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2003年11月号 「伸び悩みを解決するには?」

 後期授業が始まって1ケ月半が過ぎました。読書の秋とか勉学にいそしむ秋とは言われますが、実は秋になると成績が伸び悩む生徒を見かけるようになります。毎年この時期になると学習相談などが増えたり、個別授業を追加する生徒も多く見られます。
 特に受験生の場合は「やる気が起きない」「勉強に自信をなくした」「精神的に不安定だ」というような不調な時期を迎える生徒が増えるようです。いわゆる「スランプ」です。しかしこの時期は、ラストスパートの追い込み時期でもあります。この最後の数ヶ月のがんばりにより、入試での大逆転も可能です。実際、昨年の小6受験生で見事国立難関中学に合格したA君については「この時期からの追い上げによって合格した」と、お父さんが証言してくれています。現在の問題点を冷静に見つめ、一つひとつ解決していけば伸び悩みも解決できるかもしれません。このことは、受験生に限りません。

 さて、アナタのスランプ脱出に役立つトピックは見つかるでしょうか???  

<頑張ったはずなのに成果が見えない>
 非受験学年であれば、みんながみんな勉強をしているわけではありません。よって頑張った分だけ成績向上が望める「チャンス」です。ところが受験学年の夏ともなると、みんなが一生懸命に勉強を始めるので、思ったほど他の受験生との差は付きにくくなります。偏差値や順位は他の人と比べた相対的な数字ですから、受験学年の秋からの成績が少しでも上がっている又は現状維持ということは、成果があったと見るべきです。
 逆にいえば、受験学年の秋以降に偏差値や順位を上げようと考えるのなら、諦めてくださいとはいいませんが、相当な努力が必要です。前述の通り、本当は周りがそれほど勉強に力を入れていない時期に、ある程度の成績を取っておくべきでした。このあたりのツメが、海外生には甘く、そしてそのことを後悔する生徒が多いような気がします。「あとでいいや。今は現地校のことで手一杯だもの。」的な発想をする人が多いということです。後悔先に立たず。進学・受験には先を見越した準備が必要です。

<問題に手を付けているのに低得点>
 問題の得意不得意にかかわらず、多かれ少なかれ、必ずケアレスミスは発生します。問題は、ケアレスミスを減らす努力をしているかどうかです。問題を解くときの技術、図の書き方、アンダーラインの引き方、そして見直しの時間などを大切にしているかです。早く終わってしまって、残りの時間に寝ていたり文房具で遊んでいたりする生徒がいます。こういう生徒に限って成績は悪いものです。伸びる生徒は最後の1秒まで真剣に取り組みます。
 まず、いい加減にや適当ということではなく、それでもできるだけ速く全問を解くことが大切です。そして、できるだけ多くの時間を使って見直しをすること。これが試験で高得点を狙うときのコツです。一生懸命、ゆっくりと、確実にとやっていたら、実は時間が足りずに終わってしまいます。見直しというと、自信のない問題だけ見直す生徒もいますが、簡単な問題ほどミスをしやすいので、必ず全問の見直しをするようにしましょう。そのため、普段からやっておくことは問題を速く解く「スピード練習」です。中でも「算数・数学の計算問題や一行問題」「国語の漢字などの知識問題」は条件反射的に解けるまで数をこなして訓練しておくべきなのです。  

<成績が頭打ちになった>
 勉強に対する意識付けは、とても大切なことです。小学生の場合、あまりにも抽象的なことだと実感が持てず、結局いい加減に勉強してしまうということも見られます。できる限り現実的に、そして具体的に意識付けをすると良いでしょう。ただし、行き過ぎになり、過度のプレッシャーを与えると潰れてしまうこともあります。
 まず、頭打ちになってしまった場合は「勉強方法そのもの」に問題がないか調べてみましょう。そこに問題点が見つからないとすれば、あとは精神的なフォローの問題です。精神的なスランプ状態に陥っているということです。
 この場合、例えばしばらくの間、子供との話題では学校名などプレッシャーを与えるものは避けるようにしてみましょう。海外にいればライバルが隣にいるとは限らず「のほほん」としているように見えても、実は漠然とした大きな不安に包まれている生徒も多く見られます。親の顔にも焦りが出てくる時期ですが、決して顔に出してはいけません。子供自らが気持ちよく勉強できる環境を整えること。とにかくこれが一番大切です。  

<成績不振を叱った方が良いのか>
 海外で、周りに「日本の受験生」がいないとなると受験生としての実感など持てないものです。反面、この時期から保護者の不安感もピークに達していきます。子供が親の思うような行動を取っていないと、叱りたくなる気持ちも当然といえるでしょう。
 しかし、叱ってはいけません。叱っても決して問題の解決には結びつきません。難しい年頃の子供にとっては、逆効果になることがほとんどです。現場を知らない教育論者の言う「叱るときは叱り、誉めるときは誉める」ということは、実は無駄です。なぜなら、子供にとっては「叱られたことのみ」が強調されて心に残ることが多いからです。
 どっしり構えてください。子供に精神的負担を与えないことです。怠けていて叱る必要があるときは、塾や学校の先生に相談してください。憎まれ役をお願いするのです。あくまでも家庭は「安らぎの場」であるようにし、家から一歩外に出たら適度な緊張感を持って生活できるように、家庭の環境を整えるべきです。
 この時期、親の発言として注意しておきたいことは「勉強しなさい」等という『わかりきった言葉』や、「これじゃあ合格できない」といった『破壊的な言葉』、また「○○ちゃんは、こうしていなかった」というような『他人との比較』などの言葉は、決して口にしないこと。子供を傷つけ、やる気をそぐだけです。  

