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2011年9月号 「ちょっと待ったぁ!!」
■我が家の受験
私たちが受験生に対して必ず使う言葉があります。「後悔の無い受験をしてください」という言葉です。でも、これって、とても難しいことです。結果が想像付くのであれば、努力も惜しみなくするでしょう。でも結果なんて分からない。先が見えないものに対して、がんばれ!とお尻を叩いても良いものなのか、私たちでも、とても迷います。
最近の若いお父さん・お母さんは「決して無理をさせたくない」とおっしゃる。その中で、志望校を探す。「でも、二流・三流の学校には行かせたくない」ともおっしゃる。受験をするなら「勝ち」に行きたいともおっしゃる。でも「やりたいことを我慢してまで受験を優先させたくない」ともおっしゃる。
中学受験・高校受験・大学受験のどれであっても、必ず私たちが使う「後悔の無い受験を!」という言葉。帰国枠受験であっても、譲れないものはあるのか。準備無しにのぞむのは、本当に危険なことなのか。
現地校が始まった9月。「現地校と日本への進学準備の両立」とい視点を中心に、考えてみたいと思います。
■制約
お子さまが体力的にまだ未発達の場合。これは考えちゃいますよね。現地校でも「遅くまで勉強するのは当然」という指導をすることもあります。渡米して間もない場合は、否応なしに遅くまでやらざるを得ない。親子で辞書を片手に「ああでもない、こうでもない」って。え?現地校は楽?宿題も無い?それって、どういうことだか、分かりますか?現地校から全く期待されていないということだったりすることも、あるんですよ。いわゆる「おみそ」扱いされているってことです。ESOLさえも今一歩であるということであれば、そりゃあ、そうなりますね。しかも「2年後には帰るんでしょ?」と思われていれば、現地校の先生から気合いを入れてもらえないのは当然ではないですか?そんな現地校体験であれば、現地校経験が受験になんて生かされるはずもありません。
そういうケースは、今回は置いておきましょう。現地校からも期待され、課題はバッチリ出され、しかも数年後には日本への受験が待ちかまえている場合に限りましょう。
「葛藤」ということがあると思います。何を優先させるべきなのか。いやいや、優先ではなく、同時進行させたい!そんなかんじでしょうか?でも、それだと本当のところ時間が足りないことで悩んじゃいますよね。昔と違って「4時間寝たら落ちるぞ!」とは言わない時代になりました。脳の機能を考えると8時間は寝て欲しい。科学的に証明もされてきましたね。では、それを真正面からとらえ、夜10時には寝させる方針を貫く。と、どうでしょう?
それで成功していれば良いのです。成績は右肩上がりというのであれば、何も問題は無いです。でも、模試の成績が下がってきた。小2までは問題なかったけど、小3から算数が急降下。中2前半までは分かる問題が多かったけど、夏を過ぎてから急に分からなくなった。そんな状況では勉強時間を確保したい。見直しもしたいが時間が足りない。現地校が始まって、夏前までとは違う環境。毎日の緊張。ああ、どうしたらいいの?などというご相談は毎年のようにあります。
思い返せば、そんなご相談をされるご家庭ほど、講習前になると「どうやら基本が出来ていないようなので、講習は受けずに家で復習をさせます」とおっしゃる。受験生であっても、「サマーキャンプに参加させたいから」と、講習の半分も受講しなかったり。
受験直前の頃でも、実は悩まれるご家庭がいらっしゃいます。「迷い」のあるご家庭であれば、最後の1ケ月に、突然猛スパートをかけるご家庭もあります。現地校も塾も辞めて、家で頑張らせるとおっしゃったご家庭もありました。
結果は?どうだと思いますか?少なくとも私が把握しているご家庭においては、「大成功!」とおっしゃったご家庭はありません。「後悔は無いけれど。。。」とおっしゃるご家庭が殆どです。この「。。。」が意味するところ、が肝心ですね。
■やっぱり「子どもが犠牲者」
