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2012年10月号 「子どもを見る」
秋です。
新学期が始まって落ち着いた頃、でしょうか。現地校では授業参観がありますね。(オープンハウス)。多くの塾では保護者懇談会が行われます。これは日本国内でも同じこと。現地校の保護者面談もありますね。11月ぐらいが多いでしょうか。面談の1人あたりの面談時間は10〜15分ぐらいが多いのではないでしょうか。この時間、相談をたくさんしたいという保護者の方にとっては物足りないかもしれません。塾では、少なくともenaでは、一人30分はとっていますね。受験生の場合のみ、エンドレスとかもあり。
面談内容ですが、受験生は受験する学校の確認が話の中心となります。受験学年以外は、お母さんには塾での様子を伝え、反対にお母さんには家での様子を聞くといったあたりさわりのない話が多いようです。「国語の相談があるんだけど・・・」と思っても、面談の相手が数学の先生(って、私のことですね)なんてことになると話になりません。特に現地校の先生との面談であれば「じゃあ、伝えておきます」でオシマイ。enaの場合、職員同士の情報交換は毎日細かくしていますから、担当教科以外のことでも質問OKです!だいたい、enaでは、担当していない生徒の面談は基本的にはしません。
ただ、以前にも書きましたが、「何かあったら、その場で相談!」は、ご家庭からであっても、enaからであっても、当然のこと。即座に対応するのが、子どもたちを考えれば当然すべきことですからね。
ただ、授業中とか授業直前にご相談されても。。。ちょっと、ね。enaでは午後3時から午後9時までは、毎日が戦争!子どもたちと真剣に取り組むには、余裕なんてありません。全力投球ですからね!ちょっと、この時間帯はご遠慮いただいています。
実は、相談されても困ることがあります。それは、「相談がミスマッチ」なとき。私たち側からすると、「そんな相談こっちにされてもな〜」「お宅のお子さんの様子、わかって相談してます?」と言いたくなる状況のことです。 例えば、enaでの授業態度が悪い生徒がいるとします。授業中に大声でしゃべるとか、日本で一時期問題になった「たち歩き」がひどいとか。指示に従わないとか。宿題をやってこないとか。先生たちは他の生徒への悪影響を恐れ対応に困っているとします。そこへ、その問題のある生徒のお母さんから「うちの子、勉強しなくて困っています。親の言うことにも反発して困っているので塾の方でなんとかしてください!」と相談される。
お母さんが困っているのは事実ですが、相談される側からすれば、
・勉強を教えるのは、塾の役目
・勉強のやる気は、自分自身もしくは家の役目
という結論になります。「やる気」は育てるものであり、与えるものではないという考えについて、以前書きましたものね。こんな状況で相談しても、対応できる方法はありません。あるとすれば、「しばらく塾をお休みされたらどうでしょう?」と提案するかもしれません。「きっと、現地校でのストレスがたまりすぎて、ここで発散してしまうんでしょうね」「補習校は日本語を思いっきり使えるサロンですから、そちらに変えた方が良いのかもしれませんね」といわれちゃうかもしれません。
進学塾にとって、スムーズに理解させるためには、子どもたちの「やる気」を育てる必要があります。「やる気がない子、集まれ〜!」とは、海外塾ではありえません。何しろ二足のわらじを履かせるわけで、それはそれは、子どもたちにとっては茨の道なのですから。「塾なんて、行きたくないよ」「日本の勉強なんて、したくないよ」と思っている子どもの首をひっつかまえて、嫌でも勉強させるなんてことは出来ないわけです。まあ、成績向上には「覚える」ということが必要で、覚えるのに「やる気無し」「嫌々やっている」ということであれば、成績向上は100%不可能であると断言します。
日本国内の塾であっても、マトモな塾であれば「やる気ない子」をしっかりと面倒見ようとはしません。どんな子どもでも、どんなに成績が悪かろうと、勉強をさせれば、絶対に成績は上がります。これに例外はありません。もちろん、点数の上げ幅は生徒の状況や教師の教え方、導き方で違ってくるでしょう。でも、やれば絶対に結果が出るのが勉強というものです。覚えれば、それが数字になる。努力が数字になって現れるものです。
ただ成績が悪い子どもは手間がかかる。中1なのに、6年生で完成しているはずの「分数の計算」ができていなかったら、ダメじゃないけど、その生徒の成績向上は面倒で手間がかかる。授業はわからないだろうし、成績も悪いだろうから、当然ながら勉強に対してやる気もでないかもしれない。育てる以前に、持っていないからどうしようもない、ということもあります。