<落ち込んでいる場合はどうする>
 勉強しているのに思ったほど成績が伸びず、家庭学習でもため息ばかりつく。そんな生徒にはどう対処すべきか。
 基本的にはそっとしておくべきです。スランプは誰にでもあり得ること。そしてその壁を自力でよじ登る力を付けなければ次のステップへは到達できません。叱る必要もないし、誉める必要もありません。小学校低学年であれば誉めてあげるときにきちんと誉めてあげることが「勉強の楽しさを知ること」につながりますが、これは低学年までの話。小5以上、ましてや中学生以上に「お褒めのお言葉」など空々しいだけです。その程度のことは見抜ける力を、彼らは既に持っています。
 成績が伸びない原因を追及させましょう。良くあり得ることとしては「勉強の仕方そのもの」に問題がある場合があります。例えば実力以上の勉強をやろうとしている場合などです。こうした軌道修正は指導者(塾や学校の先生)に任せてください。素人判断で、勝手にいじりすぎると軌道修正が聞かなくなる場合がほとんどです。一度軌道をそれると、修正するのには大変な努力が必要です。是非プロの手に任せてください。
 ただし、すべてを任せっぱなしではいけません。家庭と定期的に連絡を取り合うようにして、連携したフォロー体制になるように心がけてください。(この点、enaでは毎月「あゆみ」でご家庭との連絡を図っていますし、何かあればeメールや電話などで連絡を取り合っています。)  

<親と一緒に勉強する方が良いのか>
 海外にいると、親が子供の勉強を見ることが多くなります。(注意点などは2003年5月号&8月号を参照)ただ、5年生以上の場合は自学・自習ができることを普通と考えたいものです。自分一人の力で問題を解くことが、とてもとても大切になってきます。よって、4年生の間に勉強の仕方、ノートの取り方、宿題のやり方などを習慣付けることが大切になります。これが軌道に乗った生徒においては、親は「スケジュール管理」だけをすれば良いことになります。注意すべきことは、何でも手取り足取り見る必要はないということです。ヒントを与えながら、誘導することが大切です。
 子供が躓いている問題に「こんな簡単なものも分からないの」という言葉は禁句。大人から見れば簡単な問題でも、子供には難しいということは多々あります。特に海外生活が長かったり、低学年である生徒の場合、言葉の問題が大きな壁になります。「常識」と大人が思うことでも、彼らにとっては未知の言葉。このため「ヒント」として使った言葉のために余計に混乱してしまうことも見られます。十分に注意してあげてください。
 また始めから終わりまで子供の横に座っている必要は必ずしもありません。かといって「口ばかり」でもいけません。「勉強しなさい」といいながら、親が寝そべってテレビを見ているのであれば、子供としても面白くありません。例えば家事などをしながら、親の目に入る所で子供が勉強しているというような環境ができていれば充分です。  

<問題集を沢山やった方が良いのか>
 塾で使っている教材の他にも問題集を買ってきて消化したほうが良いのか。苦手な教科だから、いろいろな問題を大量に消化すれば実力が付くように思いがちです。
 実際、半分は正しく半分は間違っています。勉強は量と質の「バランス」が大切です。計算練習、漢字や語句の暗記、理科や社会の重要語句の暗記、そして英語のボキャブラリービルド等は、大量にこなした場合比例して力が付くといえます。「パターン化」された問題などは条件反射的に答えを出さなければならないため、体で覚えるまでになっていれば、テストなどでは非常に有利になります。
 これに対して応用文章問題や図形の問題、英語や国語の読解問題などは「難問を解くコツ」が必要です。基本問題ばかりこなしていても、身に付く力ではありません。こうした問題を攻略するには、まず「ポイントを押さえた良い問題」を使うことです。入試問題にでも「駄作」「奇問」といわれる問題があります。それらは学力向上・思考訓練に直接影響しません。塾で使われているような問題集や有名参考書・問題集で取り上げられているようなものは「これぞ!」と思われるポイントを含む「良問」ばかりです。こうした「良問」を「じっくり」「何度も」練習するようにしてみてください。
 この2つの柱を上手に自分でコントロールすることができるのであれば、塾などは必要ありません。巷にあふれる問題集などで上手にやりくりし、成績向上を実現していけるはずです。失敗する例としては、自分勝手に手を広げすぎて結局どれも中途半端で終わってしまうパターン。これは「高望みして失敗した受験」「勉強しているのに成績が上がらない」「実力以上のことをやろうとして、むしろ分からないものが増えてしまった」などということの原因になっています。  

