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2002年9月号 「情報源のいろいろ」

■はじめに情報収集ありき■

 仕事柄、雑誌や新聞のインタビューに答えることがあります。まとめとしていつも「渡米前からきちんとしたビジョンを持つことが大切」とお話しています。帰国するときのビジョンに基づいて日々の生活を送って欲しいのです。たとえば帰国枠受験をするのか一般受験をするのかによって、在米中の日本の勉強の扱い方は大きく違います。英語受験を中心にするのか2教科受験にするかによって、現地校での過ごし方が変わるかもしれません。こうしたことを可能な限り渡米前に計画し、在米中はこのビジョンを中心軸として欲しいのです。

 ビジョンを作るときには情報収集が肝心です。現代では様々な情報収集ツールを駆使し情報を得ることが可能です。しかも渡米前日本にいながらにしてです。こうした情報を、きちんと分析して「我が家の基準」を作っていく。それがビジョンとなっていくのです。このとき、情報の信憑性を見極めなければなりません。ウワサというのは、本当にたくさんありますからね。誰かが勝手に言った適当なウワサが一人歩きしてしまうことなど日常的なことです。また、情報の鮮度も見極めなければなりません。古い情報が役に立たないとは言いません。生活情報などは期限がありますが、比較的長期間利用できます。しかし受験情報に関しては賞味期限が短いのが実情です。オーバーに言えば去年の情報が役に立たないと言うことがあります。  

■まずは一般情報から■

 以下の本などは、いまでも良く読まれている「帰国子女についての一般的な情報」が書かれた本です。

『海外帰国子女のアイデンティティ―生活経験と通文化的人間形成』   南 保輔 (著) 東信堂
『帰国子女自らを語る』   橋本 綾香 (著) アストラ
『「帰国子女」の位置取りの政治―帰国子女教育学級の差異のエスノグラフィ』   渋谷 真樹 (著) 勁草書房
『よりよい出会いのために―帰国子女教育実践事例集』   文部省 (編集) ぎょうせい
『バイリンガル・ジャパニーズ―帰国子女100人の昨日・今日・明日』   佐藤 真知子 (著) 人文書院
『グローバル化時代の教育―帰国子女教育の現場からの提言』   坂田 直三 (著) 晃洋書房
『海外・帰国子女教育の再構築―異文化間教育学の視点から』   佐藤 郡衛 (著) 玉川大学出版部
『教育の国際化を目指して―日本語教育が必要な外国人子女や帰国子女の教育の現状と課題』   総務庁行政監察局 (編集) 大蔵省印刷局
『今求められる帰国子女・外国人子女教育』   古岡 俊之 (著) 近代文芸社
『帰国子女の母の軌跡』   平野 利枝子 (著) 近代文芸社
『転換期にたつ帰国子女教育』   佐藤 郡衛 (著) 多賀出版
『帰国子女の就職白書―ニッポンの社会に出てみたら』   多賀 幹子 (著) 研究社出版
『息子たちは「脱・帰国子女」―欧米の教育事情と異文化体験』   荘司 忠志 (著) MBC21
『どんどん読めるいろいろな話―中級日本語学習者・帰国子女のための読解教材』   秋元 美晴 (著), その他 武蔵野書院
『帰国子女の日本語教育―ことばとの格闘』   井上 治男 (著) 日本橋書房
『帰国子女教育等の現状と問題点―総務庁の行政監察結果からみて』   総務庁行政監察局 (編集) 大蔵省印刷局
『国際化時代の教育―帰国子女教育の課題と展望』   東京学芸大学海外子女教育センター (著) 創友社
『中浜万次郎―日本社会は幕末の帰国子女をどのように受け入れたか』   古谷 多紀子 (著)
『まがりなりにも帰国子女―笑いかわせみより愛をこめて』   鞍山 泰子 (著)
『日本の会社へ痛快ケンカ状―はみ出し銀行マン・才媛帰国子女が突きつける』   横田 濱夫, 影山 優理 (著)
『帰国子女―新しい特権層の出現』   ロジャー グッドマン (著)
『カルチャー・ギャップ―帰国子女体験リポート』   平形 澄子 (編集)
『帰国子女―逆カルチュア・ショックの波紋  中公新書〈957〉 』   宮智 宗七 (著)
『たったひとつの青い空―海外帰国子女は現代の棄て児か』   大沢 周子 (著)
『帰国子女のことばと教育  三省堂選書 (109) 』   竹長 吉正 (著)
『ホンネで語る帰国受験』   海外子女教育振興財団 (著)
『世界の学校から 帰国生たちの教育体験レポート』   ICU高校 渡部 淳 (編集)  