今のご時世、学習塾は少子化の波に飲み込まれています。大手塾が授業料をどんどん下げていっています。それは誤解を恐れずにいえば、「やる気のない子、集まれ〜!」の大合唱になる可能性はあります。既に見られますが、一部の選抜クラスを除いて、ダラダラの学習塾があちこちに誕生しています。もちろん、そういう「お客さんクラス」で、楽しいだけの塾生活であれば成績は上がりません!暇つぶし、です。親にとっても、子どもが家にいなくてちょうどイイとか。そういう意味で、これからの時代、どういう塾に、どういう風に子どもを預けるのかを考えていく必要があると、これまでもお話ししてきたわけです。
塾のこれからの話はさておき、親は何かを相談する前に「塾での様子」「学校の様子」を「知っておく必要がある」ということなのです。ここが重要です。最低限、模擬試験の結果は把握していますか?それであれば、我が子がどれだけ出来ているのか、出来ていないのか、枠はわかりますね。「うちは受験しないから」「うちは永住だから」という理由で客観的な成績把握をしていないご家庭に対しては、進路指導など出来ません。普段の授業だけではわからないこともたくさんあるのです。瞬発力がどのくらいあるのか。既習範囲の出来具合をみて、子どもの記憶力を考えてみる。そうしてはじめて、進路指導が可能です。何ヶ月も模擬試験を受けずにいるのは、そういう指導を捨てているのと同じ。
「勉強はenaに行っているから大丈夫なはず」とおっしゃるご家庭は、皆さんが思っている以上に多い。あなたはそうでなくても、あなたのお子さんの、現地校が同じクラスの「あの子」がそうであれば、必ず影響があります。狭い狭い日本人社会です。その「あの子」がenaに来て同じ授業を受けているなら、「塾の授業」という観点から見れば、もっと強い影響があるといわざるを得ません。
ちなみに、生徒にはいろいろなタイプがいますが、大きく4つに分かれます。
(1)やる気が全面にあふれ、積極的
(2)おとなしいけど、真面目
(3)やる気はなく、おとなしい
(4)やる気はなく、騒がしい
いかがでしょう、お子さんは何番ですか?どれがいいかといえば(1)ですよね。割合はクラスや先生の力量により分かれますが、(1)があてはまる子はほんのごく一部しか存在しません。たいてい成績だって抜群です。少し変な質問ですが、塾にとっての「お客さん」とされる生徒は何番でしょう?(4)の生徒は、他の生徒に悪影響を与えるわけですから、できることなら在籍して欲しくない存在といえます。生徒だって塾を選ぶことができるように、塾だって生徒を選ぶわけです。私学とは、そういうものです。公のものではないのです。ただ、生徒を選ばない、なんでもウエルカムである補助教育機関は既にあります。そこで成績向上が望めるのかは、言わずもがな、ということで。
あなたの相談に乗ってくれるのは、あなたのお子さんが(1)(2)(3)のタイプだけと考えるべきでしょう。(4)のタイプは塾では解決してくれません。親子で解決してください。(4)のタイプは解決法は簡単です。力づくでいい、強制的でいいので勉強をやらせる!教える側に根性は要ります。でも、やらせられれば、可能性はある。それができるのは愛情のある人だけです。ちょっとばかりお金をもらったくらいでは割に合わないですから。(4)のタイプは長年の蓄積の上でのことがほとんどですから仕方がないとして、実は一番やっかいなのは(3)やる気はなく、おとなしいタイプの子なのです。このタイプに該当する子は近年増殖中です。男女問わず。学年問わず。一言でいえば、ただなんとなく塾に通っている子どもたち。海外校舎でも、国内校舎でも増殖してきました。塾任せの親が多く、親から特に具体的な相談があることも少ないということも、特徴の一つです。
何がやっかいかと言いますと、改善が期待できないからです。塾は勉強を教えるのが役目です。同じ授業を受けている(1)や(2)の生徒たちは成績が上がるわけです。ということは、問題は教える側にあるのではなく、受ける側の生徒に問題がある、という結論に落ち着くことが多いのです。(実際は、そうとばかりは言えないところなんですが。。。)お母さんからの相談を聞いて、塾が「いや〜、本人のやる気の問題ですからねえ。まあこちらでも気をつけるようにしておきますから。」というような感じで先生に言われたら、「ウチは3のタイプかも」と思ってください。こういう返事が返ってきたら、他人による改善は、まず期待できないと考えるべきでしょう。それって、よく考えてみてください。私が書くのも何ですが、そういう子どもは「お客さん」なのです。塾にとっては大切なお客さん!おとなしく、手間もかからずですからね。心ある親であれば、歯がゆいはずです。