<成績が低迷。塾替えするべきか?>
 成績が向上するには時間が必要です。塾に通い始めたとたん、成績がグングン伸び始めるということはありません。嫌いだった教科が、見る見る好きになるということもありません。例えば国語など、今までの言語生活に大きく影響するわけですから、それを変え得ていく時間が必要です。ですから一般に、一度落ちた国語力を年齢層等までに引き上げるのには早い生徒でも半年、遅い生徒だと2年近くかかるとさえいわれるのです。
 非受験学年の場合。成績が低迷しているのに本人が、その塾を気に入って辞めたがらない場合。親は塾をよくよく観察しなければなりません。塾に対して成績向上を望むのであれば、塾替えする必要があるでしょう。ただし本人と納得のいくまで話し合う必要があります。また小5や中2などの「受験準備学年」であれば、早急に手を打つ必要があります。進学塾であれば、受験準備学年から「上位校コース」「一般進学コース」などとレベル分けをするところが多く見られます。乗り遅れたら上位コースには入室できないということも見られます。進路設計は、早めに、できるだけ具体的にするべきです。
 これに対して、受験学年の秋以降に塾替えをするのは大変危険です。これは、塾によって年間カリキュラムに違いがあるため、やり残しや重複による時間の無駄、教師の成績不完全把握などが出てくるためです。また、家庭学習のやり方から授業の受け方まで、塾ごとに家庭学習の扱い方が大きく異なります。こうしたことに慣れるまで相当の時間が必要になります。これは時間的に大きなロスとなりますので、逆に成績を下げてしまうということにつながりがちです。DCエリアに住む受験生の多くが、夏までに帰国してしまう理由の一つはここにあります。(もちろん受験資格の問題もあります。)
 明らかに指導内容に問題がある場合を除いて、塾を変えないのが受験生の鉄則です。どうしても不安が残るという場合は、不得意科目に限って家庭教師や個別授業などの「補助」を付けてみるなどの工夫をしてみましょう。勉強に拘束される時間が長くなり、現地校との両立も大変になりますが、上手に使えば成績向上も十分可能です。
 ただし、親としては成績だけに目を奪われないように。子供の負担が大きくなりすぎないように気を付けてあげてください。逆に、目先のことだけに気を取られないようにすることも大切。帰国枠も無い「学力重視」の受験をするのに、準備もおろそかにし「貴重な体験だから」とばかりに現地校優先主義になっていたら、合格は必ず遠のきます。小学生であっても現状をきちんと説明し、何が優先順位の上位に来るのかを説明する必要があります。その上で子供のモチベーションを具体的にきちんと作り、家族の決定として望むべきです。そして最も大切な点が「途中で方針を変えないこと」です。  

<苦手教科が克服できない>
 平日は現地校の宿題に追われて、週末は日本の勉強に追われて。毎日長時間勉強しているわりには、成績がパっとしない。特に苦手な教科に関しては何をやってもダメ。そう悩む生徒も少なくはありません。
 ○年生だから×時間勉強しなければならない。受験生だから睡眠時間は△時間以内でなければならない。これらはすべて嘘です。そんなものはありません。中身が問題であることは、誰もが言うことです。しかし、以下の点についてはどうでしょうか?
 漢字が苦手になっているのは、漢字を「絵」として認識し始めているからです。つまりアメリカ人と同じ視点になってきたということ。「見て」覚えようとしていませんか?辞書もひかず、熟語で覚えようともせず、書き順も調べず、ただ漢字の「形」ばかりをみているだけ。この繰り返しだったからこそ、語彙力もつかず漢字も覚えられず、読解力にまで影響したわけです。長文読解だって、どんどん読めなくなってきているでしょう?これを「自業自得」といいます。克服できないのは当然の結果です。
 算数・数学を考えてみましょう。例えば毎日計算練習もしていない。「筆算は面倒だから」と、暗算でやろうとする生徒。答えが「速く・正確」であれば文句はありませんが、こういう生徒に限って「遅く・不正確」であったりします。この態度は応用問題にも影響し、「面白い」と思えた問題には取り組もうとしますが、「難しい」と思った問題には手を出そうとさえしません。問題文さえ充分に読もうとしない。できなくて当然です。
 英語でもみられます。「英語では分けるけど」「この英語はヘンだ」と批判ばかりする生徒。英語に自信を持つことは悪いことではないけれど、批判するまでの英語力は身に付いていないということを自覚していない証拠。事実、こういうことを口走る生徒に限って日本の英語の偏差値はたいてい低い。日本の英語の試験自体に文句があるなら、「じゃあ、英語で説明して見ろよ」と詰問したときに「しどろもどろ」になるのは何故?結局、単語を書いて覚えようともせず、辞書を読もうともせず、構文や熟語は「見たことがない」というだけで吸収しようとはしないのは怠惰としかいいようがないでしょう?
 苦手科目が克服できない、ということではないのです。実は「克服しようとしていない」という生徒が大半を占めます。もう一度、勉強方法を見つめ直してください。

 

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