まだまだ沢山あります。要するにみなさんが「?」と感じるたいていのことは既に情報となっており、渡米前に書籍として入手することが可能なのです。

 「渡米前にそんなものを読んでいるヒマがなかった。」現実的にはそうかもしれません。渡米が決まってからの慌ただしさは尋常でなかったかもしれません。生活を軌道に乗せるための情報収集が先決であって、滞米中や帰国に際しての情報収集は後回しになりがちですね。渡米後は手続きに追われたり現地校の宿題を家族総出でこなしたりと、毎日がドタバタ劇のようにすぎていきますね。日本の勉強なんて、週末に補習校に通わせるだけで精一杯。それ以上のことなんて、物理的にも「今は」不可能。存じております。

 しかし先送りにしてしまった結果、結局子供たちに大きな負担を与えてしまう。これは私たちがずっとお伝えしてきたことです。半年後に迫った帰国に対して「じゃあ、塾にでも通って、日本の学校に軟着陸できるようにしておくか」とおっしゃってもたいていは「時すでに遅し」となっています。日本語力は崩壊し、日本人が誇っていた算数・数学の力も学年相当は無理。英語の力だって生活英語こそ上手ではあるものの、日本の「学校英文法中心」のテスト・問題には面食らってしまう。理科も社会もある。知らないことだらけ。これを半年の間で「軟着陸できるレベルにせよ」というのは無理な話です。それでもいまだに「半年後には帰るから」と塾にいらっしゃる方がいる。

 実は「帰国半年に迫ったから」という理由で塾を訪ねられた方の多くはお断りしているのです。私たちの仕事の中で最も大切なことは、生徒の成績を伸ばすことですから。  

■帰国子女受験・帰国生のための進学情報源は???■

 一般的な情報や体験記ではなく、まさに現代の受験情報を!ということであれば、以下の情報誌が有名です。  

『帰国子女のための大学入試データ集』・・・駿台国際教育センター&アルク  
『駿台帰国子女入試データ集』・・・駿台国際教育センター  
『栄冠めざして―海外帰国子女入試編』・・・河合塾国際教育センター海外帰国子女教育相談室  
『帰国子女高校入試 (基礎知識編)』・・・河合塾国際教育センター海外帰国子女教育相談室  
『母親が歩いて見た学校案内』・・・帰国子女の会「フレンズ」  
『帰国子女のための学校便覧』・・・財団法人海外子女教育振興財団  

このほかに代々木ゼミナール国際教育センターが発行しているものもあります。

 これらは前年度の入試から「受験資格」や「状況」などをデータとしてまとめてあり、より具体的な指針を立てるのに役立ちます。受験資格などは一歩間違えれば帰国枠が利用できなくなりますから慎重に考えたいものです。

 これらの受験情報を正確に見ることができたならば、噂されている「帰国子女枠って誰でも受かるんでしょう」というのが大嘘であることがわかります。何も準備していない生徒でも簡単に受かると言うことは決してあり得ないのです。

 生の情報を追いかけたいのならばインターネットを覗くのが一番です。帰国子女に関するものから受験全般に関する情報までさまざまな情報があります。「本屋が近くにないから情報が入手できない」とか「塾が近くにないから情報難である」ということは、今の時代言い訳にならないんですね。調べようと思うとかなり細かい情報まで取り出すことができるわけです。