海外で生活する。大変なことだと思います。永住ならば、まだ覚悟が出来ます。永住ならば、その国の教育方法でこなしていけば良いのです。現地校やアメリカの教育システムにおいて、ベストな進路設計を考えれば良いのです。ところが、数年で日本に帰るとなると、色々なことを考えなければいけません。組み合わせを考えなければならない。アメリカの教育制度・日本の教育制度。そして我が子の容量。単純に「せっかくアメリカに来たから! 貴重な経験だから!」ということだけに気を取られると、日本への進学は茨の道。これまでずっとお話ししてきました。
「子どもの体力を考えて」という先の例で考えるならば、そういいながら、現地校の課題は重く、結局毎日が睡眠不足。しかもお稽古ごとが週末に目白押し。補習校と塾とかけもちし、すべてが中途半端になっている生徒は少なくありません。そして、そういったご家庭では100%、お父さん・お母さんがお子さまをご覧になっていません。「いやいや、勉強は私がちゃんと見ています!」いえいえ。そうではありません。見ているというのは、お子さまの様子を見ていないというわけです。
過去の例で言うならば、某私立中学に合格した生徒は、合格体験記でこんなことを話してくれました。
「母親が身体のことを考えてくれて、10時には寝かせてくれたけど、それではライバルに負けるに決まっている。だから布団をかぶり、懐中電灯で勉強した」
「夜更かしが駄目ということだったので、朝3時に起きて勉強した」
「できること」であっても「できなくしてしまっている」のは、実は周りの大人だったりします。周りの大人が、手を出しすぎることによって「芽」を摘んでしまっている。このことも、これまでずっとお話ししてきたことです。
■出来る子どもは。。。
保護者会や教育相談会でよくお話しすることなのですが、「出来る子どもは、何をやらせても、何処に行っても、出来ちゃうんです」と。だから、そういう子どもについては、心配要りません。自分の足でしっかり歩いていきます。塾が必要だと思ったら、塾に通うでしょう。通うのが無駄だと思うなら、辞めるでしょう。そういう子どもは、客観的に自分を見ること、つまり模擬試験などのデータをきちんと利用することができます。1回の成績に一喜一憂するのではなく、単元ごとの分析など、言われなくても出来ちゃいます。「今回、ここが駄目だったんだよなあ」って。模試のやり直しだけではなく、分析もできる。これなら安心ですよね。ただ、そういう力は教えないと身に付かないものです。自然発生はしない、ということですね。中学生ならまだしも、小3の子どもに「模試の分析」は厳しいですよね。だから5年生までは「司令塔」の親が帆走する。5年生あたりから「自学自習」できるようにし向ける。これが大事なんです。周りの大人が子どもたちの歩くべき道を示し、背中を押してあげること。選択肢だけを用意して、「さあ、好きなものを取れ」といっても、選択眼が無い子どもに歩き出す勇気は無いのです。
■誰の「後悔」か
両立って、難しい。様子を見ながら進めるしかない。やらせている途中も、注意しなくてはならない。軌道に乗ったかな、と思っても気を抜いてはいけません。慣れるだけで成績が上がるわけがない。「足りないところ」がハッキリしたら、穴埋め作業があるし、「伸び始めたところ」があれば、自信につながるように頑張らせてあげたい。「自学自習」が完成している子どもは、こういったことを自分自身で意識しているのですが、いわれないとできない子どもは、「司令塔」が上手く誘導するしかないんです。
そうなると、ここで考えるべきは「後悔とは、誰の後悔なのか」ということです。親の後悔?もちろん、大きいでしょうね。せっかくの海外生活。せっかくの帰国枠受験。だから何においても「全力」でやらせたい、と。まあ、間違っては居ませんが、子どもの「容量」によりけりですよね。「容量」の少ない子どもに「目一杯」押しつけても、消化不良で倒れるだけ。
じゃあ、ってことになると、実は子どもたち自身が後悔しないような、進学設計を作ることが最も大切だとなるわけです。全てにおいて「適当」にやった子どもは日本に帰っても適当です。アメリカで必死に頑張った子どもたちは、日本に帰ってからも頑張ります。頑張れるのです。そうなると、やはり「子どもたち自身」が、後悔しない進学準備をする必要があるわけです。
■アメリカの思い出は?
