしてしまう子供であったり、逆に子供の話を最後まで聞かず遮ってしまう親だったりする場合も、親の側が意識して直そうとしない限りいつまでたっても直りません。反抗期を迎える5年生あたりに直そうと親が躍起になっても、反発を招いて逆効果になることもあります。中学生以上であれば、正直言えば手遅れです。
海外に生活する者であるからこそ、せめて家の中では、できるだけ小さいうちから、正しい日本語を使うように指導してあげてください。間違っても親が子供に対して「日本語半分・英語半分」の言葉で話しかけないこと。こうした「ちゃんぽんの言語を使う家庭に育つ子供」で、安定した国語の力を持つ子を私は見たことがありません。
■高校英語の内容が不可欠■
数学同様、難関高校入試問題の英文法には高校範囲が出題されます。中堅高校でも高校1年修了程度、難関高校では中堅私立大学入試問題レベルやセンター入試とほぼ同じレベルの問題が出題されることがあります。したがって高校範囲の英文法を押さえておくことは、絶対に必要なのです。日本国内において、難関高校受験で英語を武器にするつもりならば中2の終わりまでに高校1年もしくは高校2年生ぐらいの文法知識を終えるのが望ましい、とされているのです。
その事実から考えても、難関帰国枠受験をする場合、圧倒的な力を出さなければ合格は遠のきます。模擬試験で中の上ぐらいの英語力では何の役にも立たないのです。帰国生が高校受験をするときに「英語は絶対条件。数学が必須条件」と言われるのをご存じですか?国語で失点する可能性が高い帰国生は、それをカバーするために英語で「満点近く」を取り、数学で底上げをするわけです。難関高校を受験する多くの生徒は、この方法を中心に受験を組み立てています。模擬試験などで、英語の偏差値65は「普通」の範疇と思ってください。
■長文読解が勝負■
長文読解については慶応系列のように「超長文」の速読理解を要求する学校や、灘や甲陽などのように長さはそれほどでもないけれども「内容的に非常に濃い出題をする」という学校など、様々です。いずれにしても長文読解問題の出来具合が合否を左右することは間違いありません。
「現地校で鍛えたから、読解は大丈夫」という人は要注意です。最近の傾向として顕著なのが、文法力や語彙力を持っている前提条件で、長文の速読力を要求し、なお日本語並の深い読解力を問う問題が増えてきているからです。大学入試に見られる「日本語と英語の完全互換性能力が問われている」ということです。どちらの言語も、文化まで含めた理解が絶対条件となっています。簡単に言えば言葉が英語に置き換わっただけの国語力を問う問題です。例えば本文を読んで結論部分を選択肢から選ぶ問題で、内容的にはどれも正しくて本文の微妙なニュアンスを読みとる必要のある問題や、和訳する問題でも直訳では意味が通じず日本語の微妙な表現力を問うものなどです。なかでも、字数制限付きの記述問題がポイント。日本語として答えを書くのですが、的確な部分和訳をするためには長文全体の把握が要求されます。まさに国語(日本語)の読解問題・記述問題、そのままの形式がとられています。「だいたい意味が分かれば大丈夫」というような英語の力では歯が立ちません。
■国語力の強化を図ろう■
受験英語で要求される応用力は、単に知識としての英語ではなく『日本語並みに使える言葉としての力』ということになります。したがって英文法の早期習得に加えて、国語力を強化することが必要になってきます。例えば、物語文ではストーリーを追うだけではなく前後関係を予測してみる、エッセイなら筆者が言おうとしていることを考えるなど、普段国語の長文問題で行っている「思考訓練」をしてください。ここでは「カンで読む」というような、現地校で鍛えた方法は全く意味をなしません。逆に成績向上の妨げになります。
英作文も同様に日本語⇔英語という互換性を完成させる必要がありますから、日本語語彙力も同時に向上させておく必要があります。日々、英単語・英熟語と同時に典型構文の暗記も行ってください。英作文では典型構文の例文をどれだけ知っているかがカギになります。「こんな言葉は使わない。こんな言い方しない。」という人がいます。日本語で日々の会話に「諺・慣用句」を多用しますか?それでも知識として知っていますね。言語が変わっただけで同じことです。国語の試験形式を言語を変えて行っているだけです。実は言われているほど変ではないのです。
また、英作文が難しく感じる理由は、元の日本語がわざとむずかしい表現になっているからです。難しい日本語を、意味を変えないで平易な日本語に置き換える練習も大切です。これも出来るだけ多くの問題を消化することによって慣れていくものです。
■国語と英語の応用力とは?■
多角的な視点(知識)と、思考訓練、そして試験問題に対する慣れ。それが国語と英語の応用力を付ける唯一の方法です。
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