  インターエデュ帰国子女掲示板 http://www.inter-edu.com
  帰国生のためのHPキコッキーズ http://www.green-wood.info/kik/
  学校案内スクールガイド http://www.schoolguide.ne.jp
  学校案内スクールナビ Http://www.schoolnavi-jp.com
  関西帰国生親の会「かけはし」 http://www.ne.jp/asahi/kakehashi/kikoku/
  都道府県教育委員会へのリンク集 http://www.net-b.co.jp/jbox/K3/9810K301.htm
  四谷大塚入試情報センター http://www.netlaputa.ne.jp/~ycenter/
  都道府県別高校入試情報 http://www.sing.co.jp/nyushi.htm
  東京私立中学高校学校協会 http://www.tokyoshigaku.com/
  日能研ホームページ http://www.nichinoken.co.jp/
  河合塾海外帰国生教育相談室 http://www.kawai-juku.ac.jp/kikoku/
  駿台国際教育センター http://www2.sundai.ac.jp/kokusai/index.html
  代々木ゼミナール国際教育センター http://www.yozemikikoku.com
  enaワシントンDC http://enawashingtondc.tripod.com (手前みそですが。。。)

■なぜ情報源をご紹介したかというと。。。■

 かつて、こうした情報源は在塾生だけに伝えていました。情報は商品です。アメリカでは当然ですが、本来情報はお金を出して買うものなのです。日本では「サービス=無料」という意識が強いですから、私たちも授業料を頂いている在塾生に授業料の一部として保護者会などでお伝えしていたわけです。

 ところが、何もご存じないご家庭・本人が、あまりにも多すぎるということに気がつきました。海外に出る前に「素晴らしい体験をしてきて下さいね。大丈夫。日本の勉強は頑張れば追いつくことができます。貴重な体験を重視してきてくださいね。」といわれたことはありませんか?これを言葉通りに受け止めていらっしゃいませんか?

 今回の読み物で情報源をご紹介したのは、何もご存じないご家庭に現実を知っていただきたいと思ったからです。これだけ情報があふれている現代にもかかわらず、いまだに「帰国枠受験は簡単だ」「現地校のことだけしっかりやっていれば合格できる」「補習校は公立校と同じぐらいのレベルでやっているんでしょ?」と、本気で思っていらっしゃるご家庭が意外にも多いのです。私たちの言葉だけでは「どうせ塾が煽っているだけでしょ」と思われているのかもしれません。これらの情報を見ていただければ、納得していただけると信じています。考えても見れば、当たり前のことなんです。学校の先生が「海外であっても今は塾がありますから、是非塾に通ってください。そうじゃないと入試で得点はできませんよ。」とはいえません。リップサービスも時には怖いものになるわけです。軽い一言にだまされてはいけません。

 かつては海外子女教育振興財団などで渡米前の教育相談を受けると決まって「貴重な体験を重視しましょう」といわれたものでした。ところが近年は「しかし日本の学力はみるみる落ちますから覚悟してください。」といわれるそうです。現実は現実なのです。東京大学の帰国枠受験者数・合格者数を見てください。慶応湘南藤沢中等部の帰国枠受験状況を見てください。決して「誰でも合格できる」とはいえません。帰国枠のない有名難関校に海外からの受験生が何人いることか。一昨年の入試でDC校から一般入試で「桜蔭中」に合格者を出しました。彼女は入学までの短い時間に「海外から御三家に合格なんて、どうやって勉強したのですか?」と何人もの塾関係者から電話をもらったそうです。それくらい、大変なことなのです。  

■結局いつもと同じになってしまいますが。。。■

 現実を直視し、かかる労力・時間を考えて早目に行動を開始してほしい。それだけです。私たちの言葉で動じないのならば、帰国していった先輩たちの声を是非、聞いてください。彼らがどれだけ苦労したのか。彼らにもともとどれだけの力があったのか。それを、どのレベルまで伸ばしていったのか。情報の中にある「真実」を良く見極め、我が家の置かれている様々な状況と照らし合わせてください。

 

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