この状況を打破するためには、(3)のタイプから(2)の「おとなしいけど、真面目」なタイプにステップアップをする必要があります。塾任せの親が多い3タイプにとっては、ちょびハードルは高いかもしれません。ステップアップできなければ、「カモ」のままということになります。このステップアップ、難しいですが、まずは「親と先生が、約束すること」なのです。一方的ではいけません。先生の約束を親は守ること。親からの約束を、先生は守ること。やっている人には当たり前すぎて、なんだ・・・ということになるのですが。(3)のタイプ「やる気はなく、おとなしい」タイプは、子どもと先生が約束する形が成り立ちません。たいてい生徒自身は約束をするけど、守りません。親も見ていないことが多いので、約束すら知らない場合が多い。親が先生から課題をもらい、その課題をちゃんとやらせる約束をする。約束を破らない。これしかありません。
約束を守ることで、先生の中では(3)ではなく(2)のタイプの生徒になる。そこから話は始まるわけです。 しかし、残念ながら、「やる気がなくて・・・」と嘆いているのは、このタイプの親ですし、約束を子供としても守らせる気概がない親も多いことは確かです。
やる気なんて勉強ができれば、やる気になるんです。そう、やっぱり「育てる」ものであるということです。やる気を待って、成績を上げようでは、永遠に嘆いている親で終わりです、キツイ言い方ですが。「やる気を与えます」なんていうう調子の良いキャッチコピーを見ますが、それは(4)のタイプの子どもに対してのみ使えるもの、ということです。(4)の子どもは、そう多くはないですから、たいていのご家庭には当てはまらないのです。だからenaでは「やる気を育てます」と正直に言っているわけです。
最後に、(2)の「おとなしいけど、真面目」タイプの子について。おとなしいのは別に悪くありません。なので、「ちゃんと成績が上がっていれば」そのままで良し。しかし、成績や点数が停滞してきた場合などのときは、親の出番です。授業中、(1)のやる気が全面にあふれ、積極的な生徒がペースメーカーになり進んでいきます。おとなしい性格の子にとって、授業中に質問はなかなかできるものではありません。発言できるものではありません。つまり、詰まった時に手助けが必要になる。個別授業を利用する。そういうことです。個別だったら、先生との距離が近くて、質問も出来る。話ができる。そういう生徒は伸びます。自分から質問をするタイプではないだけに、先生から声をかけてもらうなどの体制作りは親の役目であるということです。おとなしい子どもの中には、個別授業で熱心に教えてもニコリともしない子がいます。「反応ねぇなあ〜」と感じることもあるのですが、よく観察すると実はメチャクチャ喜んでいたりする生徒も中にはいます。ノートの状態。目つき。手足の動き方。enaは狭い教室ですから、生徒と先生の距離は近い。ほとんど丸見え。内職など100%無理。居眠りなど絶対に無理。そういう状況で、私たちは授業中に生徒を観察し、その様子を探りながら授業を進めます。塾として当然のこと、ですけどね。
いくつかの典型的なタイプについて話してきましたが、子どもの学校や塾での様子を知らない親が最近は増えました。教育熱心だけど、「子どもの姿」を知らない親。そういう親に限って、「就職に良い大学ランキング」とかが異様に詳しかったりするから驚きます。一方で、先生も、ひどいものです。兵庫県では大問題になりましたが、高校入試における採点ミスの話。「兵庫県の2009年度春の公立高校入試では約1550人に採点ミスがあったことが判明。採点の誤差は合格者で最大30点分、不合格者で最大10点分あった。80%以上の学校、約6%の受験生でミスがあったことになる。」兵庫県では「合否に影響はない」としていました。ホントかよ!?中学生にとって、ある意味で人生をかけて臨む高校入試で、このデタラメな採点ミス。「とことん教え込む」なんてことは無理ですね。某補助教育機関の漢字練習の添削を見たことがありますが、まあ、凄い。ウソ字でもマル。まあ、百歩譲って、アメリカ生活の長い1年生なら許しましょう。頑張ったことだけを評価して、ってやつで。でも私が見たのは中2の漢字。「これってさ、ウソ字なんだけど」と指摘すると、ノートの持ち主は「ええ!だった、こうやってOKもらってきたんだよぉ」って。enaで勉強して初めて「漢字練習って、こうやるんだとわかったらしい、です。
あれこれ思いつくままに書いてしまって、妙な結論になってしまいますが、「子どもの様子」「子どもの気持ち」「子どもの今」「子どもと友達関係」etc。忙しさにかまけないで、しっかりと見てあげてくださいと心から思います。お父さん先生・お母さん先生が活躍されているのは百も承知ですが、まずは子どもたちを「見て」からにしてください。海外に暮らす子どもたちからは、いろいろな信号を受け取ります。それが何か、感じてからにしましょう。 周りにいる大人が、道を照らしてあげる。先人の務め。enaは海外で頑張る子どもたちを応援する進学塾です。
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