要するに、結果が上手くいった親子にとっては、良い思い出となり、結果が上手くいかなかった親子にとっては、苦い思い出となる。それが、「受験・進学」というものです。合格体験記を読んで、「我が家も!」と奮闘したところで、それぞれのご家庭でご事情が違うのだから、同じには出来ません。どのご家庭だって手探りです。でも、手探りしながら「必死に」頑張ってきたご家庭は、子どもたちは、やっぱり帰国後も活躍します。
大事なのは、『合格するだけの「態勢」で臨んだか?』ということなんですね。オリンピック的に「まあ、チャンスだからダメもとで」という受け方は、やっぱりその先の流れも悪くする。アメリカの思い出さえも「あのとき、もっとやっておけば良かった」「やらせるべきだった」と変わってしまう。極端な例で言えば「そもそもアメリカに行ったこと自体が間違いだった」とまで言われてしまう。これでは家族みんなが不幸になります。
■ゴールはスタート
「合格するだけの態勢で臨んだか」ということ。結局「そこ」なんですね。「合格」するだろうと思われる「基準」を満たすだけの「何か」をしたかどうか。させたかどうか。そういうことなんですね。決して「自分なりに頑張った」では無いんです。どうして?簡単ですよ。「競争」だから。何もしなくて良い進学なら、そこまで準備しないでしょ?でも、入り口にハードルが用意されている。それを飛び越せないと入学させてもらえない。高さを測って、飛び越せるだけの跳躍力を身につけて、飛ぶ。それだけのこと。
そして、結果が出たら、結果について、合格するだけの「態勢」で臨んだのかについて、意見を出して、検証し、すり合わせていく。仮説でもいい、推論でもいいんです。そこでの話し合いが次に向かっていくときの判断基準になってくるわけですから。判断基準はどこかから与えられるものでも、降ってくるものでもありません。違う個性の子供たちが、違う環境で、違う勉強時間で、違う思いで受験に臨んでいるのです。これは日本にいる子どもたちだって、海外にいる子どもたちだって、変わりません。同じ状況でも千の答えがあるはずです。その答えは共に戦った親子だけしかできないのですし、親子だけの答えがあるのです。
帰国枠中学受験は優遇措置をとってもらえるといいます。言葉は悪いですが、「ムシのイイ話」をうまくいかせるためには、どこかで誰かが「研究したり」「効率的な作戦」を立てないといけません。そして、その研究や作戦立案には、ものすごい時間と労力がかかる。子どもの負担を減らそうとすれば、親がそれに代わるものを引き受けなければならないわけです。そうすることで、子どもはかけられる時間を集中して効率的に必要なものにかけていくことができるわけです。ましてや優遇措置の無い高校受験であれば、先を予測できる大人が、子どもたちの先回りして、ゴールしたところからスタートを考えるべきなのです。
効率的に集中的にやってきたものが今年は傾向が変わって入試では全然違う問題が出た!!なんてこともあるわけです。効率的にやったものがまったく効果を発揮しない!!現地校中心で生活してきたけれど、それが全く受験に役立たない。だったら、過ぎ去ってしまった今、どうするか。ここまで現地校のことは二の次にして日本の勉強ばかりさせてきたけど、英語受験という手もあったと聞く。さあ、何を優先順位1番とすべきなのか。我が家の理想とする進路を子どもに歩かせるためには、何と何を、どう選択すべきなのか。
こういったことは、他人が決めることではありません。もし、現時点までに答えを導き出すことができていなければ、今すぐやりましょう。その答えを出すことができれば、例えば下のお子さんの受験をどうするかなどは、自ずと決まってくるわけです。
悩むのは良い。迷うのも良い。そういわれます。海外で手探りの生活だから。でも、海外生活は期限付きなんです。限られた時間で、何をすべきか、何が出来るか、シミュレーションするしかないんです。更に言えば、昔と違って、情報は入手できる時代なんです。だから「合格する基準」はご家庭でも把握できる。受かるだけの努力は、やろう・させようと思ったら出来るのです。
そして、出した答えに沿ってやってみる。子どもたちにとって受験は1度です。小6が2回あるわけではありません。中3が2回もあるわけではない。唯一の機会を逃さず、最大の努力を持って臨んだか。そこが大事。そこで胸を張れたら、あとは結果を受け止めるしかないわけですし、そこまでできた子どもたちは、既にその段階で「ゴール」を堪能せず、次の「スタート」を切っているわけです。
両立は難しい。でも、日本に帰るなら、やるしかない。そういうことなんです。
enaは、「頑張る子どもたち」を応援する進学塾です。
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